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クルマ最終更新日:2020.11.13 公開日:2020.11.13

世界初の自動運転レベル3車両が実現へ。ホンダ「レジェンド」が型式指定を取得

国土交通省は11月11日、ホンダからの申請を受け、2020年度内に発売を予定している新型「レジェンド」に対し、自動運行装置を備えた車両として世界初となる自動運転レベル3の型式指定を行ったことを発表した。

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 「レジェンド」は、1985年から続く、ホンダの最上位に位置するフラッグシップセダン(番外的な位置づけのFCV「クラリティ FUEL CELL」を除く)。現行モデルは、2014年11月に登場した5代目である(画像1)。今回、自動車技術総合機構交通安全環境研究所における保安基準適合性の審査を踏まえ、2020年度内発売予定の新型「レジェンド」に対して、国土交通省が11月11日に世界で初めてレベル3自動運転車の型式指定を行った。

 なお、型式指定を受けた「レジェンド」が、フルモデルチェンジした6代目なのか、それとも2018年2月に続く2回目のマイナーチェンジを受ける5代目となるのかは未発表だ。ホンダに確認したところ、現段階では発表できないということだった。5代目は発売から丸6年経っており、それを考えるとフルモデルチェンジの可能性もある。その一方で、国土交通省が発表したプレスリリースでは5代目の画像が使用されている(画像2)。

ホンダのフラッグシップセダン、5代目「レジェンド」。この5代目に自動運行装置が搭載されて発売される?

画像1。ホンダのフラッグシップセダン、現行モデルの5代目「レジェンド」。

自動運行装置の保安基準を満たして初めて自動運転レベル3ということができる

 新型「レジェンド」に搭載されるホンダ製の自動運行装置の名称は「Traffic Jam Pilot」(トラフィック・ジャム・パイロット、以下TJP)。Traffic Jam(交通渋滞)が示す通り、高速道路での渋滞時におけるドライバーの運転操作の負荷を軽減することを目的としたシステムである。

 TJPは前走車を初め周辺の交通状況を監視し、ドライバーに代わって運転操作を行う。そして、車線内の走行を維持しながら前走車の追従を可能としている。これだけを聞くと、レベル2で実現しているACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とLKA(レーン・キープ・アシスト)による高度運転支援と変わらないように聞こえてしまう。レベル2と3の違いはどこにあるのだろうか。

 道路交通法の面からいうと、レベル2までは運転支援機能の内容によらず、運転操作はすべてドライバーが行う。つまり、ドライバーは常に周囲の状況を監視していなければならず、スマホを見るのは厳禁だ。これがレベル3になると、車両に搭載された自動運行装置というシステムが運転操作を行っている間は、運転操作をシステムに任せて、ドライバーは周囲の監視をしなくてもよくなる。つまり、スマホを見てもよくなるのだ。ただしレベル3の自動運転では、システムが運転交代を要求してきたらすぐにドライバーが引き継ぐ必要があるので、常に運転操作ができる状態でいなければらなないが。

 それでも、ドライバーに許される行動においてレベル2とレベル3の差は大きい。このために、技術的にもいろいろな違いがある。

2020年11月11日に、自動運行装置を搭載した車両として、世界で初めて自動運転レベル3の型式指定を国土交通省から受けたホンダの新型「レジェンド」のホンダ製自動運行装置「Traffic Jam Pilot」システム構成図。国土交通省プレスリリース「世界初! 自動運転車(レベル3)の型式指定を行いました」より。

画像2。「Traffic Jam Pilot」のシステム構成図。国土交通省が11月11日に発表したプレスリリース「世界初! 自動運転車(レベル3)の型式指定を行いました」より。

 画像2は、TJPのシステム構成をまとめたものだ。この画像の中で、レベル2までの運転支援では強調されていなかったのが、「機能冗長化」と「自動運行装置に必要な対応・装備」だろう。これが、自動運転レベル3の車両であるために必要な要素となる。

 日本の自動運転車のための法整備は、2018年9月に車両安全のためのガイドラインが策定され、2019年5月に道路運送車両法の一部改正が行われた。それに基づいて2020年4月、世界初となる自動運行装置(自動運転車)の保安基準が策定・施行された。なお、その保安基準は同年6月に成立した国際基準も見越した、国内向けの基準となっている。保安基準は、以下の通りだ。

1.性能
(1)走行環境条件内において、乗車人員および他の交通の安全を妨げるおそれがないこと
(2)走行環境条件外で、作動しないこと
(3)走行環境条件を外れる前に運転操作引き継ぎの警報を発し、運転者に引き継がれるまでの間、安全運行を継続するとともに、引き継がれない場合は安全に停止すること
(4)運転者の状況監視のためのドライバーモニタリングを搭載すること
(5)不正アクセス防止などのためのサイバーセキュリティ確保の方策を講じること など

2.作動状態記録装置
(1)自動運行装置のON/OFFの時刻
(2)引き継ぎ警報を開始した時刻
(3)運転者が対応可能でない状態となった時刻などを6ヶ月間にわたり(または2500回分)記録できること

 このほか、「自動運行装置を備える自動車外向け表示」として、「自動運転車であることを示すステッカーを車体後部に貼り付け(メーカーに要請)」となっている(画像3)。

自動運転レベル3の外向け表示ステッカー。

画像3。自動運転レベル3の外向け表示用ステッカー。

 このような自動運行装置の保安基準を満たすために設けられたのが、機能冗長化と自動運行装置に必要な対応・装備ということになる。機能冗長化は安全性を高めるため、電源系統、ステアリング機能、ブレーキ機能に施されている。

 また自動運行装置に必要な対応・装備は、以下の4点だ。

(1)不正アクセスを防ぐためのサイバーセキュリティ機能
(2)自動運行装置の機能追加や性能向上のためのソフトウェアのアップデート
(3)万が一の事故時の自動運行装置の動作を確認するための作動状態記録装置
(4)後方の車両に通知するための「自動運転レベル3」の機能を備えた車両であることを示すステッカー

 このほか、車内にはドライバーモニタリングカメラも備えられ、ドライバーがどのような状態にあるのかシステムが確認できるようになっている。

 それと周辺状況を認識するためのセンサーに関しては、カメラが2機(ステレオカメラの模様)、レーダーとLIDARがそれぞれ5機となっている。自車の位置認識には、高精度地図と、全球測位衛星システム(GNSS ※1)の組み合わせが用いられる。

※1 GNSS:Global Navigation Satellite Systemの略。いわゆる、GPSのこと。GPSとは米国が運用するGNSSのことで、GPSを補完する日本の準天頂衛星システム「みちびき」もGNSSの一種。

自動運転レベル3から初めて自動運転となる

 自動運転に関わる技術はレベル1から5までの5段階が定められているが、このうちレベル1と2はドライバーが運転操作を受け持つ運転支援の範疇であり、自動運転には含まれない。自動運転を思わせるような支援機能があったとしても、ドライバーは常に周囲の状況を監視し、運転操作を車両に任せないで適切な運転操作を行う必要がある。

 そして、レベル3から初めて自動運転も可能な車両となり、状況によってはドライバーが周囲を監視する必要がなくなる。その状況の違いによってレベルが分かれており、レベル3は「特定条件下における自動運転」、レベル4が「特定条件下における完全自動運転」、そしてレベル5が「完全自動運転」となる。

 レベル3と4は特定条件でのみ自動運転が利用できるのは同じだが、システムが作動しなくなった場合の対応が異なる。レベル3の場合は、特定条件内であっても、システムが自動運転の継続が困難になった場合は、ドライバーが運転操作を引き継がなくてはならない。そのため、自動運転中であっても、システムが要求してくる場合に備えてドライバーは常に運転操作を引き受けられる態勢でいる必要がある。

 それに対してレベル4の場合は、システムの作動継続が困難な状況になったとしても、それも含めてシステムが対応する。つまり、特定条件内であれば完全自動運転というわけだ。レベル4になって初めて、ドライバーは常に運転操作を引き受けられる態勢でいる必要がなくなるのである(特定条件内ではあるが)。このレベル4実現の政府目標は、2025年目処とされている。

 そしてレベル5は特定条件もない完全自動運転のことで、いついかなるときも、すべての道路・天候・速度などの条件においてシステムが運転操作を受け持つようになる。こちらの実現はさらに高度な技術を要するため、おおよその時期も政府目標としては定められていない。

 レベル3と4に共通する「特定条件」に話を戻すと、これは場所(高速道路のみなど)、天候(晴れのみなど)、速度など、自動運転が可能な条件のことをいう。ただしシステムの性能によって、条件の内容は異なる。TJPの主な走行環境条件は、以下の通りだ。

1.道路状況および地理的状況
道路区間:高速道路およびそれに接続される、または接続される予定の自動車専用道路(一部区間を除く)
除外区間/場所:自車線と対応車線が中央分離帯などにより構造上分離されていない区間。急カーブ、サービスエリア・パーキングエリア、料金所など

2.環境条件
気象状況:強い雨や降雪による悪天候、視界が著しく悪い濃霧または日差しの強い日の逆光などにより自動運行装置が周辺の車両や走路を認識できない状況でないこと
交通状況:自車が走行中の車線が渋滞または渋滞に近い混雑状況であるとともに、前走車および後続車が自車線中心付近を走行していること

3.走行状況
自車の速度:自車の速度が自動運行装置の作動開始前は約30km/h未満、作動開始後は約50km/h以下であること
自車の走行状況:高精度地図およびGNSSによる情報が正しく入手できていること
運転者の状態:正しい姿勢でシーベルトを装着していること
運転者の操作状況:アクセル・ブレーキ・ハンドルなどの運転操作をしていないこと

レベル3自動運転車に関する国内他メーカーの動向

 レベル3自動運転技術の市販車搭載についての政府目標は、「官民ITS構想・ロードマップ2020」(2020年7月、総理大臣を本部長とするIT総合戦略本部により決定)によれば、高速道路において2020年目処となっており、今回の「レジェンド」が2020年度内発売ということで、かろうじてとはいえ目標を達成したといえるだろう。

 国内他社に関しては、今のところレベル3自動運転車の発売を明確に発表しているところはない。唯一レベル3に近いと思われるのが、2020年初冬発売予定のレクサスの高級セダン5代目「LS」のビッグマイナーチェンジモデルに搭載される「Lexus Teammate」という技術だ。

 同技術は、自動車専用道路用の技術で、車線・車間維持、分岐、レーンチェンジ、追い越しなどを行い、出口までの安全運転支援をするという。ドライバーは運転状況を監視する(いつでも運転を引き受けられる態勢)必要はあるが、アクセル、ブレーキそしてハンドル操作から解放されるとある。また、購入後もソフトウェアのアップデートにより機能の追加や性能向上を続けるとする。

 これだけ聞くと自動運転レベル3の技術のように思えてしまうが、トヨタは2020年7月に新型「LS」の今冬発売の情報を発表した時点では、高度運転支援としている。いずれにせよ、2020年初冬ということは、11月後半から12月にかけての発売と考えられることから、間もなくレベル3なのか否かははっきりするはずだ。


 古くはABSに始まる車両制御、ここ10年ほどは衝突被害軽減ブレーキやACCなど、クルマの自動化は年を追うごとに進んできた。だが、それらはあくまでもドライバーの運転を支援するための機能だった。しかし、いよいよ「レジェンド」からは国が認めた自動運転車となる。クルマが自分で外界を認識し、判断し、自分自身で運転操作をすることになるのだ。かつてはフィクションの中にしか存在しなかった自動運転車。遂に、それを購入できる時代に突入する。

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