新型コロナ直撃! 前代未聞、デジタル開催のジュネーブショー。連載|小川フミオの「クルマのある日常」vol.02
新型肺炎・コロナウイルスの影響で自動車業界はどうなる? クルマのある暮らしに焦点を当て、自動車の過去・現在・未来を探求する新連載。第2回目のテーマは、中止から一転、“デジタル開催”となった「ジュネーブショー」について。
中止から一転。新車お披露目はオンラインで
ジュネーブの国際自動車ショーが”デジタル”になった。3月初旬の、通称「ジュネーブショー」は、欧州では唯一毎年開催のショーであり、毎回100台を超える新車が発表されるほどの盛り上がりを見せてきた。
2020年も、各自動車メーカーが、スポーツカー、SUV、電動車と、さまざまな新車を用意していた。が、新型肺炎・コロナウイルス(COVID-19)の流行を受けてスイス政府が2月28日の閣議で、1000人以上の集会禁止の決定を出したため、急きょ中止となってしまったのだ。
これを書いている私も、取材予定だったので、2月最後の週は東京で、”いったいどうなるのだろう”とハラハラさせられた。2月の下旬までは、ショーの主催者は「開催」の意向を表明していたが、政府の決定に従い、最終的に28日に中止発表となったのだった。
「会場は各メーカーの展示スペースでの建て込みがほぼ終了した」と主催者はニュースとして発表。あとは展示車両の搬入を待つだけという段階での中止決定に、無念な感じをにじませていた。
ところが、ジュネーブ自動車ショーは、2020年の第90回目にして初めてデジタルで開催された。
「主催者は、一般のファンとメディアに向けて、一部ライブのストリーミングによって、プレス発表や、世界発お披露目になる新車の情報を流すことにしました。発表場所はさまざまです」
主催者からメディア向けに送られたメールには、上記のように書かれ、同時にこの決定に応じた各社の発表時刻が記されていた。指定の時間に各社の報道用サイトにアクセスすると、発表会がオンラインで観られたのだ。
もうショーに行く必要はない?
発表の仕方はさまざま。たとえば、フォルクスワーゲンは司会と技術者のやりとりで、最新の8世代目「ゴルフ」に追加された「GTI」「GTD」それに「GTE」の詳細を、プロモーション用のフィルムをインサートしながら紹介した。
スポーツカーメーカー、マクラーレンは、英国南部にある本社のホールに新車を並べての中継。その場で、「765LT」というパワフルなスポーツモデルの幕をとった。従業員が総出でストリーミング中継用のカメラを観てにこにこしているのが印象的だった。
同社のマイク・フルーイットCEOもPCのディスプレイ越しに登場。「今回の(ショー中止の)決定には喜んで従います」と話をした。そう言うしかないだろうと思った。
私はジュネーブで、デザインディレクターのインタビューをする予定だったのだが、それを考慮してくれたマクラーレンジャパンでは、東京・港区の事務所でスカイプによるインタビューを実施してくれた。
ショー中止の代替策として今回のジュネーブショーのやりかたは、無観客試合のように、やらないよりはるかにマシ。日本の自動車ジャーナリストのあいだでは、ストリーミングで発表が観られるなら、ショーに行く必要がなくなるかも、という意見もあった。
けれどクルマはバーチャルな存在ではないから、実車をじっくり観ての印象をリポートするのは大切だろうし、インタビューを通して明らかになる事実も少なくないのだ。新型肺炎・コロナウイルスの流行が一刻もはやく収束することを願うばかりだ。