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最終更新日:2020.03.03 公開日:2020.03.03

“ボンドカー”や”サーキットの狼”が!【ノスタルジック2デイズ】

今年で12回目となる、国内最大級のクラシックモーターショー「ノスタルジック2デイズ」。2020年最初の、首都圏で開催される大型旧車イベントである。今年もスーパーカー、スポーツカー、名車、すでにメーカーそのものが存在しない希少なクルマなど、往年のクルマたちが多数集結した。

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 「ノスタルジック2デイズ」は、旧車販売店、パーツメーカー、レストアショップなどが出展する国内最大級の旧車イベントのひとつだ。主催は、「ハチマルヒーロー」や「Nosweb.jp」などの旧車が題材の雑誌およびWebマガジンで、主催雑誌の表紙を飾ったり、読者の投票で選出されたりした一般オーナーの旧車も展示されている。また毎回特別展示も実施されており、今回は「1964企画展」を中心に、映画やコミックスの劇中車なども展示された。

ジェームズ・ボンドが搭乗したオープントップのトヨタ「2000GT」

画像1。世界に2台しかないオープントップのトヨタ「2000GT」(Auto Roman所蔵)。国産で唯一のボンドカーだ。

 まず紹介するのは、1967年公開の「007は二度死ぬ」において活躍したトヨタ「2000GT」の撮影で使用された車両だ(画像1・2)。「2000GT」はトヨタとヤマハの合作により誕生した、日本初のスーパーカーといえる高級スポーツカーで、1967年に発売された。

 発売前の車両が撮影用にトヨタから提供され、さらには一般には発売されることのなかったオープントップに大改造されて劇中に登場。「2000GT」自体、総生産台数337台しかない”幻の名車”だが、このオープントップの「2000GT」は世界でたった2台のみ。「007」の映画で活躍したこともあって世界的な人気も獲得した、幻の中のさらに幻ともいうべきとてもレアなモデルである。

画像2。ボンドカー「2000GT」のリアビュー。見事なまでの曲線美は、当時の量産ラインで実現するのが無理なことから、ハンドメイドで1台ずつ作られた。

 「2000GT」が急遽オープントップに改造された理由は、ボンド役のショーン・コネリーが190cm近い長身で乗り込めなかったからと伝わる。2台が作られ、そのうちの撮影で主に使われた1台は現在、トヨタ博物館が所蔵。今回展示されたのは、Auto Romanがレストアした予備用だそうである。

 なお劇中での「2000GT」は、ジェームズ・ボンドが所属する英国対外諜報部MI6の所有車ではないため(ボンドに協力する日本諜報部の所有車)、厳密にはボンドカーではないという見方もある。ただし、一般的には唯一の国産ボンドカーとして認知されている。

原作者・池沢早人師も公認! ロータス「ヨーロッパ SP 風吹裕矢仕様」

画像3。ロータス「ヨーロッパ SP 風吹裕矢仕様」(サーキットの狼ミュージアム所蔵)。主人公・風吹裕矢の初代愛車を再現した世界唯一の公式車両。

 1970年代の日本においてスーパーカーブームを巻き起こすきっかけとなったのが、週刊少年ジャンプ誌で池沢早人師(当時・池沢さとし)氏が連載したコミック「サーキットの狼」だったといわれる。レーサー志望の主人公・風吹裕矢(ふぶきゆうや)が愛車ロータス「ヨーロッパ」を駆り、ライバルたちと命がけのレースを展開(ボンネットの星の数は勝利数)。最終的には、F1ドライバーまで昇り詰めるというサクセスストーリーだ。

画像4。ボンネットには、勝利数(撃墜数)を表した星が再現されている。その数は29。

「ヨーロッパ」は、世界初のミッドシップエンジン搭載の量産スポーツカーとして1966年に発売された。劇中では主人公の最初の愛車であったことから、特にスーパーカーブーム世代の少年たち(現在の50~60代)には人気が高い。その劇中車を、池沢氏の友人でもある八幡氏が親子で再現。それが、この「ヨーロッパ SP 風吹裕矢仕様」だ(画像3~5)。池沢氏の監修も受けた世界で唯一の公式車両で、中でもリアのGTウイングは池沢氏が特にこだわった部分だという。池沢氏が名誉館長を務める「サーキットの狼ミュージアム」(茨城県神栖市)に所蔵されている。

画像5。池沢氏が特にこだわったというのが、リアのGTウイング。

伝説はここから始まった!プリンス「スカイラインGT」vsポルシェ「カレラGTS」

画像5。「1964年企画展」のひとつ、プリンス「スカイラインGT」(S54A-1型、画像左)vsポルシェ「カレラGTS」(904型)。

 ”スカイライン伝説”という言葉がある。「スカイライン(GT-R)」はレースで強く、数々の名勝負などを築いてきたことなどを内包する言葉だ。伝説の始まりは、まだ「スカイライン」がプリンスのクルマであった時代まで遡る。国内で本格的なレースが始まってまだ2年目という、1964年5月3日に開催された第2回日本グランプリ(当時はツーリングカーやスポーツカーのレースだった)でのことだ。

画像6。プリンス「スカイラインGT」(S54A-1型)。第2回日本グランプリGT-IIクラス出場の生沢徹選手の41号車。プリンスガレージかとり所蔵。

 プリンスは同レースにおいて、前年の雪辱を果たすべく、2代目「スカイライン」(1963年発売)の高性能モデルとして、レースで勝つことを目的としたS54A-1型「スカイラインGT」を開発(画像5・6・8)。レース直前の5月1日に100台限定で市販し、ギリギリでホモロゲーションを得ることのできたスポーツカー(GTカー)である。プリンスは同車をGT-IIクラスに複数台投入し、ドライバーも生沢徹(いくざわ・てつ、1942-)選手ら一流をそろえ、必勝態勢で第2回日本グランプリ(鈴鹿サーキット)に臨んだ。

画像7。ポルシェ「カレラGTS」(904型)。寺坂光正氏所蔵。

 しかしそこに待ったをかけたのが、式場壮吉(しきば・そうきち、1939-2016)選手だった。ポルシェの904型「カレラGTS」(1964年発売)を購入し、急遽GT-IIクラスに参戦したのだ(画像5・7・8)。「カレラGTS」は空力を考慮した低い全高かつ流線型のボディが特徴で、レース用はさらにメカニズム的にも大幅に強化されていた。ポルシェがレースで勝つことを目的に開発したスーパーカーであり、「スカイラインGT」よりも性能面で大きく上回っていたのである。予選は、式場選手がぶっつけ本番だったために、ポールと2番手を「スカイラインGT」が獲得。しかしその潜在能力の前に、決勝では「カレラGTS」が速さを見せつけることを誰もが予感したのだった。

画像8。第12回ノスタルジック2デイズに出展された、ポルシェ「カレラGTS」(904型)。奥にはプリンス「スカイラインGT」41号車。

 実際、レースでは「カレラGTS」がトップに躍り出ると「スカイラインGT」勢を引き離していった。しかしその中で唯一、生沢選手の41号車だけが食らいついていく。そして奇蹟が起きたのは7周目。一瞬だが41号車が「カレラGTS」を抜き去ることに成功し、トップに立ったのである。「国産車がポルシェに勝てるわけがない」と誰もが思っていたが、それを覆せるかもしれないことを証明して見せ、鈴鹿サーキットの観客は大興奮となった。その後に抜き返されてしまったが、それこそがまさに”スカイライン伝説”が始まった瞬間だった。

画像9。プリンス「スカイラインGT」(S54A-1型)。日本グランプリGT-IIクラスに出場した、砂子義一選手の39号車のレプリカ車。プリンスガレージかとり所蔵。

 レースは結局「カレラGTS」がGT-IIクラスを制し、「スカイラインGT」勢は2~6位に。その中で最上位だったのが、砂子義一(すなこ・よしかず)選手の39号車だった(画像9)。砂子選手とノスタルジック2デイズとの関わりは深く、同選手が70歳半ばになって第1回が開催され、そのときからトークショーに参加。それも毎回”乱入”で会場を沸かせ(後年は乱入がお約束となっていた)、昨年も元気な姿を見せていたが、2020年1月3日に87歳で永眠。またひとり、日本のモータースポーツの黎明期を駆け抜けたドライバーが天に召されたことを偲び、39号車のレプリカ車を展示。そして、誰でも書き込める砂子選手へのメッセージボードも用意された。

日本初のF1参戦車両ホンダ「RA271」

画像10。ホンダがF1に初参戦した際のマシン「RA271」。ホンダコレクションホール所蔵。

 最後に紹介するのは、ホンダが1964年にF1に初参戦した際の葉巻型F1マシン「RA271」(画像10)。ホンダは、同年8月2日に独ニュルブルクリンクサーキットで開催された第6戦に「RA271」で参戦し、第1期の戦いの火蓋が切られた。

 「RA271」の特徴は、多くのライバルチームがV8エンジンを搭載していたのに対し、V12エンジンを搭載していたこと。しかも1万2000rpmまで回る超高回転型で、ライバルを圧倒する220馬力というパワーを叩き出し、世界を驚かせたのである。残念ながら「RA271」は優勝を手にすることはなかったが、ホンダは初参戦時からその後の活躍を予感させる光るものを備えていたのである。


 今回は第12回ノスタルジック2デイズの特別展示のうち、スポーツカー/スーパーカー系、そしてモータースポーツ系の車両を紹介した。どれも50年以上経つマシンではあるが、美しくもあり、また”かっこよく”もある。半世紀以上もの時の流れに耐えてきたクルマは、かくも魅力的であるこということを改めてわからせてくれるクルマたちだ。

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