ジムニーを急速充電可能なEVに改造。世界初のEV南極点到達を目指す
クロカンEVで、自然エネルギーだけを使った南極点到達を目指す「ZEVEX~ゼベックス」は、オフロードに強いスズキ「ジムニー」をEVに改造。さらに今回、CHAdeMO規格の急速充電器での充電を可能にするアップデートを実施した。
本格的クロカン四駆「EVジムニー」をアップデート。普及が進むCHAdeMOでの充電が可能に
自動車環境問題NGOである「ZEVEX~ゼベックス」は、7月12日、同NGOがEVにコンバート(改造)したEVジムニーを、国内で最も普及している急速充電器CHAdeMO(チャデモ)での充電が行えるようアップデートした。
現在、本格的なオフロード走行が可能なEVは、日本では発売されていない。ゼベックスが、スズキ「ジムニー」(SJ30)をベースに改造したEVジムニーが、おそらく日本初の本格的クロカン四駆EVだという。また、自動車メーカーが発売する新車EVではチャデモ対応は当たり前だが、改造EVがチャデモに対応した例は非常に珍しく、同NGOのEVに関するノウハウと高い技術力を示す結果となった。発表された動画では、チャデモでみるみる充電される様子が確認できる。
ゼベックスは1997年に活動を開始、悪路走行できる四駆と環境問題を考えるNGO団体である。そして、「持続可能な開発目標」(SDGs)を意識した冒険活動を行う「4WD電気自動車冒険チーム」でもある。そんな彼らが創立当初から掲げるのは、「四輪駆動のEVに、ゼロエミッションの電力だけを使って南極点に到達しよう」という実に壮大な目標だ。もちろん、まだ誰も達成できていない現代の大冒険だが、最近、挑戦者は増えているという。
ゼベックスがコンバートしたEVジムニーは、1981年製のスズキジムニーSJ30がベースだ。完成したのは2000年で、車検も取得。「SJ2001」号と名付けられた。
SJ2001号は、当時のEVでは一般的だった、シンプルな直流直巻モーターを搭載している。回生ブレーキは使えないが、超強力な低速トルクを発揮するモーターで、極悪路の走破には抜群の強さを発揮する。バッテリーは、当初からリチウムイオン電池を使っていたが、現在はより高性能な日産リーフの中古リチウムイオン電池(40モジュール、20kWh)に交換済み。一充電走行距離は130~140kmで、急速充電器で30分充電すればさらに約100kmの走行が可能になるという。
もちろん、本格的クロカン四駆のEVとして、悪路走破のための機能もぬかりはない。ウインチは8000ポンド引きで、車両の前後に装備されている。また、スタックからの脱出作業に備え、大径タイヤに対応した公認リーフスプリングやシャックルのほか、6点式ロールバーの各所に牽引ポイントを増設してある。
南極点を目指し、厳冬期の間宮海峡でもテスト
「四輪駆動のEVに、ゼロエミッションの電力だけを使って南極点に到達しよう」。
創立当初に掲げた目標を実現するために、この約20年間、ゼベックスはさまざまなテストを行ってきた。2002年には、小型風車6基で発電した電力だけを使い、雪の中で野営をしながら10日間のテスト走行を敢行。2003年には、風車とソーラーパネルで発電した電力だけで、京都から東京までを走破した。さらに2005年には、同様の発電方法を利用し、EVジムニー2号機「ARK-1」号で、厳冬期のロシア・サハリン島から凍結した間宮海峡上を電力のみで走行した実績もある。
その後、SJ2001号は改造が重ねられ、プラグインハイブリット仕様へと進化。北海道の宗谷岬から鹿児島県の佐多岬までを、名目燃費50km/Lでの列島縦断にも成功した。
奇しくも今年は、スズキ自動車がジムニー販売を開始して50周年目にあたる。この記念すべき年に、次の50年につながる未来型EVジムニーを世に送り出せたことは、ゼベックスにとって小さな誇りだという。現在、5台のEVジムニーを運用しているゼベックスは、SDGsの時代を走り抜く、ガソリンジムニーの性能と遜色ないEVジムニーを、今後も広く社会に示していきたいとしている。
【SJ2001号 車両スペック】
ベース車両:昭和56年製スズキジムニーSJ30
全長:319cm
全幅:139cm
全高:173cm
車両重量:1010kg
燃料の種類:電気
定格出力:18.6kw
乗車定員:2人