レクサスの高級クルーザーはやっぱりスゴかった! マイアミで世界初披露
2019年秋、レクサスは同社初のラグジュアリーヨット「LY650」を世界初披露した。発表の舞台に選ばれたのは、アメリカのフロリダ州マイアミ。レクサスがつくる船とはいかなるものか。モータージャーナリストの小川フミオが現地からレポートする。
発表の舞台はマイアミ
フロリダ州はラグジュアリーヨット天国だ。毎年秋には大規模なボートショーが開催され、世界中から贅沢なヨット(英語ではクルーザーもヨットという)が集まる。そればかりか、欧州のスポーツカーも並べられたりと華やかなイベントだ。
2019年秋に出かけたフロリダ州では幸い、晴天にめぐまれた。旅行チケットを予約していても、この時期はハリケーンの不安がつねにつきまとう。なので、青い空の下、広がる海と、道路に並ぶパームツリーといった景色を見られたのは幸運だったのだ。
フロリダといえば、リタイヤした米国人が好む場所。マイアミ近辺は、そのひとたちのための高層マンションが建ち並ぶ。ヨットを楽しむひとは、大西洋に面した海岸線に沿うように内陸に設けられた広い水路沿いに家(往々にして大邸宅)をかまえ、船を係留しているのだ。
フロリダのなかでもマイアミのイメージは、このように華麗なのだが、昨今は、毎冬のデザインとアートのイベント「デザインマイアミ」で知られるようになった。かつての工業地区もそのトレンドを積極的に取り入れ再開発が進行中だ。
欧米の一流ブランドが軒を連ねるショッピング地区「マイアミ・デザインディストリクト」も完成し、新しい魅力が加わった。
マイアミ・デザインディストリクトでは、グッチやフェンディやルイヴィトンといった、著名なブランドが、「デザイン」というキーワードで作りあげたユニークなファサード(外壁)を持つブティックを展開する。「パームコート」と名づけられたメインの建物(レストランとか入っている)は建築家、藤本壮介の設計だ。青いガラスを多用した一見の価値ある建築である。
クルマを借りれば従来のマイアミとともに、新しいマイアミの風情も楽しめる。マイアミの魅力のひとつに、名物ともいえるキューバ料理があるが、早速クルマで食べに出かけた。キューバ料理店で提供されるサンドイッチは、豚の脂を練り込んだ独特の風味のパンを使い、日本ではまず食べられない美味にも出会うことができた。
なぜヨットを手がけたのか
さて、そんなマイアミのヨットリゾート「ボカラトン」で、この秋、レクサスは「LY650」なる65フィート級という国際サイズのフライブリッジクルーザーを発表した。
「ヨットの専門メーカーでないだけに、思いきりよくデザインしました」。レクサスインターナショナルの澤良宏プレジデントが現地で言っていたように、まるでレクサス車のように美しいカーブを多用した船体にメタリックの塗色と、さらに細部までていねいに気を配られた仕上げが印象的なヨットなのだ。
米のマーキーヤッツ社の協力を得て作りあげた船体が、マイアミの水路に浮かんでいるさまは、かなり目を惹く。実際、現地のヨットオーナーたちが、「これはおもしろいね、とても興味をひかれる」と言っていた。
高級ヨットだと伊のアジムットが知られるが、それをクルマで言うフェラーリ(ポルトフィーノかなあ)だとすると、レクサスのクルーザーLY650は、レクサスLC500というまったく異なる魅力を発するスポーツカーが登場したのと似ている、と私は思った。
なぜレクサスがヨットを手がけたのか。レクサスのチーフブランディングオフィサーを務める豊田章男氏は、ジャーナリスト向けのお披露目の席上に姿を見せ、「(レクサスは)クルマにとどまっていないモビリティブランドとして陸、海、空を目指していますから」と話した。
欧米には、陸(クルマ)と海(ヨット)と空(航空機)が出会うようなリゾートがいくつもあり、フロリダもそこに含まれる。けっして豪華である必要はない。楽しければいい。レクサスのものづくりの原点もおそらくさまざまな”楽しみ”の提供にあるのではないか。LY650は(いまのところ)その頂点にあるのだ。