【東京モーターショー2019】大型商用車・日野/UDトラックス編
東京モーターショー2019の青海展示棟Aホールに出展した、国内大型商用車メーカー4社から、日野とUDトラックスのコンセプトカーや市販車最新モデルを取り上げる。
日野はトラックではなくプラットフォームを世界初公開
日野は、近未来が舞台のアニメ「あの日の心をとらえて」を上映し、持続可能な未来を実現することをアピール。そして、そのコンセプトモデルとして、「FlatFormer(フラットフォーマー)」を世界初公開した。
モビリティ用プラットフォームのコンセプトモデル「FlatFormer」
「FlatFormer」は、モビリティ上で人が活用できる空間を最大化するため、EVならではの機構により全高335mmという薄さを特徴とする。ボディを載せ替えることで、さまざまなサービスに対応させられるコンセプトだ。
上画像は、「FlatFormer」を活用した一例で、宅配用ボディを搭載したもの。そのほか下画像のように、サービスに応じたさまざまなボディが提案されていた。
子どもたちにも人気だった「路肩待避型ドライバー異常時対応システムシミュレーター」
日野は研究中の最新技術として、ドライバーの異常を車両が検知した際に車両を安全に停車させる「路肩待避型ドライバー異常時対応システム」、略して「EDSS(Emergency Driving Stop System)」を出展。EDSSは自動運転の技術を活用した機能で、ドライバーの異常を検知すると、クルマが周囲の安全を確認した上で自動的に路肩に待避するというものだ。今回はそのシミュレーターが出展され、子どもたちが並んで順番を待つほどの人気だった。
世界でも屈指のハイテクを装備した大型トラック「プロフィア ハイブリッド」
日野は今回、市販車として「プロフィア ハイブリッド」を出展。同車最大の特徴は、AIを活用した世界初のハイテクシステムを搭載していること。GPSや車載センサー、3D高精度地図情報をもとに、AIが100km先までの勾配から走行負荷を予測して最適なハイブリッド制御を行い、環境負荷を低減させるという仕組みを備えているのだ。
勇退した”ダカールの鉄人”菅原義正選手が最後に乗った2019年仕様「レンジャー」
1983年の初参戦以来、ダカール・ラリーの連続最多出場36回と最多連続完走20回というギネス記録を持つ菅原義正選手(78歳)は、2019年4月にダカール・ラリーからの引退を発表。今回展示された517号車(チーム内では1号車)は、義正選手が最後に搭乗したマシンとなる。
ちなみに2020年の日野チームスガワラは、義正選手の次男で同チームのエースである照仁選手が1号車を引き継ぎ、2号車には新たに招聘された塙郁夫(はなわ・いくお)選手が搭乗し、新体制でダカール・ラリーに挑む。
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続いてはUDトラックス!
ハイブリッド実験車や自動運転車などを出展したUDトラックス
UDトラックスは2030年までにEVトラックの量産化に向け、エネルギー効率や積載量、航続距離、静粛性などの技術開発に取り組んでいる。今回は、そのノウハウを得るために開発されたハイブリッド実験車「雷神」が初公開された。
将来のフル電動トラックの開発につながるハイブリッド実験車「雷神」
EVトラックを開発するための前段階として、現在UDトラックスではハイブリッドトラックの開発に注力しているという。中でも力が入れられているのが、食品倉庫などでの使用を想定し、必要に応じてEVモードで走行できる機能を搭載したハイブリッドトラックだ。「雷神」はそのための実験車である。
国内初のレベル4の自動運転実証実験用トラック「風神」
「風神」は、RTK-GPS(※1)や3D-LIDAR(※2)などのセンサーを搭載しており、自動運転レベル4(※3)の走行を行うことが可能だ。2019年8月に、UDトラックス、日本通運、ホクレン農業協同組合連合会が共同でレベル4の自動運転実証実験を実施。その際に「風神」は、砂糖の原料となるてん菜の運搬を自動運転で行った。
近未来のコンセプトモデル「Quon Concept 202x」
「Quon Concept 202x」は今から10年以内の近未来を想定した、より高度なスマートロジスティクス(※5)を実現するというコンセプトのトラック。ディスプレイやエクステリアのパーソナライゼーション、ドライバーをサポートするAI、カメラモニタリングシステムなどを備えている。
日本未発売の新興国向けの大型トラック「クエスター」
現在、UDトラックスはボルボ・グループ(乗用車を開発、生産するボルボ・カーズとは別グループ)の傘下にある。同グループのグローバルな技術と日本のものづくりを結集したのがこの大型トラック「クエスター」だ。2013年に新興国向けに発表され、2019年1月にはマイナーチェンジを実施。新興国向けトラックとしては初めて、同社が開発した電子制御式オートマチックトランスミッション「ESCOT」が標準搭載された。
東京モーターショー2019の国内大型商用車4メーカーのうち、日野だけはプラットフォームをメインに展示しているのが印象的だった。乗用車の話ではあるが、およそ100年前の黎明期、自動車メーカーはプラットフォームのみを製造し、ボディはコーチビルダーに任せるという分業制が採られていた。EV技術により、プラットフォームはメーカーが、ボディはビルダーがという分業制の時代が再来するのかもしれない。そんなことを思い起こされた。
また、UDトラックスのブースを見て感じたのは、大型商用車のための自動運転技術の確立に、メーカーが想像以上に力を入れていることだ。商用車のドライバー不足は深刻な状況になってきており、自動運転技術は乗用車以上に待望されている。華やかな一方、そんなことを考えさせられる東京モーターショー2019の大型商用車ブースだった。