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最終更新日:2019.10.24 公開日:2019.10.24

足だけで運転できるフランツ・システムとは?

両腕が不自由な方が足だけで運転できる「フランツ・システム」をご存じだろうか。その「フランツ・システム」の仕組みを紹介する。

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「フランツ・システム」は、自転車のペダルを漕ぐようにして足でステアリングを操作する。両腕に不自由を抱えていても、免許を取得し、フランツ・システムを装備した愛車に乗っている人は日本国内にも多くいる。第46回国際福祉機器展ホンダブースにて撮影。

 フランツ・システムは、両腕に不自由がある人が足だけで運転できる運転補助装置だ。発明者は、西ドイツ(当時)在住のエーベルハルト・フランツ氏。フランツ氏は20歳の時に感電事故で両手を失ってしまったが、9年の歳月をかけて開発し、1965年に西ドイツ運輸局の認定を受けた実績のある装置だ。日本においては、ホンダのみがフランツ・システムの仕組みとその名の使用許可を得ることに成功。そして「シビック」をベース車として右ハンドル車に装着できるようにするなどのさまざまな改造を実施し、1981年5月にフランツ・システム装着第1号が完成したのである。

フランツ・システムとはどのような仕組み?

 フランツ・システムは、ペダルにあらかじめ装着された靴を履き、自転車のペダルを漕ぐように上から下へと押し込む形で回すとステアリングが左に切れる。その逆の回転をさせると右に切れるという仕組みだ。この装置はステアリングペダルといい、これは取り外せば標準車のように通常のステアリング操作も可能だ。

第46回国際福祉機器展のホンダブースに展示されていたフランツ・システムの説明用展示パネルで使用されていた画像。ステアリングペダルを真横から撮影したもの。

 また両腕が不自由な場合、シートベルトの装着がひとりだと難しいが、その点も解決済みだ。乗り込んでドアを閉めると自動的に着用できる「パッシブシートベルト(自動装着シートベルト)」が開発されており、フランツ・システムを組み込んだホンダ車には同時に設定されるのである。

第46回国際福祉機器展のホンダブースに展示されていたフランツ・システムの説明用展示パネルで使用されていたパッシブシートベルト(自動装着シートベルト)の画像。

フランツ・システムは両腕が不自由な人でも運転できるよう、道交法の改正に一役買った

 1980年当時の道交法では、両腕に不自由がある人はクルマの運転ができないことになっていた。しかし、1981年は国際障がい者年であり世間の注目が集まっていたこと、そしてこのホンダの活動がさらに世論を動かすための大きなきっかけのひとつとなり、最終的に道交法が改正。1982年7月7日から施行され、両脚に一定の障がいがなければ、両腕に不自由がある人でもクルマを運転できるようになったのである。

 現在、車いすを利用する下肢に不自由がある人や片腕が不自由な人の運転を補助するシステムは、国内ではホンダのほかにもトヨタ、スバル、マツダなども用意している。しかし、両腕に不自由がある人でも運転できるシステムを用意している自動車メーカーはホンダだけだ。


 そしてホンダの近年のフランツ・システムに関する動向としては、2016年に3代目「フィット」にフランツ・システムを搭載できるようにしたことが挙げられる。しかし現在、「フィット」は4代目へのフルモデルチェンジを控えていることなどもあって、フランツ・システムの搭載は休止中だ。ホンダ広報によれば、4代目「フィット」へのフランツ・システムの対応の可否については10月23日現在は未定とのこと。しかしフランツ・システム自体の開発は続けており、決定次第、対応車種を発表するとしている。

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