ホンダ、Honda eの次の長距離EV用パワートレインを披露
独フランクフルトモーターショー2019で、EV「Honda e」の量産モデルを世界初公開したホンダ。今後、同社は販売車種の電動化率を上げていくことを宣言しており、EVの開発も進む。9月11日から13日まで開催されたEV・PHEV普及活用技術展「EVEX2019」において、ホンダは「Honda e」のネクスト、長距離用途の次世代EV用パワートレインを披露した。
独フランクフルトモーターショーでホンダは、EV「Honda e(ホンダイー)」の量産モデルを世界初公開した。同車はWLTPモード(※1)で航続距離200km以上という、比較的航続距離の短い、シティーコミューターという位置付けだ。ホンダは、欧州においては2025年までに4輪の全販売車種を電動車両に置き換えることも発表済みで、PHEVやEVの開発が進む。
長距離用途のEVシステムとHondaアーキテクチャーを融合させた次世代EV用パワートレイン
今回、EVEX2019で披露されたパワートレインは、都市間の移動を可能とする長距離用途のEVシステムとHondaアーキテクチャーを融合させた次世代EV用のものだ。ホンダの現行ハイブリッド車に搭載されている2モーターシステム「i-MMD(SPORTS HYBRID i-MMD)」(※2)で培った技術を発展させたシステムだという。
特徴としては、重量配分が50:50かつ低重心、リアメイン駆動(後輪駆動もしくは全輪駆動)、平置きのバッテリーパックなどがある。低重心なのはもちろんバッテリーがシート下かつホイールベースの間に収められているからだ。そして駆動輪は、基本的にはリアドライブユニットを搭載した後輪か、フロントドライブユニットも搭載した全輪駆動となる。ホンダといえば、ガソリン車ではFF車のイメージがとても強いが、EVでは後輪駆動をメインとするようだ(「Honda e」も後輪駆動)。
バッテリーのサイズはこれで決定というわけではなく、クルマのホイールベースや全幅などに合わせて可変させられるという。今回展示されていたバッテリーパックは全長のある大型タイプで、「N-BOX」のような軽自動車では搭載できないサイズである。バッテリーの容量も展示の大容量タイプだけでなく、サイズの小さい小容量タイプも用意される計画だ。EVとして検討されている車種としては、SUV/クロスオーバーSUVは大容量タイプの全輪駆動および後輪駆動、小容量タイプの後輪駆動の3タイプ。セダンは、小容量タイプを搭載して全輪駆動と後輪駆動の2種類を考えているようである。
このバッテリーパックの特徴としてはそのほかにも「高密度パッケージ」であること、「地域ごとに最適の多種類バッテリーに対応」すること、「バッテリー自体の構造体を衝突安全および車体剛性の強度アップに活用する」といったことも挙げていた。
前後のドライブユニットの特徴は?
フロントとリアのドライブユニットは、どちらもモーターやインバーターなどをひとまとめにした機電一体構造を採用。モーターは高出力高密度のものが採用されている。またサイズに関しては、特にフロントは搭載機種を増やすために、小型化を実現したようだ。
ボンネット前部に搭載されるであろう充給電システム
ホンダは、欧州のEVユーザーと、電力サービス事業者の双方に向けた総合的なエネルギーマネジメントソリューションの提供を目的として、2017年のフランクフルトモーターショーで充給電システム「Honda Power Manager Concept(ホンダ パワーマネージャーコンセプト)」を発表。同コンセプトでは、2020年の「Honda e」の発売に合わせ、単方向充電器を通じたソリューション事業を開始するとしている。その次のステップとして2020年代前半に、双方向充電器を通じたEVユーザーと電力サービス事業者間で電気を融通し合うという双方向ソリューション事業を開始する予定としている。今回展示された充給電システムは、V2L(※3)/V2H(※4)/V2G(※5)に対応した双方向コンバーターを搭載したものであり、双方向ソリューション事業を考慮したもののようだ。
現在、日本で販売されている都市間の移動など長距離移動が可能なEVのうち、比較的購入しやすい価格帯のクルマとしては、日産リーフを筆頭に、テスラ・モデル3、フォルクスワーゲン(VW)e-Golf、BMW・i3などがある。このほか、「Honda e」と同時期の2020年の半ばに欧州での納車が開始されるのが、VWのモジュラーエレクトロックツールキットをベースにした次世代EVシリーズの第1弾ID.3 1stだ(日本での販売は数年後とされる)。今回のパワートレインを搭載したホンダの長距離用途のEVは、これらと勝負することになると思われる。
ID.3 1stの価格は未発表だが、そのほかの輸入車3車種は、普及車とするには若干高めで日本国内では500万~600万円台で販売中だ。それに対してリーフは一充電走行距離がWLTCモードで322km(バッテリー容量40kWh)と458km(同62kWh)、価格は40kWh搭載車が324万3240円(消費税8%込み)から、62kWh搭載車が416万2320円(消費税8%込み)からとなっている(助成金は含まない)。「Honda e」の日本国内での販売が早ければ2020年内といわれていることから、今回のパワートレインを搭載したホンダの長距離用EVが国内で市販される時期は、2020年代前半から半ばになるのではないだろうか。