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最終更新日:2019.09.17 公開日:2019.09.17

ホンダ、Honda eの次の長距離EV用パワートレインを披露

独フランクフルトモーターショー2019で、EV「Honda e」の量産モデルを世界初公開したホンダ。今後、同社は販売車種の電動化率を上げていくことを宣言しており、EVの開発も進む。9月11日から13日まで開催されたEV・PHEV普及活用技術展「EVEX2019」において、ホンダは「Honda e」のネクスト、長距離用途の次世代EV用パワートレインを披露した。

 独フランクフルトモーターショーでホンダは、EV「Honda e(ホンダイー)」の量産モデルを世界初公開した。同車はWLTPモード(※1)で航続距離200km以上という、比較的航続距離の短い、シティーコミューターという位置付けだ。ホンダは、欧州においては2025年までに4輪の全販売車種を電動車両に置き換えることも発表済みで、PHEVやEVの開発が進む。

※1 WLTPモード:WLTPはWorldwide-harmonized Light vehicles Test Proceduresの略で、「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法」と訳される。国際的に統一された試験サイクル・試験方法のことで、ロー、ミドル、ハイ、エクストラ・ハイの4種類の速度域での燃費が調べられて表示される。ただしエクストラ・ハイは時速約130km以上の速度域となるため、日本国内ではそれを除いた市街地(ロー)、郊外(ミドル)、高速道路(ハイ)という3種類を扱った燃費測定方法「WLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)」モードが導入されている。WLTPとWLTCはほぼ同じと考えていい。

長距離用途のEVシステムとHondaアーキテクチャーを融合させた次世代EV用パワートレイン

次世代EV用パワートレイン。今回はフロントドライブユニット、充給電システム、バッテリーパック、リアドライブユニットが展示されていた。バッテリーユニットの大きさが目を引き、このままのサイズで搭載するとなると、ホイールベースもトレッドも大きくなりそうである。

 今回、EVEX2019で披露されたパワートレインは、都市間の移動を可能とする長距離用途のEVシステムとHondaアーキテクチャーを融合させた次世代EV用のものだ。ホンダの現行ハイブリッド車に搭載されている2モーターシステム「i-MMD(SPORTS HYBRID i-MMD)」(※2)で培った技術を発展させたシステムだという。

※2 i-MMD:intelligent Multi-Mode Driveの略。発電用モーターと走行用モーター、ハイブリッド専用エンジンで構成される、ホンダの2モーターハイブリッドシステムの名称。

 特徴としては、重量配分が50:50かつ低重心、リアメイン駆動(後輪駆動もしくは全輪駆動)、平置きのバッテリーパックなどがある。低重心なのはもちろんバッテリーがシート下かつホイールベースの間に収められているからだ。そして駆動輪は、基本的にはリアドライブユニットを搭載した後輪か、フロントドライブユニットも搭載した全輪駆動となる。ホンダといえば、ガソリン車ではFF車のイメージがとても強いが、EVでは後輪駆動をメインとするようだ(「Honda e」も後輪駆動)。

ホンダの次世代EV用パワートレインを後方から。バッテリーパックの巨大さがわかる。現状、都市間で使用できる航続距離にしようとすると、バッテリーパックが大型になってしまう。ホンダとしても、技術革新によってエネルギー効率のより優れたバッテリーが誕生することを期待しているという。

 バッテリーのサイズはこれで決定というわけではなく、クルマのホイールベースや全幅などに合わせて可変させられるという。今回展示されていたバッテリーパックは全長のある大型タイプで、「N-BOX」のような軽自動車では搭載できないサイズである。バッテリーの容量も展示の大容量タイプだけでなく、サイズの小さい小容量タイプも用意される計画だ。EVとして検討されている車種としては、SUV/クロスオーバーSUVは大容量タイプの全輪駆動および後輪駆動、小容量タイプの後輪駆動の3タイプ。セダンは、小容量タイプを搭載して全輪駆動と後輪駆動の2種類を考えているようである。

 このバッテリーパックの特徴としてはそのほかにも「高密度パッケージ」であること、「地域ごとに最適の多種類バッテリーに対応」すること、「バッテリー自体の構造体を衝突安全および車体剛性の強度アップに活用する」といったことも挙げていた。

前後のドライブユニットの特徴は?

フロントドライブユニット。

リアドライブユニット。

 フロントとリアのドライブユニットは、どちらもモーターやインバーターなどをひとまとめにした機電一体構造を採用。モーターは高出力高密度のものが採用されている。またサイズに関しては、特にフロントは搭載機種を増やすために、小型化を実現したようだ。

ボンネット前部に搭載されるであろう充給電システム

充給電システム。

 ホンダは、欧州のEVユーザーと、電力サービス事業者の双方に向けた総合的なエネルギーマネジメントソリューションの提供を目的として、2017年のフランクフルトモーターショーで充給電システム「Honda Power Manager Concept(ホンダ パワーマネージャーコンセプト)」を発表。同コンセプトでは、2020年の「Honda e」の発売に合わせ、単方向充電器を通じたソリューション事業を開始するとしている。その次のステップとして2020年代前半に、双方向充電器を通じたEVユーザーと電力サービス事業者間で電気を融通し合うという双方向ソリューション事業を開始する予定としている。今回展示された充給電システムは、V2L(※3)/V2H(※4)/V2G(※5)に対応した双方向コンバーターを搭載したものであり、双方向ソリューション事業を考慮したもののようだ。

※3 V2L:Vehicle to Loadの略。EVやPHEVを電源として外部に給電することもしくはそれを可能とする技術のこと。
※4 V2H:Vehicle to Homeの略。EVやPHEVを電源として家庭に給電することもしくはそれを可能とする技術のこと。
※5 V2G:Vehicle to Grid。EVやPHEVを送電網にバッテリーとして組み込んで利用すること、もしくはそれを可能とする技術のこと。


「Honda e」の量産モデル。英国、ドイツ、フランス、ノルウェーで先行予約を開始しており、2020年初夏より順次デリバリーを開始。国内での販売時期は未発表だが、2020年中ともいわれている。

 現在、日本で販売されている都市間の移動など長距離移動が可能なEVのうち、比較的購入しやすい価格帯のクルマとしては、日産リーフを筆頭に、テスラ・モデル3、フォルクスワーゲン(VW)e-Golf、BMW・i3などがある。このほか、「Honda e」と同時期の2020年の半ばに欧州での納車が開始されるのが、VWのモジュラーエレクトロックツールキットをベースにした次世代EVシリーズの第1弾ID.3 1stだ(日本での販売は数年後とされる)。今回のパワートレインを搭載したホンダの長距離用途のEVは、これらと勝負することになると思われる。

 ID.3 1stの価格は未発表だが、そのほかの輸入車3車種は、普及車とするには若干高めで日本国内では500万~600万円台で販売中だ。それに対してリーフは一充電走行距離がWLTCモードで322km(バッテリー容量40kWh)と458km(同62kWh)、価格は40kWh搭載車が324万3240円(消費税8%込み)から、62kWh搭載車が416万2320円(消費税8%込み)からとなっている(助成金は含まない)。「Honda e」の日本国内での販売が早ければ2020年内といわれていることから、今回のパワートレインを搭載したホンダの長距離用EVが国内で市販される時期は、2020年代前半から半ばになるのではないだろうか。

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