東京を空から守る8機の消防ヘリ!! 東京消防庁は航空装備も日本最強だった!
日本最強の装備を誇る東京消防庁は、日本で初めて航空部隊を設置した消防組織でもある。現在は8機の消防ヘリを擁し、空からの消火活動、人命救助、救急搬送、情報収集など、多岐にわたって活躍している。そんな東京消防庁航空隊と、同隊が運航する消防ヘリを紹介する。
東京消防庁航空隊は1966年11月に東京消防庁機械部(現・装備部)に設置された、日本で最も歴史のある消防航空隊である。消防ヘリの運航開始は1967年4月のこと。仏・シュドアビエーション社製SE3136型「アルクウェットIII」を「ちどり」と命名し、消防ヘリ1号機として運航した。同年10月には、出場(※1)1件目となる患者の救急搬送が記録されている。1969年5月には、消防ヘリによる初の林野火災の消火活動も実施された。
航空隊は1973年4月には課格相当の組織に昇格。現在は、江東航空センター(江東区新木場の東京ヘリポート内)と、多摩航空センター(立川市泉町の立川飛行場内)のふたつの基地があり、中型と大型それぞれ4機ずつのヘリを運航している。
消防ヘリの主な任務は、上空からの消火活動、山岳・水難事故などでの人命救助、内陸および伊豆諸島での患者の救急搬送、上空からの情報収集など。また、大規模災害が発生した際には、国内外を問わずに派遣が行われている。
【中型ヘリ】
1号機「ちどり」(4代目):アグスタウェストランド社製「AW139」2017年4月運航開始
3号機「かもめ」(3代目):ユーロコプター(現・エアバス・ヘリコプターズ)社製AS365N3型「ドーファンII」2009年4月
5号機「つばめ」(2代目):「ドーファンII」2010年4月
総務省消防庁「おおたか」(初代):「ドーファンII」2006年4月
【大型ヘリ】
2号機「ひばり」(3代目):ユーロコプター社製AS332L1型「スーパーピューマ」2001年6月
4号機「ゆりかもめ」(3代目):ユーロコプター社製EC225LP「スーパーピューマ」2008年4月
6号機「はくちょう」(2代目):EC225LP型「スーパーピューマ」2014年4月
7号機「こうのとり」(初代):EC225LP型「スーパーピューマ」2014年3月
4代目が運航を開始して最新鋭となった1号機「ちどり」
1967年4月に運航を開始した1号機「ちどり」は、1982年に2代目に、1997年3代目に機体をリプレース。そして2017年4月に、航空隊で最新となるリプレースが行われて4代目となった。
初代から3代目までは、ユーロコプター(現・エアバス・ヘリコプターズ)社製の「ドーファンII」が採用されていたが、現行の4代目は英国とイタリアに拠点を置くアグスタウェストランド社製の「AW139」に。2機を比較した場合、「AW139」の方が最高速度で時速29km速く、航続距離で269km長い。また600kgも重い物体を吊り下げられるなど、性能がアップしている。
「ちどり」は3代目のときに、2004年12月にスマトラ沖大地震・インド洋津波災害に派遣されたほか、2007年7月の中越沖地震にも派遣された。
現行3代目が2010年から運航中の5号機「つばめ」
1号機「ちどり」が1982年4月に2代目に機体リプレースした際に選定されたのが、ユーロコプター社製AS365N3型「ドーファンII」。3号機「かもめ」、5号機「つばめ」も2代目以降は「ドーファンII」が採用されてきた。2006年から運航を開始した総務省消防庁から無償貸与されている「おおたか」も「ドーファンII」である。
4代目「ちどり」のアグスタウェストランド社製「AW139」の方が「ドーファンII」よりも新しいためにスペック的には上だが、消火装置やヘリテレビ伝送装置など、「ちどり」にはない装備を「かもめ」や「つばめ」は備えている。
「かもめ」は、2代目時代に国際消防救助隊(IRT)として、1991年5月にバングラディシュ人民共和国のサイクロン災害に、1997年10月にはインドネシア共和国の森林火災に派遣された。また国内では、2000年の北海道有珠山噴火災害に派遣されている(そのほか、1998年2月の長野オリンピックにも派遣された)。
上画像は、出初式の消防演技において、高層演技塔の屋上に隊員を降下させる場面。このあと、ロープをさらに伸ばして隊員を屋上に降下させた。
7号機「こうのとり」は4機目の大型ヘリとして2014年3月から運航開始
東京消防庁の消防ヘリ8機のうちで、最も新しく運航を開始したのがこの7号機「こうのとり」だ。中型ヘリと比べて、エンジンの最高出力が高いことから、搭乗可能な人員も多く、スリング(吊り下げ)能力も大きい。またオートホバリング(自動空中停止)などの新機能も備えている。
4機ある大型ヘリの機体は、「こうのとり」に加えて4号機「ゆりかもめ」と6号機「はくちょう」も機体は同じEC225LP型「スーパーピューマ」。2号機「ひばり」のみが、1世代前のAS332L1型「スーパーピューマ」となっている。
大型ヘリ4機すべてに備えられている救急装備の「EMS担架装置」は、重篤患者の搬送も行えるよう、高度な処置を機内でも継続できるEMSキットが備えられた担架装置だ。
大型ヘリは東日本大震災や2018年の北海道胆振東部地震を初め、過去に幾度か国内の震災現場に派遣されている。東日本大震災のときは、中型と大型合わせて5機が岩手・宮城・福島の東北3県に加え、震度6の地震が発生した静岡と新潟にも出場。そのときの派遣日数は64日におよび、消火活動や救急搬送、物資輸送などで活躍した(東京消防庁からは629人の隊員と、消防車両や消防ヘリなど104機が派遣された)。
現在の東京は100mを超えるタワーマンションも多く、40m級のはしご車をもってしても、地上からの消火活動が困難な場面も少なくない。また大規模震災の場合は、幹線道路の道路啓開が完了するまでは陸上車両は現場に入れない。そんな状況で頼りになるのが、いわずもがなの空の消防装備だ。
実際、「こうのとり」が8機目として2014年に追加配備されたことからもわかるように、東京消防庁では年々消防ヘリの出場回数が増えつつある。また最新の空の装備としては、2機のドローンも配備済みだ。空でも日本最強の消防組織なのが東京消防庁である。