オート上海2019レポート
中国は、年間3000万台近い新車が販売される世界最大の自動車市場。3年前に初めて訪れ、そこに集う車と人々の熱気に圧倒された筆者の上海モーターショー2019レポート。2年前と比べて、今年筆者が気になったものとは?
2019年4月20日から一般公開が始まった第18回オート上海(上海モーターショー)。中国のモーターショーに3年連続で取材に出掛けた筆者の視点で、その様子をレポートする。
日本ブランドの注目車種は、LEXUS初のミニバンと新型シルフィ
今回も日系メーカーから多くの新型車が発表されたが、特に注目の2台を紹介してみたい。
LEXUS初のミニバン「LM300h」
1台はLEXUS初のミニバン「LM300h」。VIPを対象にしたビジネスユースを想定しているためか、前席と後席の間にはパーテーションが設けられている。ちなみにここは完全に見えない扉仕様にもなる。後席は広々とあしらわれた2座席のみ。最高級シートの脇にはワインクーラーも用意されいている。
LEXUS初のミニバン LM300hが登場。後席2座のゆったり設計は完全VIP仕様だ。(撮影・加藤博人)
ベースとなるのは、トヨタ自動車純正のコンプリートカー「アルファードロイヤルラウンジ」。今回紹介している「LM300h」はこれをベースに、一層高級な仕様に仕立てたものだ。日本からの輸入モデルとなり、中国での販売価格は3000万円を超えるそうだ。
NISSAN新型「シルフィ」
日産からは新型「シルフィ」が発表された。長年にわたって中国市場で支持されている「シルフィ」は、昨年だけで48万1000台以上を販売し、中国車も含めた全乗用車で販売台数1位を獲得した。ちなみに「シルフィ」1車種だけで、日本における日産車全体の販売台数(42万6323台)を軽く上回っている。その数には圧倒されるばかりだ。
2018年、SUVなど含むすべての乗用車で一番売れた車。日産シルフィが、14代目にフルモデルチェンジ。(撮影・加藤博人)
フルモデルチェンジを受け14代目となった「シルフィ」には、新開発の1.6Lエンジンを搭載。室内はより広く、より上質で、特に遮音性が大幅に向上している。日系ブランドの絶大な信頼と高品質。そして130万円~という低価格であることが中国髄一の人気車種となった理由だ。
2年前と今年のモーターショーで大きく変わったことは?
筆者が2年前と比較して「すごい進歩!」と思ったのは、前回多数目に付いたパクリ車が、完全に一掃されていたこと。昨年の北京モーターショー(上海と北京で隔年開催)では、パクリ車はほとんど見ることがなかった。しかし北京と上海では、出展傾向がかなり違うと感じていたので、今年の上海でも前回に続いてパクリ車が見られるのではないかと、実は密かに楽しみにしていた。それだけに驚きは大きかった。
中国の裁判所からついに「パクリ認定」を受けたLANDWIND。※写真は2017オート上海のもの (撮影・加藤博人)
前回のオート上海では、レンジローバー激似の「LANDWIND X7」やポルシェマカン激似の「ゾタイSR9」などがラインナップされ、ブースに多くの来場者が押し寄せていたが、今年は「ゾタイSR9」の出展はナシ。「LANDWIND X7」は、ランドローバーの訴えを認めた中国の裁判所が、該当車両の宣伝や広告、製造・販売までを禁じたため、少し「顔を換えて」出品されていた。
2019年は少し顔を換えて再登場した「LANDWIND X7」。これでようやくレンジローバー色が薄まった?(撮影・加藤博人)
変わらないモノ、それは展示ブースや車両の「掃除」!
中国のモーターショーではおなじみのお掃除風景。1日中、大勢の人がひっきりなしに掃除をしている。(撮影・加藤博人)
劇的な進化を遂げつつある上海モーターショーだが、まったく変わらないものがある。それは展示車両の「掃除」だ。国やブランドに関係なく、どのブースでもひっきりなしに掃除をしている人が異様に多い。日本では考えられないが、プレスデーだろうと撮影中だろうとお構いなし。カメラを構えていても車磨きをやめようとしない。床磨きをしている人も多いので、写真に写り込まないようアングルを考えるのが一苦労だった。
そして、いちばん問題だと思うのが、乾いた布で何度も磨いているためか、展示車のボディにスクラッチ傷がどんどん増えていくこと。そんな中、VWやAUDIの展示車両にはほとんど傷がついていなかったので、スタッフに聞いてみたところ「傷がつかない特別な布を使っている」と言っていたが、いずれにせよ展示中のクルマ磨きはほどほどにしてもらいたいと思わずにはいられない。
また、もう一つ変わらないものは、情報発信がほとんど国内市場向けであるという点。プレスリリースにも英語で記載されたものすらほとんど見当たらない。国内だけで年間3000万台近く売れていれば、わざわざ海外に発信することもないのだろうか?
そう思っていた矢先、純国産(つまり中国産)で、海外市場進出をもくろんでいるメーカーを発見した。それが「中国のLEXUS」を目指す長城汽車だ。
WEYブランドのインテリジェントラグジュアリーSUV「VV6」。内装、外装ともに欧州車に負けない上品さと高級感を兼ね備えていた。(撮影・加藤博人)
こちらのブースでは、昨年8月末に国内販売を開始したWEIブランドのSUV「VV6」などを展示。英語版のプレスリリースも用意され、欧州市場への進出を発表したのは印象的だった。WEIブランドが欧州の市場でどれだけ受け入れられるのか、これから興味深く見守っていきたいところだ。
2019年4月23日(雨輝・加藤久美子)