世界の自動車人気色調査でホワイトが7年連続1位。
塗料のグローバル大手企業であり、自動車のカラートレンド及びカラー技術のリーダーである、アクサルタ コーティング システムズ合同会社(以下、アクサルタ)が、2018年10月17日に最新の自動車カラートレンドについての説明会をメディア向けに実施。同社ではこの日、世界の『自動車人気色調査報告書』と、自動車業界向けに2018年のカラートレンド『Color vIEw 2018』を発表した。国によって人気の高い色に大きな違いはあるのだろうか。また、カラートレンドとはどのように変動しているのか。
この日は、アクサルタのグローバル・カラー・マーケティング・マネージャーのナンシー・ロックハート氏(写真)が来日し、同社独自の見解を説明した。
世界的に人気の高いカラーはホワイト
世界の地域・車種別自動車の人気に関する詳細なレビューを提供するアクサルタ。同社の自動車人気色調査は、今回で65回目を迎える。この調査の結果、世界的に最も人気が高い色は、7年連続でホワイトとなった。ホワイトのシェアは昨年より2%上昇。また、この5年で10%上昇し、現状では世界中でホワイト系の塗装が39%のシェアとなっている。中でも中国は他の地域に比べ、ホワイト系の車の生産量が最も多く、新車販売の62%を占めるとのこと。また、日本では高級感のある色として、ホワイト系の中でもパールホワイトの人気が最も高い。
2017年 世界の自動車の人気色は7年連続でホワイトとなっている。中でも中国では国内の60%以上のシェアを誇っている。
汚れが目立ちそうなホワイトが、アフリカで選ばれる理由とは?
定番のホワイトが世界的にも人気のカラーとなっているのはわかったが、上記の結果で意外だったのが第2位のアフリカ。日本の道路舗装率80.1%と比較してもアフリカの道路舗装率は17.3%と低い(統計局「世界の統計2012」より)。舗装されていない道路が多く、砂ぼこりなども激しそうなイメージがある。いかにも車が汚れやすそうなイメージがつきまとう国だが、それでも白の人気が高いのは何故だろうか。グローバル・カラー・マーケティング・マネージャーのナンシー・ロックハート氏に聞いてみた。
「アフリカの人気色の傾向として、白・シルバーが上位を占めている理由には「気温」が挙げられます。アフリカは気温が高い地域であるため、より光を反射して熱を抑えることが、車体のカラーを選ぶ際には重要視されているのではないかと推測されます。また『暗い色より明るい色の方が道路上で目立つ』という観点も白やシルバーが選ばれている理由のひとつではないかと推測しています」
アフリカで白が好まれるのは、嗜好よりも現実的な移動手段としての利便性が影響しているようだ。近年では、車体表面の温度上昇を色で抑制する塗料が、一部のトヨタ車で採用されている。これらが普及すると、色の選択肢は今後大きく変わってくるかもしれない。
ホワイトに次ぐ人気色、日本と世界の傾向は?
世界的に見て、ホワイトに次ぐ人気色はブラック。日本でも22%のシェアをキープしている。これに次ぐ人気色がグレーとシルバーで、世界的には2年連続で同率3位にランクイン。また、鮮やかな色ではブルーが最も人気の色となっており、世界中で7%のシェアを保っている。
左が日本の人気色、右が世界の人気色だが、トレンドに極端な差異は見られない。
日本と世界で、グレーの人気が異なる意外な理由とは?
日本と世界で比較しても人気色は同じような傾向であるものの、グレーに対する評価が大きく異なっている。世界ではシルバーに次いで「11%」のシェアとなっているものの、日本では大きく減少して「4%」。この差についてもロックハート氏に伺ってみた。
「データ等の裏付けがあるわけではなく、あくまで推測ではありますが、ひとつの理由として以下が考えられます。世界的には高級車の色として、昔からブラック・シルバー・グレーが選ばれることが多くありました。それに対し、日本ではかなり以前から、他の地域ではほとんどなかったパールホワイトの塗色がありました。こうしたことから、カラーラインナップの設定をする際に、日本ではパールホワイトが、グレーの代用とされていた歴史があるのではないかと考えられます。その結果、他地域に比べてグレーという塗色の人気がない(設定が少ない)のではないかと推測しております」
真珠をイメージさせる上品なパールホワイトが日本人受けする色であることはうなずける。ちなみにアクサルタの調査によると、近年では日本でもグレーのシェアが徐々に上昇の傾向にあるということも付け加えておきたい。
2018年のカラートレンドは「スターライト」
アクサルタが今年のトップトレンドカラーとしたのが「スターライト」。アクサルタの塗装シリーズから生まれ、自動車メーカー(OEM)向けに開発されたものだ。「スターライト」はパールホワイトをベースにした明るい反射色で、前述のように日本では古くから上品なホワイトの系統色として馴染みのあるカラー。パールホワイトの進化した色ともいえる「スターライト」は、3コート塗装プロセスが採用され、人目を引く効果を出すために、塗料には合成パールフレークを配合している。光を反射するパール色は高級感を演出し、あらゆるサイズの自動車にも映えるように設計されているそうだ。
スターライトのサンプルカラーを手にするロックハート氏。
「スターライト」も含まれるパールホワイトは、2017年には前年比4%上昇の13%の世界的シェアを記録したという。ロックハート氏によると、反射性が高く明るいパールホワイトは、LiDAR信号(光検出と測距システム)による検知が容易になるため、自動運転車の場合に機能面でも有益になるとのこと。カラーとしての魅力はもちろんだが、このように機能面でも有益な塗装色は、今後さらに重要性が増すとの見解を示した。
アクサルタでは、今回発表した『Color vIEw 2018』が、自動車メーカーが事前に計画を立てて、人気の高い自動車塗装色の需要へ対応したり、人気色のトレンドセッターとなることを可能にするとしている。上記のLiDAR信号での反応なども含め、今後は機能面でも有益な塗装色が徐々に注目を浴びることになりそうだ。