クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2018.06.22 公開日:2018.06.22

映画「マッドマックス」第1作の「ブラック・インターセプター」!

1979年公開の映画「マッドマックス」第1作の劇中で、主人公マックスの相棒兼”武器”として活躍した「ブラック・インターセプター」のレプリカ車。筑波山温泉・彩香の宿 一望、通称「インターセプターホテル」で「MAD MAX インターセプタープラン」を申し込むと、このレプリカ車の助手席に乗って公道を走ってもらえたり、運転席に座らせてもらえたりする。この1台は、劇中の撮影で使用されたオリジナルに世界で最も近いとされる”由緒正しい”1台。「MAD MAX インターセプタープラン」は大人1泊1万2000円(税別)で2食付き。「お台場旧車天国2017」にて撮影。

 ジョージ・ミラーが監督し、若き日のメル・ギブソンが主演した、バイオレンス・カーアクション映画「マッドマックス」(1979年公開)をご存じだろうか? 近未来のオーストラリアを舞台に、圧倒的なインパクトを見たものに植え付けた架空のマシン「ブラック・インターセプター」を覚えているだろうか?

 「マッドマックス」第1作は、凶悪な暴走族により大切なものを失ったマックス・ロカタンスキーが警官のバッジと矜持を捨て、強烈な復讐劇を始めるというストーリーだった。その復讐においてマックスの足であり、時には武器となったのが「ブラック・インターセプター」だったのである。

 インパクト絶大のカーアクションが展開されたり、暴走族たちがカワサキやBMWなど実在の大型バイクに乗っていたりするなど、「マッドマックス」第1作は当時の若者、現在の40~50代のクルマ好きやバイク好きに猛烈に突き刺さった。その大きな理由のひとつが「ブラック・インターセプター」だったのである。主人公マックスと並び、もう一方の主役だったといえる「ブラック・インターセプター」。それはどんなクルマだったのか?

車内にはマックスの警官の身分証明書をイメージした小物まで置いてあった(顔写真は許可を得ての使用かどうか確認できなかったため、伏せてあります)。「お台場旧車天国2017」にて撮影。

→ 次ページ:
「ブラック・インターセプター」に迫る!

劇中の「ブラック・インターセプター」はどんなクルマ?

「ブラック・インターセプター」のレプリカ車を別角度から。このレプリカ車のベース車は、劇中車と同じフォードの3代目「ファルコン XB GT」。このレプリカ車は世界で最も劇中車に近い”由緒正しい”1台とされる。その理由は、オーストラリア在住のゴードン・ヘイズ氏が手がけたからだ。ゴードン氏(同氏は、ファーストネームで呼ばれる)は、「ブラック・インターセプター」のレプリカ車製作に関しては、世界で唯一といわれるカリスマ・ビルダー。映画の撮影時に「ブラック・インターセプター」を製作したスタッフからパーツなどを譲り受け、現在では”オリジナルパーツ”を作れる唯一の人物とされる。このレプリカ車は、そのゴードン氏が製作した中でも、最も劇中車に近いとされる1台なのである。本国オーストラリアで、ゴードン氏が館長を務める博物館に展示されていたのだが、同車の日本人オーナーが交渉に交渉を重ねて譲ってもらったそうである。

 「ブラック・インターセプター」は、「ブラック・パーシュート・スペシャル」とも呼ばれ、マックスが警官時代に属していた警察の一部署であるMFP(メイン・フォース・パトロール)で開発されたパトカーだ。メカニックがあり合わせのパーツで開発したというが、「最後(最期とも?)のV8」を積んでおり、劇中で最速といわれる特殊な追跡用パトカーである(パーシュート=pursuitとは「追跡」の意味)。スーパーチャージャーを搭載しており、600馬力を誇る。

 MFP所属のほかの「インターセプター」はイエローとブルーをメインとしたカラーリングだが、「ブラック・インターセプター」はその名の通りにすべて黒で塗られており、パトカーとは思えない攻撃的な外見と相まって精悍な雰囲気を醸し出している。

 また「ブラック・インターセプター」の特徴として、サイドの8本出し(左右4本ずつ)のマフラーがある。現実的なことをいえば、本来はきちんと1本に集約させた方が出力的にも環境的にもいいわけだが、これはV8エンジンであることをわかりやすくした演出とされている。いずれにしろ、炎を吹き上げそうな迫力を感じさせる重要な特徴だ。

 しかし、最大の特徴は異なる。それは、ボンネットから突き出たスーパーチャージャーだ。

左右4本ずつサイドに突き出したマフラー。V8エンジンのシリンダー1本1本と直結していそうな、まるでドラッグレースのマシンのように炎を吹き上げて激走しそうな雰囲気だが、V8であることをわかりやすく表現するための演出とされる。現実的な話では、このようなエキゾーストパイプにしたからといって速くなるわけではなく、逆に不都合な面も多くなってしまう。ちなみにタイヤも劇中の通りでBFグッドリッチ製だ。

→ 次ページ:
最大の特徴であるスーパーチャージャーがすごかった!

スーパーチャージャーの作動は大迫力!

実際に劇中車にも搭載されていたウェイアンド社製スーパーチャージャー。同社は、近年になって当時のスーパーチャージャーのパーツを復刻。これにより、レプリカ車を作る際、スーパーチャージャーも本物を使えるようになった。劇中のスーパーチャージャーは現実には存在しない、オン/オフ機能を搭載しており、スイッチを入れると作動する仕組みだ。レプリカ車ではそれを見た目上で再現するため、エンジンとは完全に独立しており、スイッチを入れると電動モーターがスーパーチャージャーを作動させるようになっている。

 「ブラック・インターセプター」最大の特徴とは何か? それは、「マッドマックス」第1作を見たクルマ好きやカーアクション好きをシビれにシビれさせた、「ブラック・インターセプター」のボンネットから突き出た”架空の機構を備えた”スーパーチャージャーである。これぞ「ブラック・インターセプター」のトレードマークだ。

 スーパーチャージャーは機械式の過給器であり、現実の仕組みとしてはエンジンのクランクシャフトなどから、ベルトなどを介してモーターを駆動させ、コンプレッサーを作動させてより多くの空気をエンジンに送り込むというものだ。そのため、エンジンが回っている限りは常時スーパーチャージャーも作動する機構となっている。

 しかし劇中のスーパーチャージャーは、演出的な意味合いもあって架空の機構となっており、「ここぞ!」という時にスイッチで作動させる仕組みとなっていた。いってみれば、ニトロのような使い方ができるスーパーチャージャーだったのだ。

 マックスは終盤、復讐の鬼となってMFPから「ブラック・インターセプター」を盗み出し、暴走族たちの追撃を開始する。暴走族を追い詰めると、マックスはスーパーチャージャーを作動(劇中ではスイッチを引いて作動させていた)。すると、ベルトが高速で回り始め、独特の作動音と吸気音が発生。そして、暴力的なまでに加速する「ブラック・インターセプター」そのものを武器として、暴走族たちをバイクごとなぎ倒していったのである。

 余談だが、そのシーンでは、暴走族役のスタントマンたちがカワサキなどの重量級バイクの下敷きになったり、橋の欄干を突き破って遙か下方の川にバイクと共に落ちていったりと、「いくら何でも、スタントマン、大丈夫なのか?」と心配になってしまう迫力があった。あまりにも壮絶だったことから、劇場公開当時から長らく、第1作の撮影で「スタントマンが2名事故死した」というデマが信じられていたほどである。それほど、強烈なシーンが展開するのが「マッドマックス」なのだ。

→ 次ページ:
ベース車両に迫る!

ベース車の3代目「ファルコン」は特別な車種

こちらはまた別のオーナーが製作している「ブラック・インターセプター」のレプリカ車。「ブラック・インターセプター」に関して、日本一といってもいい詳細なサイト「THE REAL INTERCEPTER」の管理人の方が、各方面の協力を得て製作しているという1台。東京オートサロン2018で一般公開され、話題となった。インターセプターホテルのレプリカ車とは、ヘッドランプの周囲がゴールドの縁取りではなく黒く塗りつぶされている点などが異なり、別のクルマであることがわかる。ちなみに、こちらはベース車両は「ファルコン XC」(1978年式)。「XB」とはダッシュボードなどの内装が異なるという。

 「ブラック・インターセプター」の演出や迫力のある描写はものの見事に当たり、世界中において屈指の人気を誇る架空のクルマとなった。何しろ、劇場公開から40年近くが経った今でも、「ブラック・インターセプター」のレプリカ車を作りたいという人が後を絶たないほどである。現に、日本でも東京オートサロン2018にて新たなレプリカ車が披露された。

 劇中の「ブラック・インターセプター」は、フォードの3代目「ファルコン」の内、その中期型の「XB GT」をベースに開発された(1973年式とされる)。この3代目は特別で、米国のフォード本家ではなく、フォード・オーストラリアが独自に設計して生産した車種だった(フォード本家は2代目で生産を終了した)。

 現在では、劇中と同じとされる1973年式を探そうとすると、もう45年も経つため、状態のいいクルマは世界レベルで希少な状態となっている。そのため、中古市場価格も高騰しているそうで、「ブラック・インターセプター」のレプリカを作ろうとしても、かなりの困難を伴う状況となっている。

 なお日本には、「ブラック・インターセプター」のレプリカ車は今回紹介した2台を含め、10台以上が存在するといわれている。

東京オートサロン2018で展示されていたレプリカ車を、後方から。劇中の映像を詳細に調べた結果、「ブラック・インターセプター」の塗装は、実は黒は黒でも、上下で異なる黒だという。上半分がツヤのある黒で、下半分がツヤ消しの黒ということで、このレプリカ車も同様に塗装され、黒と黒のツートンカラーとなっている。

→ 次ページ:
劇中車&レプリカ車のスペック

劇中およびレプリカ車のスペック

東京オートサロン2018で展示されたレプリカ車も、ウェイアンド製スーパーチャージャーを搭載。ただし、インターセプターホテルのものとは金属の材質やベルトの色味などが少し異なる。

 劇中の「ブラック・インターセプター」のスペックについては、以下のことが判明している。

【エンジン】
種類:V型8気筒
最高出力:600ps
最大トルク:80kg-m
備考:ウェイアンド社製スーパーチャージャー装備
タイヤ:BFグッドリッチ

 インターセプターホテルのレプリカ車は確認が取れなかったが、東京オートサロン2018で公開されたレプリカ車のスペックは以下の通りだ。

【ベース車両】
車名:フォード「ファルコン XC」(1978年式)
サスペンション:スポーツハンドリング

【エンジン】
型式:351C-4V
排気量:5800cc
最高出力:600ps/6000rpm

【スーパーチャージャー】
メーカー:ウェイアンド
型式:6-71

【ホイール】
名称:パーシュートスペシャル専用ホイール
サイズ:前後共8.5J

【タイヤ】
メーカー:
BFグッドリッチ
名称:ラジアル T/A
サイズ:前235/50-15 後295/50-15

「ブラック・インターセプター」のサイドのマフラーは後方に斜めになっているように見えるが、真上に上がっており、先端が広がったファンネル型になっている。

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(10月31日まで)
応募はこちら!(10月31日まで)