忘れられがちな交通違反
春の全国交通安全運動に関する内閣府発行のポスター
春と言えば花粉症ともう一つ、「全国交通安全運動」を思い浮かべるドライバーも多いはず。筆者も、もちろんステアリングを握る限りは日頃からくしゃみ抑制と法令遵守には努めてはいるものの、この時期は特に警察の交通取締りが強化されることもあって、それが逆に気になるというのもまた事実。今回は、熟練のドライバーほど意外と見落としがちかもしれない交通法規について、横断歩哨体験から得られた取締り目撃談を交えて解説しよう。
周辺住民による横断歩哨の風景。警察のバックアップも得ながら、歩行者の歩きスマホや信号無視への注意も促す
交差点付近にはたくさんの危険がある
横断歩哨とは、交通量の多い大きな交差点や、狭い道にもかかわらず抜け道に使われるなどの理由によって比較的事故が多く発生する場所に立って、通勤・通学中の歩行者を事故から守るために配置される人のことだ。道路交通環境の改善に向けた取り組みを推進することを目的としているため、活動の中心は地域住民によるボランティアによる。視認しやすい蛍光色のベストに誘導灯や旗を持った姿を目にしたことがある人も多いはずだ。
この横断歩哨を筆者が実際にやってみたが、1時間やってみただけでもヒヤリとする場面の連続だった。一時停止に優先道路、停止線のない合流路など、実際の交差点には教習所で習う以上に複雑な要素がたくさんある。その上に朝の通勤・通学で急いでいるからと、軽い気持ちの信号無視や歩きスマホでが後を絶たないのだからいつ事故が発生してもおかしくない状況に思えた。
横断歩行者等妨害等違反
信号が青になり交差点を左折、横断歩道を横断する歩行者を停車して待っている様子
交差点付近で多い交通違反と言えば、一時停止無視が真っ先に思い浮かぶ。これも確かに多かったのだが、横断歩哨体験時に最も多く目撃した違反が「横断歩行者等妨害等違反」で、違反としての認知度もかなり低いのではないかと思った。
これは道路交通法第38条で定められていて、横断歩道を横断中、または、横断しようとする歩行者や自転車がいる場合には横断歩道の手前で一時停止し、その通行を妨げてはならない、というもの。片側1車線の道路や信号のない横断歩道を直進で横切る場合は明解だが、上の写真のような片側3車線で中央分離帯のある道路を右左折する場合はどうだろうか。実はこの場合でも反対車線側から横断している歩行者がいれば、まだまだ遠くであったとしても車は一時停止をして待たなければならない。実際にこの交差点で検挙されているドライバーが多数いた。
迷ったら止まる
実際に上の画像と同じ交差点で、歩行者と自動車の接触事故が発生してしまった直後の様子
信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面で、9割以上のクルマが一時停止していないことが、JAFが行った全国実態調査でも明らかになっている。迷ったら一時停車する。歩行者や他の交通に最大限優しく振る舞うことで、回避できる事故・違反がほとんどであり、結局は安全運転に直結すると言える。春のシーズンだけでなく年間を通して心がけてほしい。JAFでは、街をゆく全てのクルマが思いやりいっぱいだったら、もっと素敵な交通社会が成り立つはず。そんな想いをみんなで叶える思いやりのプロジェクト「Omoiyalty Drive (思いやりティ ドライブ)」を実施中だ。https://omoiyalty.jp/
2018年3月9日(雨輝・山里 真元)