【2018/1/3/~2/25】 「画は人なり」が信念の画家、 横山大観の生誕150年記念展
2018年は、近代日本画の第一人者、横山大観(よこやま・たいかん)の生誕150年と没後60年にあたる。東京の広尾にある山種美術館では、所蔵の大観作品を一挙に公開する展覧会「[企画展]生誕150年記念 横山大観ー東京画壇の精鋭ー」が、2月25日(日)まで開催されている。
山種美術館の創立者・山﨑種二は横山大観と親しく交流を持っていた。大観の「世の中のためになることをやったらどうか」という言葉が美術館創立の後押しになったという。そういった作家との信頼や関係性がベースとなっている、横山大観と山種美術館のつながりを感じさせる展覧会である。
冒頭の写真:横山大観 《叭呵鳥》 1927(昭和2)年 紙本・彩色 山種美術館
日本画の開拓者として
横山大観(1868-1958)は、常陸国(茨城)水戸藩士の家に生まれた。1889年、東京美術学校に第1期生として入学。校長の岡倉天心のもと、下村観山や菱田春草らと共に、古画や諸派を学びながら、新たな時代に即した日本画の創造を目指す。春草らと輪郭線を用いずに、色彩のぼかしを多用して空気や光を表す斬新な描法を試みるが、当時それは「朦朧体」と揶揄され、厳しい非難のもとにあったという。
しかし、大観は逆境のなかでも、新たな表現に取り組み精力的に制作を続け、東京画壇の中心的な存在となっていく。
展覧会では、第1章として「日本画の開拓者として」と題し、大観の奮闘を、同時代の師や同志たる画家たちの作品とともに紹介。中国・六朝時代の詩人《陶淵明》を描いた屏風や、墨の濃淡の諧調を使い分け光に包まれた竹林の幻想的な光景を描き出した《竹》などの作品は、大観が古典に学び、それを昇華して新たな画題や技法に次々と挑戦した時代の、意欲的な心意気が伝わってくるようだ。
なかでも《作右衛門の家》は、牧草を刈って家路につく農夫の様子を描いた屏風の名品だ。馬小屋の馬が主人の足音を聞きつけ、耳を立てて待つ様子が微笑ましい。木の葉の自在なタッチは南画を思わせ、色鮮やかな緑色にはやまと絵風の華やかさが感じられる。
横山大観 《作右衛門の家》 1916(大正5)年 絹本裏箔・彩色 山種美術館
また、墨の濃淡やぼかしを用いて印象的に描かれた《木兎》や《叭呵鳥》など動物好きだったという大観らしい作品も魅力的だ。
横山大観 《木兎》 1926(大正15)年 絹本・墨画淡彩 山種美術館
第2章の「大観芸術の精華」では、新たな表現に挑戦した明治・大正期を経て、昭和期の大観芸術が到達点を迎えた時期の作品が紹介されている。
象徴的なのは、大観が日本人の精神の表象として繰り返し描いた富士山である。「富士を描くということは、富士にうつる自分の心を描くこと」と大観は語っている。雲海からのぞく富士を中心に据え、山頂の周囲には金泥を刷くことでその神々しさが強調された作品《心神》は、まさに大観の精神性が表れた作品である。
山種美術館創立にあたり、大観が手元で大切にしていたこの《心神》を創立者の山﨑種二に特別に購入を許したという。つまり、山種美術館にとって特別な意味をもつ作品である。
横山大観 《心神》 1952(昭和27)年 絹本・墨画淡彩 山種美術館
大観の創造の世界
大観の作品から伝わる圧倒的な精神性はいったい何なのか、そしてそれがどこから来るのか、作品を前にすると自然と疑問が湧いてくる。それについて大観自身が、『大観画談』の中で述べている。
「(…)先ず人間をつくらなければなりません。歌もわかる、詩もわかる、宗教もわかる、宗教は自分の心の安住の地ですから大事なものですし、哲学も知っていて、そうして茲(ここ)に初めて世界的の人間らしい人間が出来て、今度は世界的の絵が出来るというわけです。」(『大観画談』「創造の世界」より)
人間として完成されることがまず必要であって、その生き方から作品が生まれてくると大観は言う。これは技巧に走りがちな芸術家たちや、言動が一致しない現代社会に生きる我々へのメッセージともなるものではないだろうか。
美しく神秘的で勇壮な富士は、そのような心を持つこと、そのような生活の延長上から生まれ得るのである。
初公開の作品や、38年ぶりの展示となる作品を含め、山種美術館の大観コレクション全41点(資料除く)を一挙に公開するのは、1966年の開館以来初めての機会であり、美術館の展覧会に臨む”思い”が感じられる。
「Cafe 椿」で大観づくしの和スイーツを
美術鑑賞の余韻の中、館内のカフェ「Cafe 椿」では、お茶とスイーツ、軽食を楽しむことができる。
特に和菓子は、青山の老舗菓匠「菊家」に特別にオーダーした美術館のオリジナル。山種美術館開館に際し、大観から特別に購入を許された作品《心神》の雲海に包まれた気高い富士の姿をきんとんで表した「雲の海」など、まるで芸術品のような美しく美味しい和菓子を堪能したい。
写真は、大観が好んで描いた山桜を和菓子で表現した春らしい「花のいろ」。杏を入れた練りきりと、味わい深いこしあんの和菓子と抹茶のセット。
※JAF会員証をお持ちの方には、和菓子またはケーキのお茶セット(1000円)・抹茶セット(1100円) が100 円割引きになります。会計の時に会員証をご提示ください。詳細はこちらを
- [企画展]生誕150年記念 横山大観 ―東京画壇の精鋭―
- 【会期】
- 2018年1月3日(水)~2月25日(日)
- 【開館時間】
- 10:00~17:00(入館は16:30まで)
- 【休館日】
- 月曜日 *但し、2/12(月)は開館、2/13(火)は休館
- 【入館料】
- 一般1,000円 他 ※詳細は美術館HPにてご確認ください
- ☆JAF会員証をお持ちの方は、受付で提示すると100円割引きになります。 詳細はこちらを。
- 【会場】
- 山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
- 【アクセス】
- JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分
- 【美術館HP】
- http://www.yamatane-museum.jp/
「[企画展]生誕150年記念 横山大観 ―東京画壇の精鋭―」招待券プレゼントの応募は終了しました。
賞品は抽選の上、2018年2月5日に郵送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
2018年1月27日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)