華やかな季節にぴったり! 冬のドライブミュージックなら 超おススメ「くるみ割り人形」
(c) JAF Media Works
クリスマスや年末年始になると街に流れ出す音楽がある。
クラシック音楽「くるみ割り人形」は、イルミネーションに彩られた街をドライブする時のBGMとして、凛とした凍てつく冬の空気にマッチした音楽でもあり、絢爛豪華なオーケストラの響きは、華やかさに満ちた年末年始にぴったりのドライブ・ミュージックである。
チャイコフスキーの3大バレエのひとつ
「くるみ割り人形」は、ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキー(1840~93)が創作した3大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」のひとつである。振付家マリウス・プティパと組んで成功を収めた1890年の作品「眠れる森の美女」の次作として、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場から依頼を受け、1892年に初演を果たした。
演目の舞台がクリスマスということもありヨーロッパをはじめ日本でも、クリスマスや大晦日の夜には欠かせない演目となっている。
季節を彩る冬の風物詩
物語は1816年にドイツのE.T.A.ホフマンによって書かれた「くるみ割り人形とねずみの王様」がベースになった、クララという少女を主人公としたファンタジーだ。
クリスマス・イブの夜、ドイツのシュタールバウム家の大広間でパーティが開かれている。クララは人形使いの老人ドレッセルマイヤーからくるみ割り人形をプレゼントされる。このくるみ割り人形(魔法にかけられた王子)とクララが織り成すファンタジーの世界がさまざまな舞台展開とともに進行する。
冒頭のイラストにも描かれた「くるみ割り人形」は、ドイツの伝統的な民芸品でその名のとおりくるみの殻を割るための道具である。さまざまなフィギュアがあるが最も多いのは兵隊の姿をしているもの。人形の口にくるみを挟み後ろのレバーを引くとくるみが割れるという仕組みで、暖炉の脇にくるみのカゴとともに置かれている、そんな冬の風物詩のひとつともいえよう。
チャイコフスキーの感性がフレーズから溢れだす
「くるみ割り人形」はバレエのために書かれた曲なので、情景(シーン)がストレートに思い浮かびやすい。
アラビアの踊り、中国の踊り、ロシアの踊りなどさままざな国の踊りがメロディによって表現された「ディヴェルティスマン」は、各民族の鮮やかな色彩とダンスが想起されるほど情感的であるし、甘美的に美しい旋律の「花のワルツ」はこれを聞いて情景描写しない人がいるのだろうかと思わせるほど旋律の組み方がみごとだ。
リズムの取り方も絶妙で、「行進曲」のようにひとつのフレーズを連結させ、半音階上昇させたり下降させながら発展させていくドラマチックな手法にチャイコフスキーの才能がいかんなく発揮されている。
寒空に響き渡るようなフルートや、アラビアの踊りの地を這うようなクラリネットなど、ソロの楽器の使い方も効果的であるが、コントラバスやチェロなど低音の弦楽器がそれに流麗に絡み、壮大なるクライマックスへと流れていく演奏は、オーケストラならではの醍醐味をたっぷりを味わせてくれる。
チャイコフスキーの感性の世界がキラキラした音の中に溢れ出す叙情的な名作である。
CD版ならこれ!
「くるみ割り人形」はさまざまな録音が発売されているが、日本が誇る指揮者・小澤 征爾がボストン交響楽団を指揮した全曲版は特におススメだ。
速からず遅からずのテンポがまずいい。楽譜のアクセントを効かせたリズミカルな表現で、行進曲も舞曲も小澤征爾らしい端正で丁寧な音づくりがされており、音が耳に優しく響く。
序曲のはじまりと共に物語の世界へと引き込まれ、108分後の終幕があっという間に感じられる、一瞬別世界から戻ってきたかのような感覚をうける好演である。
クラシックに馴染みのない人でも、「序曲」「行進曲」「花のワルツ」など映画やCMなどを通して、誰もが一度は耳にした曲が並んでいて聞きやすい。
印象的なメロディーは、クラシックというよりポップスに近い感覚で、信号待ちで軽快なリズムの「行進曲」が始まると思わずリズムを取ってしまうような、シンプルに音色を楽しめる作品である。
大切な人とのドライブには車中をロマンチックに染めてくれること請け合いだ。華やかな季節の思い出づくりにおススメしたい。
2017年12月24日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)