【動画あり】 羨ましい!U2がU2で、 サプライズライブを披露!
ファンと一緒にベルリンの地下鉄U2(2号線)に乗るU2のボノとジ・エッジ。(c) picture alliance / Anja Caspary/Radioeins/dpa
ロックバンドU2が、U2(独ベルリンの地下鉄2号線)で12月6日、サプライズライブを行い、「U2 in U2」と見出しに書かれるなどベルリンのメディアで話題だ。
U2が地下鉄でアコースティックライブを披露
ベルリンで地下鉄に乗っていると、名もないミュージシャンがギター片手に乗り込んできて乗客の前で歌を1~2曲披露。その後お金を集める、といった光景は日常茶飯事である。しかし、U2が乗り込んできたらどうなるだろう……。
地元ベルリン新聞によると、このイベントはレコード会社ユニバーサル・ミュージックが、ベルリン公共交通機関BVGの協力を得て、ラジオの公募で当選した120人のファン限定で開催したものである。
U2のボノとジ・エッジは、オリンピック競技場のある「オリンピア・シュタジオン」駅からファンと共に地下鉄U2に乗り、込み合う列車の中でファンの車両を回り、握手やハグなどを行った後、オペラ座前の「ドイチェ・オーパー」駅で下車。同駅で2人は15分間にわたりアコースティックでのパフォーマンスを披露した。
駅でのアコースティックライブの様子。(c) picture alliance / Anja Caspary/Radioeins/dpa
ライブは限定公開だったが、演奏の途中で駅に入ってきた車両のドアをボノが開け、まったく知らなかった乗客がビックリするというハプニングも起こった。
壁によって分断されていた西ベルリンは、オルタナティブ文化の聖地として70年代以降、パンクやロッカーたちに愛され、多くの作品のインスピレーション源となってきた。冷戦の最前線(フロント)として社会主義国家に囲まれた緊張感の中、反戦主義者、マイノリティー、アーティストたちがこの街の権力に対抗するアナーキー(無政府的)な姿勢に共鳴して移り住み、活発に活動していたからである。
デビッド・ボウイ、ルー・リード、イギー・ポップなどが実際にベルリンに住み作品を残したが、U2にとってもドイツの首都はゆかりの地である。
1991年発売のU2のアルバム「Achtung Baby アッハトゥング・ベイビー(日本では一般的には「アクトンベイビー」と呼ばれている)」は、ベルリンの壁に近いハンザ・スタジオで録音され、タイトルにはアッハトゥング=「注意」を意味するドイツ語が使われている。アッハトゥングという言葉は、戦時中のラジオ放送などで注意を促すために使われていたため、政治的なニュアンスが含まれているとも解釈される。
ベルリンで生まれた作品たち
ボノは地下鉄で「ベルリンが地下鉄に自分たちと同じ名前をつけてくれて嬉しい」とジョークを飛ばし観衆の笑いを誘った。そして、最後の曲「One」を歌う前に、「この曲はこの街で生まれた。だから、お互いに支えあわなければならない今のような時に、この場所で演奏するのがピッタリなんだ」とコメントを残した。
1902年に最初の路線が開通した由緒正しいベルリンの地下鉄も、映画や音楽のモチーフになったり、さまざまなシーンに登場している。
映画「キャバレー」のシーンから。(c) picture alliance / Keystone
1930年代のナチス台頭前のベルリンが舞台の映画「キャバレー」(1972年上映)では、ライザ・ミネリが地下鉄の前で叫ぶシーンが有名だし、1999年にヒットした映画「ラン・ローラ・ラン」では、赤毛のローラが地下鉄を背景に全力疾走する姿が印象的だった。
ちなみに、どちらの映画でも地下鉄車両は地下ではなく地上を走っている。これは地下鉄が古いため当初のものは高架上に作られたためである。
テクノ音楽にのせてローラがベルリンを疾走する映画のシーン。(c) picture alliance / United Archives
ベルリン公共交通機関BVGは、U2のパフォーマンスをフェースブックを通してライブ中継を行ったが、オリジナルの楽曲を作ってユーモア溢れる自社プロモーションビデオを作ってしまうことでも定評のBVGらしい配慮である(記事はこちら)。
ユニバーサル・ミュージックが公開したユーチューブ動画は、こちらでご覧いただきたい。
U2による地下鉄でのパフォーマンス。出典=YouTube
2017年12月12日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)