21世紀社会の「えっ」! サウジアラビアで 女性の運転が解禁へ
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サウジアラビア国営通信は9月26日、来年6月から女性の自動車運転を許可することを発表した。
同国は世界で唯一、女性の運転が禁じられている国であり、サルマン国王の息子で駐米大使を務めるハレド王子が、26日の記者会見で「これは我が王国にとって歴史的な日だ」と語ったことが米CNNにより伝えられている。
解禁の裏にはムハンマド皇太子の経済改革が
同国ではハレド王子の兄であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(31)が今年6月に副皇太子から皇太子(つまり第1王位継承者)、第1副首相、国防相に昇格して以来、石油に依存しない社会を目指す経済改革「ビジョン2030」を主導してきた。
その中には、女性の就労促進も含まれており、サウジアラビアの女性の運転解禁の決定について、「女性の就業状況を変えるためには、車で通勤できるようにする必要がある」とハレド王子は述べている。
経済改革を進めるムハンマド・ビン・サルマン皇太子。© picture alliance / Rainer Jensen/dpa
サウジアラビアには公共交通機関がほとんど存在せず、女性が移動する場合には運転手を利用する。女性の運転の合法化によって、女性労働者の増加やクルマの購買など経済効果を狙うとともに、欧米から非難されている女性差別社会からの変化を国内外に印象づけたい狙いがあると見られる。
女性の運転の権利は、女性の権利活動家らがインターネットに女性が運転している動画を公開するなど長年にわたり反対運動を続けてきており、中には違反を理由に収監された人もいる。
女性権利活動家は、ツィッター上の「#Women2Drive」などでプロテスト運動を展開してきた。写真は免許解禁を喜ぶ女性。
サウジアラビアにとって確かに歴史的な一歩ではあるが、同国は依然としてイスラム教の厳しい戒律が支配している国であり、女性の権利や行動の自由は制限されている。例えば、就労、結婚、旅行などには父親、夫、兄弟など「男性の保護者」の同意を得る必要があり、女性の免許の取得にも同様に許可が必要になることが予想される。
独シュテルン誌は、今回の運転解禁には厳しい条件が課されていることを指摘している。
それによると、免許取得資格者は30歳以上でなければならず、20時以降の公道での運転の禁止、運転時の化粧の禁止や「ビジャーブ」という体を覆う黒い衣服の着用も義務づけられている。
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また、サウジアラビアでは女性の異性交遊も制限されているため、例えば交通違反をした女性ドライバーに男性の警察官が話しかけたり、車の故障時に男性のロードサービス員が女性に接してはいけないなどの問題もある。それに対してサウジアラビア政府はどう対応するのか。「女性が運転できる」ということは免許の交付だけで解決する問題ではなく、「女性が運転できる社会」への変革と結びついている。
2017年10月7日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)