レシピ10:「このまま胃袋へ直行」の作り方
MINIATUREの世界でもJAFは安全最優先!
「JAF Mate」本誌でも書いたのですが、めでたいことがあったらお寿司を食べるのが、日本人のお約束。サンドイッチを山脈に見立てた「この辺りで、お昼ご飯♥」から始めて、今回でちょうど10回! というわけで、回転ずしを車に見立てた作品を作ろうと思い立ちました。
それに記念すべき回には、JAFロードサービスのミニカーを登場させようとも思っていました。
湯のみと積み上げられたお皿のビルが立つ街の中。 大トロ、マグロ、ネギトロ、アナゴ、ウニ……といった、食品サンプルのお寿司が回りながら渋滞中。
ん? 大トロが車列から離れた。故障か?
すぐにJAFロードサービスがやってきた。
反射ベストとヘルメットを着用した隊員のユニフォーム、降車した運転手の立ち位置は車両左側、パイロンと三角停止板による安全対策などなど、MINIATUREの世界でも、JAFロードサービスは安全最優先!
いつもはイメージを膨らませて、自由気ままに作っているのですが、今回は勝手が違う。JAFさんの細かい指摘を受けながら〝安全最優先〟で、MINIATURE CAR LIFEの世界を作りました。果たしてそれはどんなものだったかは、3ページで紹介しましょう。
「このまま胃袋へ直行」を表現した材料
トミカ「三菱ふそうキャンターレッカー車+三菱トライトンセット」1900円
黄青と白のJAFカラーに塗装されたJAFオリジナルのミニカー。2台セットで販売されていますが、今回は「三菱ふそうキャンターレッカー車」のみを使用。実際の車両同様、レッカーブームやアンダーリフトも可動するので、他のトミカをレッカー移動させられます。今回、移動させたのは大トロですが(笑)
JAFロードサービスの隊員に塗装した人形など
もともとは工事現場で働く人を表現したプライザーの人形。はじめからヘルメットをかぶっているので、塗装するだけでJAFロードサービスの隊員になるのです。とは言っても、「なんとなくそれっぽい」ではリアリティに欠けるので、JAF Mate編集部に正式な制服の色や柄、装備品を確認しました。
お寿司の食品サンプル
本物のように見えますが食品サンプルです。撮影にはライトなどを使うし、構図が決まるまで何度も触ることになるので、ナマモノはあまり適していません。食べ物を無駄にするわけにはいかないのですからね。その点、最近の食品サンプルはよくできているので実に便利なのです。
ビルに見立てたお皿と食品サンプルの湯のみ
情景模型の樹木
回転ずしといえば、積み上げられたお皿が風物詩。その高さを変えてビルに見立て、幹線道路に林立するビルに見立てました。湯のみも同様なのですが、実はこれも食品サンプルなのです。写真を拡大して見てください。真ん中に茶柱が立っているんですよ。これに情景模型の樹木を組み合わせて、道路の風景を表現しました。
いよいよ制作!
(1)JAFロードサービスの正しい服装を調べる
今回、正しい服装や装備を確認したところ、編集部より「ロードサービスについては現場での服装や救援中の安全確保等について規定があるため、あらかじめ留意点を確認します」と返事がありました。
すると送られてきたのが、2018年2・3月号の『JAF Mate』14ページに掲載されていた特集。
これに加え、反射ベスト(蛍光ベスト)はジャンパーを着ていても着用、ヘルメットは必須で接客中は手袋を外す、など写真の資料とともに細かい指摘が。
JAFロードサービスの隊員にする前の人形。
↓
「JAFのミニカーを扱うと、こういうことになるのか、そりゃそうですよね」と、本腰を入れて工事現場の人を再現した人形の服装をオレンジ色に塗り替え、反射ベストは黒いフチまでしっかり塗り分けてみました。もちろん接客中の隊員は手袋外しましたよ。
(2)正しい安全対策を知る
今回に限らないのですが、毎回、絵コンテを編集部に提出し、OKが出てから撮影に臨んでいます。いつもは比較的すんなりOKが出るのですが、今回は違いました。まずは僕が最初に提出した絵コンテを見てください。
外国のように右車線にしてしまったのは、僕の凡ミスなのですが、編集部より
- お客様の立ち位置は車両左側です。現場到着後すぐに。歩道があればそちらに誘導します。もし、レッカー車や故障車の左側に壁がある場合、後方から追突されると挟まれる危険性があるので、レッカー車や故障車と離れた前方か後方などに誘導します。
- パイロンと三角停止板による安全対策が必要です。
- JAF隊員が2名で問題ありません。JAFは1車に1名が基本ですが、新人に限らず全隊員が半期に一度、教育担当者による同乗OJTを受けますので、実際に2名乗務もあるからです。
- 路上での作業であれば安全のために後方の確認が重要です。接客時もレッカー車から荷物を取る時も後方確認を容易にできるよう、後方に対し半身で立ちチラチラと後方を見ておく必要があります。
と、細かい指摘。
“MINIATURE CAR LIFE” これはファンタジーですが、JAFロードサービスを作品に盛り込んだのなら「リアルを求められる」ことを実感。JAFさんの真摯な姿勢を資料を通じて「安全優先とはこういう事か……」と学びつつ、作品にパイロンと三角停止板を加えました。
ちなみに、編集部との一連のやりとりで、ワサビをパイロンに見立てる案もありました。今回は樹木の情景模型と色がかぶるので模型のパイロンを使用。別の機会で採用したいと思います。
(3)大トロをレッカー移動させる
ミニカーの荷台部分にあるレッカーブームとアンダーリフトは可動式。そこに食品サンプルの大トロを載せるとシュールな見た目に。そして同時に、寿司のサンプルとミニカーって、ほぼ同じサイズなことを発見(笑)
(4)樹木は横にしちゃってもOK(笑)
デジカメのライブビュー機能で構造を確認しながら、寿司のサンプルやミニカー、人形の配置を決め込みます。並木を表現した樹木は、手前に見えているものに関しては、別に本物のようにまっすぐ立っている必要はありません。なので、撮影台からはみ出て、しかも横になった状態でシャッターを切りました。
この部分を確認してください。
まさか横になっているとは思いませんよね(笑)
ミニチュア写真家:田中達也(たなか たつや)
1981年、熊本県生まれ。広告関連のアートディレクションに携わりながらInstagramにアップしていたミニチュア作品が大人気に! 「ミニチュア写真家」へと転身する。2017年に話題を呼んだNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックのミニチュアも手がけた。2018年「MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界」が国内外各地で開催予定。
写真集『MINIATURE LIFE』『MINIATURE LIFE2』(水曜社)を上梓。
彼の作品は、http://miniature-calendar.comをチェック!
企画構成・文/寺田剛治