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公開日:2026.02.21

なぜ大好きな“シフトレバー”は、こんなに減ってしまったのか? 楽しかったクルマの機能を振り返る

あなたはどのタイプのシフト操作が好きですか? 近年、シフトレバーは取り付け位置や形状、操作方法も多様化し、ひと昔前とはずいぶん様変わりしています。今回は、モータージャーナリストの原アキラがその変遷を振り返ります。

文と写真=原アキラ

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シフトレバーの進化を振り返る

自動車ファンの皆さんは、シフトレバーがお好きでしょうか?

手にぴたりとハマるレバーの先端のグリップ部を握り、1速、2速、3速へとシフトアップしていく時の高揚感や、シフトダウン時に感じる減速ショックやエンジンとエキゾーストから発するブリッピング音を感じることは、クルマを操る楽しみの一つでしょう。

ただ、最近ではAT化や電動化によって、それを取り付ける位置や形状、操作方法に様々なバリエーションが出てきています。その辺りをちょっと振り返ってみましょう。

シフトレバー配置が車外から車内のフロアとコラムに

1900年〜1920年代の自動車黎明期ではマニュアルトランスミッションが主流で、当時のシフトレバーは車外にニョッキリと突き出したサイドレバー方式が当たり前でした。

写真は当時のグランプリモデルであるブガッティの「タイプ35」で、シフトレバーは2座のシート右側にある革製のスロットを突き抜ける形で外に飛び出しています。ドライバーは車体の縁に沿って取り付けられた革の肘当てに腕を乗せる形でシフトを行なっていたといい、ゲートの狭さと重さに注意しながら操ることが必要とされたといいます。

ブガッティ タイプ35のシフトレバー

ブガッティ タイプ35のシフトレバー

1920年代以降はクローズドボディのクルマが増えたため、シフトレバーは車内の床(フロア)に配置されるようになりました。

1950年代に登場したメルセデス・ベンツの「300SL」はそのガルウイングのドアで有名で、筆者も英国にあるメルセデス・ベンツミュージアムで乗ったことがあるのですが、シフトレバーはまさに床から伸びたフロアシフトで、その長さが印象に残っています。

またSL300はオープンボディのものもありますが、当然ながらガルウイング同様の長いフロアシフトレバーを採用しています。

メルセデス・ベンツ 300SLのシフトレバー

メルセデス・ベンツ 300SLのシフトレバー

1970年代になるとハイスピードを求めたスーパーカーなるものが登場し、そのシフトは速さと正確さが必要となるため、ゲートを切った短いシフトレバーを採用することになります。ランボルギーニの「ミウラ」や「カウンタック」がその代表例でしょう。

ランボルギーニ ミウラのシフトレバー

ランボルギーニ ミウラのシフトレバー

日本車でも、1958年に登場した国民車の「スバル360」は長い3速フロアシフトレバーが伸びていて、一方では1967年に登場した国産初のスーパーカー「トヨタ2000GT」は美しいウッドのコンソールに配置した短いフロアシフトを採用し、グリップ頭部には5速のシフトパターンが描かれています。

MTのフロアシフトはギアの段数を増やしつつそれからも長く採用され続けていて、現代の「ポルシェ911」や、マツダ「ロードスター」、トヨタ「GRヤリス」でも基本的に変わっていません。

スバル360のシフトレバー

スバル360のシフトレバー

ユニークなのは1971年のシトロエンSMの5速フロアシフトで、ゲートは横方向のみにあり、縦方向はゲートを刻んだプレートがスライドする変則的なものでした。

また1960年〜1980年代の葉巻型レーシングカー(1969年のロータス59)も当然ながらシフトレバーは車内に配置されていて、当時のF1ドライバーは狭いコックピット内で神技のようなシフトチェンジを見せてくれたものです。

シトロエンSMのシフトレバー

シトロエンSMのシフトレバー

ロータス59のシフトレバー

ロータス59のシフトレバー

1960年代になると、広い室内空間を得ることを目的としたFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車が登場し始めました。

FRのような太いセンタートンネルをなくした代わりにシフトレバーをステアリングコラムに取り付けた「スバル1000」は、その広さと走行性能(等速ジョイントと水平対向エンジンも寄与)が話題となり、その後のFFコンパクトモデルに大きな影響を与えました。

スバル1000のシフトレバー

スバル1000のシフトレバー

ATの普及でシフトが多様化、白眉はメルセデスのゲート式

1960年代からはトルクコンバーター式のATが普及し始め、その便利さから一気に主流となりました。初期のものはP-R-N-Dのストレート式フロアATが多く、筆者が乗る「ゴルフII」の3速ATもそのスタイルです。

一方、メルセデス・ベンツはギザギザの溝を切った「スタッガードゲート式」のATを開発し、特許をとっています。これはロックボタンなしで確実なシフトポジションが選べるまことに使いやすいATシフトで、筆者が所有する1993年式のW124型「280E」も搭載しています。

その特許が切れたことで、例えばトヨタでは高級セダンのクラウンから大衆車のカローラ、高級ミニバンのアルファードまで多くのモデルが採用していました。

メルセデス・ベンツ W124のスタッガードゲート式シフトレバー

メルセデス・ベンツ W124のスタッガードゲート式シフトレバー

そのメルセデス・ベンツも近年のモデルではコラム式ATレバーをEクラスなど多くのモデルで採用しており、超高級車のロールス・ロイスも然りです。

この分野で面白いのはまたしてもシトロエンで、1972年の「DS」のセミATシフトレバーはステアリングとメーターの間から右斜め上に向かって伸びています。キーを捻って1速と2速の間のニュートラルでレバーを左に倒せばセルが回ってエンジンが始動し、あとは数字に沿ってシフトアップしていく、という独特なものでした。

シトロエンDSのシフトレバー

シトロエンDSのシフトレバー

ついにシフトレバーが消えた!?

フロアやコラムから伸びたシフトレバーは、ドライバーにさまざまなドライブ体験をもたらしてくれましたが、近年の新型モデルではその姿が見られなくなってきました。機械的にリンクしていない電子制御のシフトバイワイヤ方式が開発されたので、小型化やデザインの自由度が増えたからです。

小型のスティック型としてはVW「ゴルフ」、ダイヤル式ではジャガー「Fペイス」やランドローバー「ディスカバリー」、ボタン式ではアルファロメオ「4C」やアルピーヌ「A110」、日産「セレナ」、メルセデス・ベンツの連結バス「シターロ」、ジョイスティック式ではBMWの34シリーズ・4シリーズやブガッティ「シロン」がそれらの代表例です。

フォルクスワーゲン ゴルフ(2021)の小型シフトレバー

フォルクスワーゲン ゴルフ(2021)の小型シフトレバー

ジャガー Fペイスのダイヤル式シフト

ジャガー Fペイスのダイヤル式シフト

日産 セレナ(2022)のボタン式シフト

日産 セレナ(2022)のボタン式シフト

またスーパーカーの世界では、ATでも手動で変速できる大型のパドルシフトを使うのが一般的で、フェラーリ「アマルフィ」やランボルギーニ「ウラカン」が挙げられます。

ランボルギーニ ウラカン(2019)のパドルシフト

ランボルギーニ ウラカン(2019)のパドルシフト

BEVではそれがさらに顕著で、基本的に「D」(ドライブ)と「R」(リバース)さえあればいいのは1947年の「たま電気自動車」(後のプリンス自動車工業、現在の日産自動車が開発した日本初の量産型電気自動車)から変わっておらず、高性能なポルシェの「タイカン」やアウディ「e-tron GT」でも同じです。

また自動運転を見据えたものではシフトは搭載するモニター内に格納される形で姿を消していて、2015年のメルセデス・ベンツ「F-015」や最新のテスラ「モデルY」がその例といえます。

さて、皆さんが今乗られているのはどのタイプで、使い心地はいかがでしょうか。

テスラ モデルY(2025)ではシフトチェンジはモニターで操作します

テスラ モデルY(2025)ではシフトチェンジはモニターで操作します

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