レシピ08:「今夜はトンカツだ!」の作り方
雪国の夕食をファンタジックに演出してみました。
寒くなってきました。僕の住む鹿児島でも肌寒く感じるようになり、上着が欠かせなくなりましたが、雪が降るなんてことは滅多になく、ちょっと憧れています。だから、雪と言うと幻想的なもの……というイメージが強い。そこで今回は、雪と大好きな食べ物を組み合わせ、ファンタジーな作品を作りました。
そこは雪国。
朝から降り続けた雪で街は一面の銀世界。
高く積もった雪は、6枚切りの食パン。
家路に急ぐクルマを導くため、
食パンをかき分けるように走るのは除雪車のミニカー。
除雪したパン粉は、住宅に見立てた牛乳パックや爪楊枝の横にある、
バットの銀世界へと降り注ぐ。
そこではしゃぐ2人の子供の横には、
夕食のおかずとなるトンカツが2枚。
あとは揚げるだけ!
除雪車が食パンの中を突き進むとか、パン粉を除雪するとか、巨大なトンカツとか、現実ではありえないことですが、『MINIATURE “CAR” LIFE』は、基本的にファンタジーの世界。見るだけで、楽しい気持ちになりませんか?
「今夜はトンカツだ!」を表現した材料
左:トミカ「No.47 日本除雪機製作所 ロータリー除雪車 HTR265」
右:トミカ「No.21 日産エクストレイル」。ともに486円
黄色のはたらくクルマは、フロント部にロータリー装置がついた除雪車で、高速道路や多雪地帯の主要道路で使用されるもの。後ろの赤いミニカーは、スキー場でよく見かけそうなクルマと思い選びました。寂しげな情景になりがちな雪景色の中で目立つよう、この黄色と赤など暖色系のミニカーの色を基軸にして、他のミニチュアの色も決めました。
子供2人と作業員の人形
3体とも、おなじみのプライザーのフィギュアです。子供2人は、冬の服装をしているだけじゃなく、楽しそうに両腕を上げているものをセレクト。作業員も子供たちに手を振っているようなポーズを選びました。ミニカーの色に合わせるため、子供の服装は再塗装しています。作品を見ると統一感があるでしょ!?
食パンとパン粉、そしてトンカツ
情景のメインとなるものは、近所のスーパーマーケットで調達。食パンは、ミニカーの車体半分ほどが隠れるサイズの6枚切りを選びました。同様にパン粉も市販のもの。トンカツは、惣菜コーナーで、衣をつけて売っているものにしました。この写真だけ見ると、料理のレシピブログみたいですね(笑)。
バットと牛乳パック、爪楊枝入れ、塩入れ
子供のフィギュアが遊んでいる場所は、調理する際に使うバット。あえて、アルミ製バットを選んだのは、金属の冷たい感じが、雪国と情景にマッチするから。牛乳パックは、上部を赤く塗って屋根に、さらにストローを挿して煙突に見立てました。爪楊枝入れ、塩入れも並べると建物のように見えるでしょ?
いよいよ制作!
(01)
食パンをミニカーの幅に合わせてカット!
まずミニカーをパンの耳の横に置いて、車幅を確認。使用する6枚切りの食パン3枚のうち2枚は、写真のように車幅に合わせて、完全にカットします。
残り1枚は、ミニカーがあたかも除雪しているように見せるため、途中までカット。そして、写真のように3枚を並べれば、雪で覆われた道路を除雪している情景の出来上がり! 食パンを本当の雪と考えると1m以上降り積もった感じですね。かなりの大雪です(笑)。
(02)
パン粉を子供のフィギュアに振りかける。
バットに子供のフィギュアを固定してから、雪に見立てたパン粉を振りかけます。というのは、先にパン粉をバットに散らすと、フィギュアを固定しづらくなるから。また、後からパン粉を振りかけた方が、本当に雪が降ったように、足元が隠れるから。黒澤明監督じゃないですけど、リアリティを追求しました。
(03)
スマホのライトを照明代わりに!
いつもはプロ向けの照明を使っていますが、今回は読者の皆さんも使えるライティングをご提案! 今回は雪国の情景ということもあり、全体に光を回さない方が、それっぽいと判断。そこで、スマホのライトをスポットライト的に使って、ミニチュアを照らしました。周囲は暗く沈んだ雰囲気なのに、メインとなる部分だけが浮かびあがって見えるのです。ぜひ、試してください!
ミニチュア写真家:田中達也(たなか たつや)
1981年、熊本県生まれ。広告関連のアートディレクションに携わりながらInstagramにアップしていたミニチュア作品が大人気に! 「ミニチュア写真家」へと転身する。ハリウッド映画『アントマン』に作品を提供するなど、世界的にも活躍。今年話題を呼んだNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックのミニチュアも手がけた。
写真集『MINIATURE LIFE』『MINIATURE LIFE2』(水曜社)を上梓。
彼の作品は、http://miniature-calendar.comをチェック!
企画構成・文/寺田剛治