レシピ07:「史上最速のレコード」の作り方
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たまには男の勝負の世界! 名付けて 「JAF-1 グランプリ」
今回で7回目となる本連載。担当編集者には「ミニカーを使ったドライブネタを基本で……」と強く言われているのですが、「たまには、違うのもいいんじゃないですか?」と提案したのが「F1」の世界。のどかな情景も好きなのですが、たまには男っぽいのが作りたかった(笑)。
今回はF1ならぬ、JAF-1グランプリと称して、ゴール目前に勝負をかける2人のレーサーの鬼気迫る姿を表現! 勝負の中で、ライバルたちがぶつかり合い、そして友情が芽生える……そんな少年漫画的な思いを込めて作りました。
曲がりくねったサーキットを表現したのは2種類のレコード盤。
手前の最終コーナーはLP盤。
その奥に小さく見えるのはEP盤。
インから抜いて勝負をかけたのは1/43のミニカー。
一瞬の隙をつかれた1/64のミニカーは、
スケールの差そのままにどんどん小さくなっていく……。
このまま勝負はついてしまうのか?
果たして、勝利の曲を聴くのは誰なのか!
うーん、男の世界! 勝手にライバル関係にあるレーサーの間にある因縁とかを妄想して、作りながら熱くなってしまいました。
「史上最速のレコード」を表現した材料
左:ミニチャンプス「1/43 パナソニック トヨタ TF109 ブラジル 2009#10」(8100円)。
右:ビーズコレクション「1/64 スーパーアグリF1 No.41」(1944円)。ともに京商製
遠近法の効果をねらって、スケールが異なる2種のミニカーをセレクト。左のモデルは、2009年ブラジルGPで小林可夢偉が、右は2006年イギリスGPで山本左近が搭乗した車両を再現。普通のミニカーと違って、レーサーの頭部があらかじめ付いているのも選んだ理由のひとつ。レーサーのフィギュアは探すのが大変ですからね(笑)。
EPとLP、2種のレコード盤
サーキットの表現に使ったのはレコード盤。溝部分が、漫画などでスピードの表現に使う「効果線」のようで、あたかも高速で走っているように見えるのです。なお、レコードはT SQUAREの『TRUTH』ではありません(笑)。
サーキットの縁石と青空
コーナーにある赤白の縁石(カーブス)は、LP、EP各レコード盤のサイズに合うようにデザイン。LP用、EP用を別々に印刷しないで済むよう、A3用紙1枚に収まるように配置しました。青空もフリー素材を使ってプリント。
芝生マットの緑色の画用紙
サーキットの周囲に広がる芝生と植栽の表現に使用。芝生マットは鉄道模型用として2000円くらいで購入可能。画用紙は、言わずもがなで文房具店で買えます。この画用紙の使い道は、次ページをお楽しみに。
いよいよ制作!
(01)
赤白の縁石部分をハサミでカット!
サーキットのコーナー部分にある縁石などをプリントした用紙をカット。我が家はA3まで印刷できるプリンターなので問題ありませんが、一般的なプリンターはA4までがほとんど。コンビニで拡大コピーするのがオススメ。
(02)
遠近法の効果を狙い、奥にEP盤、手前にLP盤を配置
レコード盤の縁に赤白の縁石、中央の曲名が記される部分に芝生柄のプリントを貼り付けます。その作業が終わったら、レンズの手前にLP盤、奥にEP盤を配置。手前を大きくすることで遠近法の効果が得られます。
写真の手前で私が丸めているのは、前ページで紹介した緑色の画用紙。「どうせ写真にしたらボケる」という発想から、模型の樹木は使いませんでした。ちなみにミニカーも、遠近法の効果を考え、手前に大振りの1/43、奥に1/64のモデルを配置しています。
撮影時に注意したのは、黒光りするレコード盤のハイライト! ミニカーの手前にくるように照明を配置したのですが、溝が浮き上がるので「効果線」のように見えるのです。実際には静止しているミニカーが猛烈なスピードを出しているように見えますよ。
ミニチュア写真家:田中達也(たなか たつや)
1981年、熊本県生まれ。広告関連のアートディレクションに携わりながらInstagramにアップしていたミニチュア作品が大人気に! 「ミニチュア写真家」へと転身する。ハリウッド映画『アントマン』に作品を提供するなど、世界的にも活躍。今年話題を呼んだNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックのミニチュアも手がけた。
写真集『MINIATURE LIFE』『MINIATURE LIFE2』(水曜社)を上梓。
彼の作品は、http://miniature-calendar.comをチェック!
企画構成・文/寺田剛治