2023年04月23日 18:00 掲載

交通安全・防災 青信号に従っていても起きる交差点事故|長山先生の「危険予知」よもやま話 第17回


話・長山泰久(大阪大学名誉教授)

免許を持たない歩行者ほど事故に遭いやすい。

長山先生:そのとおりです。ドライバーとして運転している人は、自分の経験からどんな状況でどんな行動を取ると危険であるかよく知っているので、歩行者として事故に遭う確率は低いのですが、免許を持っていない歩行者は事故に遭う危険性が非常に高いことが明らかになっています。下のグラフが以前調べた結果で、年齢・性別にかかわらず、免許の有無で事故の起こりやすさには明確な差があります。免許を持っていない人は持っている人に比べて、「徒歩」では3.5~8倍、「自転車」では4.4~7.9倍も危険性が高くなっています。

【グラフ:免許有無別にみた10万時間移動当たり死傷者数】

長山先生の「危険予知」よもやま話 第17回|グラフ01|くるくら

長山先生の「危険予知」よもやま話 第17回|グラフ02|くるくら

※グラフは大阪府下交通事故データと1990年第3次京阪神エリア・パーソントリップデータ(調査対象者の1日の移動手段別時間データ)から徒歩時間・自転車時間、年齢、免許有無、死傷者数を合体して分析。免許有無別、性別、徒歩・自転車別に10万時間移動した場合に起こり得る死傷者数を算出し、図表化した。

編集部:移動手段別の時間データというものがあるのですね。

長山先生:そうです。人によって歩行時間や自転車に乗る時間はまったく違うので、単純に免許の有無別だけで事故に遭いやすいかどうかの比較はできませんが、このデータがあれば、条件を同じにして正確な比較ができます。移動時間をベースにして交通事故の露出度を明らかにした分析は初めてのものでした。

編集部:私も免許を取ってからは急な飛び出しなど、危険な行動が減りましたが、やはり免許の有無は大きいのですね?

長山先生:そうですね。ドライバーは運転をする時には「安全―危険」を意識し、また「危険予知・予測」を学習していますが、免許を持っていない人は、歩いたり、自転車に乗る場合に「安全―危険」についてあまり意識していないのではないでしょうか? その意味で免許を持たない歩行者や自転車運転者に対しても、「安全―危険」の意識を持たせるために積極的に「危険予知訓練」を行い、具体的にどのような場面・事態が危険であるかの認識を高める必要がありますね。

編集部:「危険予知・予測の学習」で"防衛歩行"が身に付くのですね。ちなみに、歩行者として交差点を渡る場合、事故を避ける具体的な防衛歩行のテクニックはありますか?

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