2022年10月30日 18:20 掲載

交通安全・防災 渋滞情報がドライバーの注意を奪う|長山先生の「危険予知」よもやま話 第12回


話・長山泰久(大阪大学名誉教授)

友達の水死で規則を守ることの大切さを知る

長山先生:小学5年生の頃、今でいう塾のようなところに通っていました。遊ぶのが好きな私にとって塾に通うことは嫌で嫌でしょうがなかったのですが、母親の厳しい言いつけで週に2回ばかりは辛抱しなければいけませんでした。寺子屋風の長机に向かい合って学ぶのですが、向かいに座っていた6年生のT君の姿が現れなくなりました。

編集部:病気か事故でもあったのですか?

長山先生:そうです。淀川の澱み(よどみ)である鍵屋浦で泳いでいて溺れたという話でしたが、遺体がいつまでも上がらず、毎日そのことが話題になっていたところ、1週間ほど経った頃、大阪の毛馬(けま)の閘門(こうもん)に「どざえもん(水死体)」として引っかかり発見されたのでした。学校では危ないから淀川で泳いではならないと厳しく言われていましたが、鍵屋浦の澱みはその付近の子供達の絶好の遊び場となっていたのです。

編集部:澱みでも溺れてしまう危険性は十分あるのですね。でも、1週間も発見されなかったとは...。

長山先生:T君がどのように溺れたのかは分かりませんが、澱みから本流に出るとかなり流れが速く、それが原因のひとつでしょう。いまひとつは鍵屋浦には船底が平たくなった土砂運搬船がよく係留されていて、子供達はその下を反対側まで潜って泳ぎ着くのを自慢にしたり、あるときには強要されたりする「いじめ」的なことが行われていたようです。いずれにしても、毎日のようにT君がまだ見つからないことが学校で話題になり、子供の心には強く影響を及ぼしたものでした。それと同時に、学校の掟を守らないことが如何に危なくて、好ましくないことかを目の前に座っていた上級生のT君の思い出が学ばせてくれたものでした。

編集部:そういう経験が長山先生の危険感受性を高め、危険を避ける慎重な性格の形成につながったのですね。

『JAFMate』誌 2015年11月号掲載の「危険予知」を元にした
「よもやま話」です


【長山泰久(大阪大学名誉教授)】
1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。1991年4月から2022年7月まで、『JAF Mate』誌およびJAFメイトオンラインの危険予知コーナーの監修を務める。2022年8月逝去(享年90歳)。

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