2022年10月30日 18:20 掲載

交通安全・防災 渋滞情報がドライバーの注意を奪う|長山先生の「危険予知」よもやま話 第12回


話・長山泰久(大阪大学名誉教授)

事前のルート確認が、都市高速では特に重要

長山先生:それには出発前に目的地までの経路を設計しておくことが必要です。

編集部:経路とはルートのことですか?

長山先生:そうです。出発前に目的地までのルートを調べ、どこを通って行くのか調べておくことが大切です。特に都市高速は路線が複雑で分岐点も多いので、あらかじめどこの分岐点で方向を変えていくのか頭の中で計画を立てておかないと、今回のように分岐点の手前で迷って無理な進路変更をしてしまいます。

編集部:でも、カーナビが普及している今の時代、地図でルートを調べておくより、カーナビ任せでもいいような気がしますけど。

長山先生:もちろん、カーナビゲーション・システムがあれば、分岐点での左右の指示に加えて、複数車線ある場合、どの車線をあらかじめ走っていればいいかまで指示してくれるので、自分でルートや分岐点を調べる必要はないでしょう。要は、地図でもカーナビでも、どちらにしても「直前に進路変更すればいい」という安易な気持ちでなく、予め準備をしておくという心構えが運転には必須で、それをしていれば分岐点での事故はかなり防げるのです。

編集部:地図でルートを調べたり、ナビで目的地を設定するなど、事前の準備もしないで都市高速に乗るのは自殺行為ですね。

長山先生:そうですね。私も以前、大阪から車で茨城県にある安全運転中央研修所に行く際、都心を抜けるのに首都高をしばしば利用しましたが、どの分岐点で分流するかには困難を感じたものです。

編集部:大阪の茨木ではなく、茨城県まで自走していたのですか!? それはたいへんですね。

長山先生:運転は好きだったので長距離を運転することに抵抗はなかったのですが、東名高速から首都高を経由して常磐道に入るときのルート選びには難儀しました。当時はナビがなかったので、助手席に人を乗せて地図を見ながら指示してもらわないと、とても無理でしたね。

編集部:じゃ、ナビ役の人がいないと、車での茨城行きはあり得なかったのですね。

長山先生:そのとおりです。そもそも東名高速や名神高速ならジャンクションなどで行き先が分かれる際、左側から分かれていきますが、首都高などの都市高速では、必ずしも左でなく、右であることも多いので、どの車線を走ったらいいのか、とても迷います。分岐点同士が接近していることも多いので、スムーズに進路変更して目的地に行くのは、かなりハードルが高くなりますね。

編集部:こればかりは道に慣れるしかないですね。道に慣れさえすれば、事故は起こさなくなりますね?

長山先生:そう思いがちですが、道に慣れていても事故を起こしてしまうことがあります。2つのパターンを紹介しましょう。

カナダの教授と話が盛り上がり、分岐点を通過!

長山先生:ひとつは「急に思いついて目的地を変える場合」です。「そうだ、先に○○に行ってみよう」などと行き先を変更するような場合に、急な進路変更をすることがあります。ナビで目的地を設定していても、途中で行き先を変更すると指示に反してこのような行動をとることになってしまいます。急に思いついての行動変更には危険がついてくることを考えに入れておく必要があります。

編集部:たしかに、急に思いつくといつもはしている安全確認なども忘れて、すぐ行動に移してしまいそうですね。

長山先生:もうひとつは「会話に夢中になり、分岐点に気づくのが遅れる場合」です。実はこれに関して苦い思い出があります。大阪から金沢に高速道路で向かっていたとき、名神高速から北陸道に入る米原ジャンクションの存在にまったく気づかず、そのまま直進してしまうという過ちを犯したことがあります。

編集部:分岐点を忘れるくらい夢中になった会話の相手は、誰だったのですか?

長山先生:カナダの大学教授です。英語で共同研究の話をしながら運転していたので、よけい意識が会話に集中してしまったようです。

編集部:長山先生の英語の実力は存じ上げませんが、日本語で他愛もない会話をするのと英語で難しい研究の話をするのでは、脳の使われ方が相当違い、かなり会話にエネルギーが注がれそうですね。ところで、分岐点を通り過ぎてしまい、どうされたのですか?

長山先生:その際は次の関ヶ原インターチェンジまで行って引き返しただけだったので、時間をロスするだけで済みました。もし、分岐点の直前で気づいていたら、追越車線から無理な進路変更をする可能性もありますが、話し相手が同じ交通安全問題を扱う心理学者だったので、さすがにそんな運転はしなかったでしょうね。

編集部:そうですね。最近では高速道路の出口を通り過ぎてしまったため、本線でUターンして逆走する事例などが問題になっています。長山先生がそのようなことはするはずないですが、でも、前にお聞きしたように長山先生は子供の頃から慎重な性格だったようなので、その点も事故防止に影響したのではないでしょうか?

長山先生:それはたしかにありますね。小学校5年生の頃に経験したことも、私の慎重な性格を形成した要因になった気がしています。

もっと【長山先生の「危険予知」よもやま話】を読む