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ライフスタイル最終更新日:2018.02.18 公開日:2018.02.18

【2018/2/8~5/20】 夢想世界の住人ルドンが誘う 花の世界!「ルドン展」

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 ルドンの描いた花や植物に焦点をあてた前例のない企画展「ルドンー秘密の花園」が、5月20日まで三菱一号館美術館にて開催されている。

冒頭の写真:[ドムシー男爵の城館の食堂壁画15枚のうち]《花とナナカマドの実》1900-1901年 木炭、油彩、デトランプ/カンヴァス オルセー美術館蔵 Photo©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

暗やみと自然が友達だった少年時代

 オディロン・ルドン(1840~1916)は、幻想的な内面世界に目を向けた特異な画業で知られている。
 仏ボルドーの裕福な家庭に生まれたが、病弱だったため11歳になるまで、郊外のぶどう園を管理していた親戚の老人に育てられる。ぶどう園と点在する沼と林の他は何もないさびしい田舎は、彼の感性と想像力を豊かに培った。

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ルドンが幼少時代を過ごした大切なふるさとを描いた作品◆《ペイルルバードのポプラ》制作年不詳 油彩/厚紙(板に貼付)岐阜県美術館蔵

「子供のとき、私はくらがりが好きでした。厚いカーテンのしたや、家の暗い片すみや、いろいろな遊びをする部屋などに身を潜ませると、不思議なよろこびを味わったことを覚えています。そして外に出、野原へ行くと、空が私に対してなんという幻惑的な力をふるったことでしょう!」(ルドン著『私自身に』から)

 空想癖のある少年は、青年になると独学の植物学者アルマン・クラヴォーの影響で、ヒンズー文学、ボードレール、エドガー・アラン・ポー、ユイスマンなどの文学に傾倒する。放浪の版画家ルドルフ・ブレスダンやファンタン=ラトゥールの指導を得て、1879年石版画集『夢のなかで』でデビュー。続いて『エドガー・ポーに』『起源』という石版画集を発表し、”黒の画家”として注目される。

黒の時代

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《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)岐阜県美術館蔵

 上の目をもった植物には、動物と植物の橋渡しとなるような存在を研究していた植物学者クラヴォーの影響が見て取れる。当時のルドンの作品モチーフは、顔をもった蜘蛛や魚でも動物でも人間でもある混合種など、晩年の傑作《キュクロプス》へと繋がる、不思議な空想世界の産物である。当時話題になった夢や無意識など精神世界の研究、聖書、神話、幻想小説に触発されたルドンの「見えないものに関する探求」が、光と影で表現されている。

 この後、50代になったルドンは黒との決別を行い、闇から光のなかへ、色彩の洪水ともいえるパステルや油彩による作品を制作していくのである。

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色彩へのめざめ

色彩に溢れた装飾画へ

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[ドムシー男爵の城館の食堂壁画15枚のうち]A.《黄色い背景の樹》1900-1901年 木炭、油彩、デトランプ/カンヴァス オルセー美術館蔵 Photo©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 本展覧会のみどころのひとつに、ルドンの作品の収集家で、親しい友人であったロベール・ド・ドムシー男爵の城館を飾った装飾画が介した大展示室がある。
 壁の上から下までを覆うほどの大判の作品群は、まさに植物と色彩の百花狂乱だ。水面のようにやわらかな色のグラデーションで描かれた背景に浮き出て咲く花々、木々と花々が幾重にも重なりあい調和をなす作品は、近づくと絵画の世界に入りこんだと錯覚するほどに美しく幻惑的である。

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[ドムシー男爵の城館の食堂壁画15枚のうち]D.《黄色い背景の樹》1900-1901年 木炭、油彩、デトランプ/カンヴァス オルセー美術館蔵 Photo©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 三菱一号館美術館が収蔵する《グラン・ブーケ(大きな花束)》も、ドムシー男爵の食堂壁画の内のひとつであり、ルドンの装飾壁画作品全体の中でも最も重要な作品のひとつと言えよう。
 この作品でも、ルドンは花束を写実するのではなく、華やかで幻想的な独自の世界、花と夢が渾然一体となった小宇宙を描いている。

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《グラン・ブーケ(大きな花束)》1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵

 「天から授かったものに従うことも、自然の命ずることです。私の授かったものは、夢にふけることでした。」とルドンは言っている。黒の世界から色彩の世界へと足を踏み入れ、感じ取った自然を幻想的に描くことで、夢の世界を普遍化していったルドンの稀なる画業世界に触れられる展覧会である。

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招待券プレゼントのお知らせ

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「ルドンー秘密の花園」展

【会期】
2018年2月8日(木)~5月20日(日)
【開館時間】
10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)※入場は閉館の30分まで
【休館日】
月曜日(但し、祝日の場合は、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)
【会場】
三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
【入館料】
一般1700円 他 ※詳細は展覧会サイトでご確認ください
【アクセス】
JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分 他
【展覧会サイト】
http://mimt.jp/redon/

「ルドン展」プレゼント応募は終了しました。
賞品は抽選の上、2018年3月5日に発送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。

2018年2月18日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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応募はこちら!(3月31日まで)
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