2020年06月03日 17:00 掲載

旧車 吉田 匠の
『スポーツ&クラシックカー研究所』
Vol.03
ヨーロッパを魅了した最初の
日本製スポーツカー「ホンダSシリーズ」。


文・吉田 匠

大幅に性能が向上したS600は、上下方向に広がったフロントグリルと、それに沿って形状変更されたバンパーがS500との外観上の主な違い。

大幅に性能が向上したS600は、上下方向に広がったフロントグリルと、それに沿って形状変更されたバンパーがS500との外観上の主な違い。

サーキットでも無敵だったホンダS

 ところがそれから半年も経たない1964年3月、S500はS600にモデルチェンジする。DOHC4気筒4キャブレターエンジンは排気量を606ccに拡大、パワーも57ps/8500rpmへと大幅に増強され、720kgの車重を145km/hの最高速に導くという、わずか600ccのクルマとしては世界最高水準のパフォーマンスを誇った。

 しかもいかにも当時のホンダらしくS600は早速レースに送り込まれ、64年5月の第2回日本GP、1300cc以下のGTレースで上位を独占。さらに9月にドイツ、ニュルブルクリンクで開かれたこれも1300cc以下のGTによる500kmレースに、後にF1チャンピオンになるデニス・ハルムの操縦で出場し、600cc強の排気量ながら1000cc以下でクラス優勝してしまう。

 65年2月には、オープンに加えてS600クーペが追加された。室内は2座だが、テールゲートを備えるクーペボディはシート後方に有効なラゲッジスペースがあって、ビジネスにも使えるスポーツカーと謳っていたホンダSの真価が一段と明確に発揮されることになる。しかもこのクーペは、オープンボディとは異なる独特のデザイン的な魅力を備えていたこともあって、日本よりもむしろヨーロッパで人気を得ることになる。

オープンモデルのおよそ1年後に追加されたS600クーペ。日常使いもできるS600のキャラクターを一段と明確にしたモデルだった。

オープンモデルのおよそ1年後に追加されたS600クーペ。日常使いもできるS600のキャラクターを一段と明確にしたモデルだった。

 さらに1966年1月になると、究極のホンダスポーツたるS800が発売される。それはDOHC4気筒4キャブレターエンジンを排気量791ccに拡大、パワーを70ps/8000rpmに増強したもので、オープンで720kg、クーペで735kgの車重を最高速160km/hで走らせると公表された。160km/hとは英米のマイル表示で時速100マイルに当たり、当時の小型スポーツカーの目標的数字だった。実際、当時のイギリスのスポーツカーの場合、160km/hの最高速を出すには優に1300cc以上の排気量が必要だったから、60年代半ばのライトウェイトスポーツカーとしては、いかにS800が高性能だったか分かる。しかもそれでいて、普段の足にも使える柔軟性を備えていたのも、ホンダSの大きな特徴のひとつだった。

 S800は66年5月になると、リアサスペンションがS600と同様のチェーンケース独立型から、コイルで吊ったリジッドアクスルに変更される。その結果、乗り心地はやや硬くなった反面、コーナリングに独特の癖がなくなってハンドリング性能が向上。サーキットでも明らかに速さを増した。その結果、国内の1300cc以下GTクラスでは無敵になると同時に、ヨーロッパのGTレースでも1000cc以下でクラス優勝している。

S800はフロントグリル内側とウインカーのデザインがS600と換わり、ボンネットにパワーバルジが備わったのが外観上の特徴で、これは国内販売モデル。

S800はフロントグリル内側とウインカーのデザインがS600と換わり、ボンネットにパワーバルジが備わったのが外観上の特徴で、これは国内販売モデル。

これは左ハンドルの輸出仕様で、グリル内のウインカーが国内仕様より大きい他、ボディサイドの前後にリフレクターが追加され、ミラーの位置とサイズも異なる。

これは左ハンドルの輸出仕様で、グリル内のウインカーが国内仕様より大きい他、ボディサイドの前後にリフレクターが追加され、ミラーの位置とサイズも異なる。

輸出仕様S800クーペのリアスタイル。イギリスのスポーツクーペのようなテールゲートを備える。S800のテールランプはオープンもこういうデザイン。

輸出仕様S800クーペのリアスタイル。イギリスのスポーツクーペのようなテールゲートを備える。S800のテールランプはオープンもこういうデザイン。

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