クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2018.09.26 公開日:2018.09.26

住友電工のDSSS対応路側インフラ「歩行者感知器」のみっつの特徴とは?

交通事故死者数をさらに削減するには抜本的な対策が必要!

 1948(昭和23)年の集計開始以来、2017年の交通事故死者数は3694人と、最少記録を更新した(記事はこちら)。そして2018年はというと、上半期(1~6月)に関しては微減とはいえ、2017年を下回るペースで来ている(記事はこちら)。

 しかし、年々減少率が緩やかになっており、第10次交通安全基本計画で掲げている「2020年までに死者数を2500人以下」の実現は黄色信号が灯っている。中でも高齢者が横ばい状態で、抜本的な対策が求められている。

 対策のひとつとして、2011年から警察庁と社団法人UTMS(新交通管理システム)協会が推進しているのが、交通安全支援システム「DSSS(※1)」だ。現在、首都圏や中京圏、関西圏などの大都市の信号に少しずつ取り付けられてその数が増えてきている。

※1 DSSS:Driving Safety Support System。ドライバーの認知・判断の遅れや誤りによる交通事故を未然に防止することを目的とした、交通安全支援システム。路側インフラのセンサーが取得した情報を路車間通信で車両側に伝え、必要時にドライバーに車両周辺の危険要因に対する注意喚起を行う。

DSSSとはどのような交通事故防止支援システム?

 DSSSはITS(※2)技術を駆使した、ドライバーにとって視認性の悪い道路環境での交通事故防止支援を目的としたシステムだ。例えば、右折時に右側から横断歩道を渡ってくる歩行者は死角に入ってしまうことがある。そうしたドライバーが見落とす可能性がある歩行者を路側インフラのセンサーがとらえ、ドライバーに警報を送る。路車間通信で情報を受け取った車両は、画面表示や警告音などでドライバーに注意喚起を行うのである。

 住友電工はそうしたDSSS対応の路側インフラを手がけており、9月12日にそこに新たに組み込める装置として新たに出荷を開始したのが、「歩行者感知器システム」だ。

※2 ITS:Intelligent Transport System。高度道路交通システム。人と道路(インフラ)と車両の間で情報の受発信を行い、事故、渋滞、環境対策といったさまざまな課題を可決するためのシステムとして考案された。現在は、第3期中期計画(2016~2020年度)が進められている。

180918-01-03.png

歩行者感知システムのイメージ。

「歩行者感知器システム」の3つの特徴とは?

 「歩行者感知器システム」には、3つの特徴がある。ひとつ目は、歩行者の検出用に24GHzのミリ波レーダーを採用していることだ。これは、24GHzのミリ波レーダーが昼夜の日照条件はもちろん、降雨があっても影響を受けないという、環境変化に対する強さから採用された。

 ふたつ目は独自のアルゴリズムを用いた、高い歩行者検知精度を有すること。検知機能の中には、ミリ波レーダーが歩行者に当たって返ってくる反射波の特徴情報を解析して追跡するという機能もある。それにより、歩行者の動きを予測でき、通過車両などで歩行者が隠れた場合でも検知することが可能になっている。

 そしてみっつ目が、広い検知エリアを実現したことだ。実はミリ波レーダーは、1本のアンテナでは感知器直近の広い領域をカバーしつつ、同時に検知可能な距離も伸ばすという両立が難しい。そこで、今回は複数系統のアンテナを活用。そして、複数系統の情報を合わせて処理できる技術も開発された。さらに、感知器を横断歩道近辺の歩行者灯器柱に取り付ける設計としている。

 これらにより、すぐ目の前の信号待ちスペースから渡った先の同スペースまで、広い検知エリアで歩行者を検知できるようになった。しかも、幅や長さなどが異なる大小さまざまな横断歩道にも対応できるという。

180918-01-04.png

「歩行者感知器システム」の特徴。

ドライバーはどうすると注意喚起情報を得られる?

180918-01-02.png

DSSSのイメージ。

 「歩行者感知器システム」がとらえた歩行者に関する注意喚起情報などは、DSSS規格に対応したクルマなら見ることが可能だ。ただし、DSSSにはレベルIとIIがあり、より詳しい情報を得るためには、レベルIIに対応した車載器が必要となる。各社より車載器を搭載した車種が発売されているほか、オプションで受信機器なども用意されている。

 DSSS対応の交差点は全国で少しずつだが増えており、中でも設置数が多いのが東京と愛知だ。設置されていない大型交差点の方がまだ圧倒的に多いため、今後のさらなる設置が望まれている。

 また各自動車メーカーも売れ筋の車種に搭載するなどしているが、全車種とはなっていない。せっかくの注意喚起情報があっても見られないのでは意味がないので、対応車種の拡充も望まれるところだろう。

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(3月31日まで)
応募はこちら!(3月31日まで)