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クルマ最終更新日:2018.07.23 公開日:2018.07.23

ワンペダル操作vsツーペダル操作! 楽しいのはどっちだ!?

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実験参加者は、ワンペダルとツーペダルで交互に運転し、その最中に脳波が計測された。

 クルマの加減速の操作は、アクセルとブレーキのツーペダル方式が常識だ。ただしEVやハイブリッド車には、減速する際にモーターを回して発電するエネルギー回生の機構を利用し、アクセルペダルを離すとすぐに減速が始まるモードを用意している車種もある。ブレーキペダルも用意されてはいるが、アクセルペダルのみで操作が可能なことから、これらは「ワンペダル方式」などと呼ばれている。

 ペダルを踏み換える必要がないので、「慣れると運転が楽」だとか、「乗っていて楽しい」などいわれているが、それはあくまでも体験者の主観的な意見。誰が乗っても本当に楽だったり楽しかったりするのかどうかは、証明が難しかった。

 そこで日産と、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 自動車ヒューマンファクター研究センターは、「ペダル操作の違いが運転者の心理状態と脳活動に及ぼす影響」と題した共同研究を実施。7月5日にその成果を発表した。

 研究期間は2018年1月5日から3月14日までで、実験は茨城県内の一般道路を用いて行われた。細くうねっている道路、混雑・渋滞のある市街地・駅前道路、路線橋、カーブが連続する自動車専用高架道などを含んだ、1周約11.3kmが実験コースである。22~55歳(平均年齢43.4歳)の男女6名ずつ合計12名がドライバーとして参加し、日産「ノート e-POWER」で走行した。

 「ノート e-POWER」は日産のコンパクトカー「ノート」の1グレードで、「ノート」が2018年1~6月の半年間の普通車(登録車)の販売台数で1位を記録する原動力となった。そのグレード名は、シリーズ型ハイブリッドエンジン「e-POWER」を搭載していることに由来する。

 同車はガソリンエンジンは発電しか行わず、駆動は電気モーターでのみ行うという、EVに近い乗り味が特徴。一般的な2ペダル操作用のノーマルモードと、アクセルペダルを離したときの減速度が強くてワンペダル操作が可能な「Sモード」という、2種類のドライブモードが用意されており、それを今回の実験では利用した。

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日産「ノート e-POWER」。大好評で、2018年1~6月の上半期販売台数において7万3380台(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会発表)で1位を獲得した。日産グローバル本社ギャラリーにて撮影。

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2種類のドライブモードのどちらが楽しいのか!?

「ノート e-POWER」の2種類のドライブモードで比較

 実験では、2種類のドライブモードを交互に切り替えて12回ずつコースを周回。運転中に脳波を計測し、運転後に心理状態をアンケートするという2種類の方法でデータ収集が行われた。

 脳波に関しては、注意状態を客観的に評価する手法のひとつである「課題非関連プローブ法」が用いられた。これは、実験参加者に対して運転作業とは関係のない音刺激(プローブ)を聴いてもらい、音刺激に対する脳反応の大きさから注意状態を推定するという方法だ。

 人には、注意力を分散できる総量を表す「注意資源量」という限界があるとされる。誰でも、ひとつのことに集中した結果、それ以外のことには注意を払えなくなったり、気にならなくなったりした経験があるはずで、注意を払える量が決まっているという考え方だ。脳波計を用いて、客観的にかつ科学的にそれを正確に計測するのが「課題非関連プローブ法」というわけだ。

 今回の実験では、実験参加者が運転に集中していればいるほど、音刺激に対する脳反応が小さくなる脳波になるはずという仮説のもとに実験を実施した結果、実際にワンペダル操作の方が脳反応が小さくなることが確認できたという。ワンペダル操作が楽しいと感じられる重要な要因と考えられる「運転への自然な集中」が、ツーペダル操作よりも強いということである。

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脳波計測の結果(12名の実験参加者の平均値)。「聴覚N1成分」とは、簡単にいうと、聴覚から入力された音を、脳が処理するときに発生する脳波のことだ。この値が大きい方が、音に気を取られている(運転に集中できていない)事を示す。

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アンケート結果はどうだった?

アンケートもツーペダル操作が上回った

 アンケートに関しても同様で、ワンペダル操作での運転が楽しかったという回答がツーペダル操作を上回った。これは、統計学的に見て誤差の範疇ではなく、有意に多い結果だという。

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アンケート結果。ワンペダル操作の方が多く、この差は統計学的に見て有意な差だという。

 このように脳波計測、アンケートどちらの結果からも、ワンペダル操作の方が楽しいというデータが得られた。

 研究グループは今回の結果から、ワンペダル操作での運転が実験参加者にとってより楽しい体験であり、同時に楽しさの重要な要因である運転への自然な集中を引き出せる仕組みであることも確認できたとした。

 ただし、従来とは異なる新しい操作方法を体験するわけなので、運転に集中するのはある意味当然といえなくもない。また、新しい経験なので、よほど使いづらい仕組みでない限りは、アンケートに楽しいと答えるのも想定できる。被験者が、ワンペダルの経験者だったのか、それとも初体験者だったのかなどが気になるところだ。

 また今回の結果から、脳波を用いたドライバーの集中力を測る方法が、運転操作系の新しい評価指標として効果がありそうだと考えられている。今回の集中力を測る方法を用いて、今後も従来とは異なる運転操作系に対しても、それらがドライバーに及ぼす影響について研究を続け、社会に対して貢献していきたいとしている。

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