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ライフスタイル最終更新日:2018.05.11 公開日:2018.05.11

レシピ12: 「誰もが”キー”パーソンになれる街」の作り方

シンガポールで見かけた奇妙なビルが、作るきっかけに

ここ数か月の『JAE Mate』の連載を振り返ってみたのですが。最近、街の情景を作ってないな、と思いました。じゃあ、どんなのにしようか、と思いを巡らせた時、街は街でも都会的なもの、さらには海外の都市みたいなのもあまり作ってないことに気がついたのです。

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最近、台湾や香港で個展を開くことがあり、アジアや東南アジアの国々の街並みに興味を持ちはじめています。特に気になっている街は、シンガポール。
以前ネットで調べてびっくりしたのが、街中に高級車の自動販売機があるということ。ガラス張りの壁の中にまるでミニカーのように高級車が収まっている様子が面白かったんです。ちょっと「MINIATURE LIFE」ぽかったのもあって、今回、シンガポールの街をイメージした作品にすることにしました。

ビルに見立てたのは、パソコンのキーボード。
密集するビル群の間を林立するキーボードの間を走るのは、どれも高級車。
街を歩くビジネスパーソンが時間に追われているように見えるのは、IT産業が盛んな街だから。
南の国であることを感じさせるヤシの木だけは、のんびりしている……。

いつも作品を作る際、主役のフィギュアを決めて、その視点で物語を作って入るのですが、今回は街そのものが主人公。イメージは、某飲料メーカーの缶コーヒーCM風に「この惑星の……」ではなく、「この街の……」という感じにしています。ぜひ本誌も確認してください。では、早速、作り方をご覧ください。

→次ページ:「誰もが”キー”パーソンになれる街」を表現した材料

「誰もが”キー”パーソンになれる街」を表現した材料

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右上の赤いミニカーから時計回りに。 トミカ 「No.39 アウディ R8」486円(税込み)
トミカ 「No.34 ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテ」486円(税込み)
トミカ「No.64 ポルシェ ボクスター」486円(税込み)
トミカ 「№91 メルセデスベンツ SLS AMG」486円(税込み)
トミカ トミカプレミアム「№10 ランボルギーニ カウンタック LP500S」864円(税込み)

ITで成功した人が働く街というイメージだったので、走っている車をどれも超高級車にしてみました。中でも、作品のメインに使ったのは、ガルウィングタイプ。ミニカーのカラーも日本だと車を売る時の査定を気にして、白とかシルバーばかりですが、お金持ちは、そんなことを考えず、人より目立つ色、自分が好きな色に乗るだろうと考えてカラフルなラインナップにしています。

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フィギュアはおなじみのプライザー社製。今回は塗装や加工を施すことなく、そのまま使っています。シンガポールはビジネスだけでなく、観光でも人気。なので、ビジネスパーソンだけでなく、カジュアルな服装の人や多様な人種のフィギュアを選んでいます。

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ビルに見立てたキーボードは大小さまざまなタイプを用意。硬質なアルミボディが壁に、ボタンの部分が、ちょうど窓のように見えると思ったからです。手前にあるのは情景模型のヤシの木。これを数本立てて、南国らしさを演出しました。

→次ページ:「いよいよ制作!」

いよいよ制作!

(1)ブックエンドにキーボードを貼り付けてキーボードを自立させる

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キーボードは薄く、細長いので、そのままではビルのように自立させられません。そこで、透明なアクリル製のブックエンドに貼り付けました。より立体的に見せるテクニックなのですが、ひとつだけ一辺を組み合わせ、奥行きがあるビルらしく見せています。

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俯瞰で見るとこのような感じです。右端のキーボードは、本当に立てただけ。
写真なので、見えない部分は作り込まなくてもいいからです(笑)

(2)レンズの「歪み」でビルをより高く見せる

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今回、撮影で使ったのは超広角のマクロレンズ。広角レンズで接写すると、作品に遠近感が出る上に、 ビルに見立てたキーボードが歪むのです。その歪みをうまく活用し、ビルがより高層に見えるように演出しました。ちなみに三脚の足が邪魔になり、接写できない時は、写真のようなポールを追加して、撮影台の近くにもっていけるようにします。

(3)いつも以上にライブビュー機能でモニターをチェック

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レンズにより画像が歪むということは、実際に自分が目で見ているものとは違う情景になるということ。それゆえフィギュアやミニカーなどを配置したら、モニターでどのように見えるかを確認。微妙に配置を変えながら、構図を決め込みます。

使うレンズでも作品の雰囲気はかなり変わります。皆さんも「MINIATURE LIFE」を作るときは、試して見てください。

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ミニチュア写真家:田中達也(たなか たつや)

1981年、熊本県生まれ。広告関連のアートディレクションに携わりながらInstagramにアップしていたミニチュア作品が大人気に! 「ミニチュア写真家」へと転身する。2017年に話題を呼んだNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックのミニチュアも手がけた。「MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界」が国内外各地で開催中。

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写真集『MINIATURE LIFE』『MINIATURE LIFE2』(水曜社)を上梓。
彼の作品は、http://miniature-calendar.comをチェック!

企画構成・文/寺田剛治

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