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クルマ最終更新日:2018.01.08 公開日:2018.01.08

かわいくてエコなEVがベンツに勝てる!?ドイツのタクシー事情。

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ゼロ・エミッションの次世代シティ・モビリティ「City eTaxi」。(c) Adaptive City Mobility

 ドイツでタクシーといえば長い間ベンツが定番だった。

 南西ドイツ・シュトゥットガルト市に拠点を置くメルセデス・ベンツ社は1897年、世界で初めてエンジンを搭載したタクシー専用車を製造した。特に70年代~90年代にかけて同社のタクシー車は圧倒的な普及率で「タクシー=ベンツ」のイメージを植えつけた(記事はこちら)。

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メルセデス・ベンツのタクシー車。© Mercedes AG

 現在ではベンツ以外の車両も街を流しているが、そんなドイツのタクシー業界に一石を投じる(!?)EV(電気自動車)タクシーがお目見えした。

ベンツ・タクシーの国に一石を投じるか?

 「CITY eTAXI(シティ・イー・タクシー)」と名づけられたこのクルマは、ドイツ連邦経済・エネルギー省による援助プロジェクトである。国が力を入れて推進する点で注目される、環境汚染や気候を混乱させる廃棄物を排出しない”ゼロ・エミッション”の次世代シティ・モビリティなのである。

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(c) Adaptive City Mobility

 一見すると日本車を思わせる”カワイイ”デザインなのだが、そこは機能主義の国ドイツである。バウハウスの建築家ミース・ファン・デル・ローエの有名な言葉「レス・イズ・モア(より少ないことは多いことだ)」がコンセプトとなっている。
 全長3.30m×全幅1.66m×全高1.48mコンパクトサイズのボディに、バッテリーなしの重量が450kg、最高時速は90 km/hと、サイズ・重量・速度はミニマムな作りであっても、最大限の機能を発揮する工夫がなされている。

コンセプトはレス・イズ・モア

 例えば、車内空間を合理的に活用するため乗車定員は3人に設定。前に運転手が1人、後部に2人乗車することで後部座席に余裕ができ、乗客はゆったりと足を伸ばすことができる。また外の景色が見やすいように、ボディの側面にはガラスが大きく取り入れられている。

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運転席が左右に大きくスライドすることで、ドライバーと後部座席のゲストが楽に乗降できる。(c) Adaptive City Mobility

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(c) Adaptive City Mobility

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バッテリーはチャージするのではなく取り替える

 注目すべきはバッテリー・チャージの仕方である。
 ロンドンのタクシー会社によると、タクシーの1日の走行距離は240~320Km。CITY eTAXIのフルチャージ時での航続距離は120Kmであるため、1日数回のチャージが必要となってくるが、充電時間を省くため、満充電のバッテリーパックと丸ごと交換する仕組みを導入している。

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ボディの床にバッテリーを搭載。(c) Adaptive City Mobility

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左右に4つずつ、合計8つのバッテリーを収納。引き出しを開けて手軽に装着が可能。(c) Adaptive City Mobility

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バッテリーの交換は3~5分で済んでしまう。(c) Adaptive City Mobility

 バッテリーを交換するチャージ・ステーションも、太陽光や風力によって作られたエコロジカルな電気を使用する予定だという。
 コンセントを使って家庭での充電も可能であるが、充電時間は6時間必要となる。

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(c) Adaptive City Mobility

 CITY eTAXIは、2017年のフランクフルトモーターショーで初公開された。今年の5月にはミュンヘンにて試験運転を実施し製品化が進められる予定で、タクシーのみならず、後部座席を外して宅配便の運送などにも活用が見込まれている。
 ベンツ・タクシーの伝統の国ドイツにも、新しくてエコなEVタクシーの流れが来ているようだ。

2018年1月8日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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