2020年09月24日 09:20 掲載

クルマ 【くるくら座談会】アフターコロナのクルマがどうなるか考えてみた。【後編】


くるくら編集部 会田 香菜子

求めるのは「人の渋滞」が一様に分かるサービス

記者:カーシェアの今後も気になるところですが、乗用車を使った公共交通機関としてはタクシーもあります。タクシー会社によっては、アフターコロナでも安心な乗り物としてPRを行っているようですが、今後、より使われるようになりますか?

杉浦:タクシーはコロナ感染対策という意味でいうと、安心して使えると思います。ただ、運賃が割と高いので、アフターコロナで日常生活の中でも気軽にタクシーに乗るようになるかというと、そこは抵抗感が強いかな。たとえば、お子さんが急に熱が出た時に、タクシーを呼んで病院まで行く、などの緊急時でこそ使いますが、大雨だったり、暑かったりするような時でも、健康な方はタクシーを使うより我慢して歩きますよね。ということは、日常生活のタクシー利用はそんなに変わらなくて、変わるとしたら非日常の観光や旅行かなと感じています。

 これから先どうなるかわかりませんが、経済を回すということでGoToキャンペーンも含めて、観光の活性化をしていますよね。観光をビジネスにしている方は非常に多いと思うので、活性化していかなきゃならない。ところが、長時間同じバスに乗るとかは抵抗感があるかもしれない。そういうところで、タクシーの役割が大きくなるかもしれないですね。

記者:観光の話になりましたが、観光のための移動手段も変わってきそうですね。

杉浦:国土交通省が実施した「全国幹線旅客純流動調査」をもとに、休日旅行に利用される交通機関を集計したことがあるんですが、結果を見てみると、実はすでに日本の観光の8割は実はマイカー旅行なんですよ。そういう意味でいうと、まずはマイカーで安心して旅行ができるような仕組みを考えたほうが現実的かもしれません。例えば、SAとか道の駅が混雑している情報を、事前にコネクテッドの機能でクルマにいながら分かるとか。そんな機能が一般的になると、もっと安心して快適に旅行ができるのかなという気がしました。

浮穴:VICSによって道路の混雑情報はカーナビなどで簡単に分かるようになりました。SAの混雑具合なども、電光掲示板では分かるようになっていますが、それ以外の観光施設や観光地の混み具合をリアルタイムで分かるようになるのは、まだこれからでしょうね。

杉浦:今年の夏は、特に関東地方では東京中心に感染が拡がっていることもあったので、郊外への旅行は控えるべきだという風潮がありました。それでも、やはり夏休みなので、せめて県内で出かけようとしても、ショッピングモールは混んでいるのか? アウトレットは? 水族館は? と、行き先の込み具合が分からない。それが分かったらすごく出かけやすいなと思うんです。

 今のコネクテッドやテレマティクスにも、道路の情報はかなりありますが、人の密集度合いは一様に分かるものがありません。現時点では、それぞれの施設のWebサイトで確認しないといけないんですよね。日常の中でも、外出の楽しさや安心感を得られるような機能があってもいいんじゃないかと感じています。

浮穴:テレビでは既に渋谷の混雑度の減少率を報じていますね。つまり携帯キャリアは、全ての電話の位置を把握しているわけですから、電話番号は非公開のままVICSと同じように情報を送ってナビに表示することだってできるわけですよね。とはいえ、技術的には可能でも、ビジネスとして成り立つかどうかというところがポイントです。サービスを上手く回すプランナーが現れれば、「人の渋滞」情報を確認して行き先を決めることも可能になりそうですね。

記者:そういえば、ディズニーランドの施設ごとに、何分待ちとかを確認できるアプリがあります。どこでも遊びに行くのであれば、混雑具合は気になります。ディズニーランドに限らずそういうアプリがあって、気軽に混雑情報が取れると嬉しいですね。

杉浦:どこに遊びに行ったら、今が一番空いてるし安心できるっていうのが分かるものが、ですね。僕も、8月に入ってから近隣に出かけて思ったんですけれど、混んでるか空いてるかは行ってみないと分からない。それは、今この日本において解決していくべき課題のひとつだと感じています。先ほど出たディズニーランドのアプリみたいなものが、県なり関東全体なり、日本全体でも、できるといいなって思いますね。

記者:ここ数年、モビリティの分野では、MaaS(Mobility as a Service)という言葉をよく聞きました。行きたい先探しから、そこへ行くための情報、そしてチケットの予約や支払などまでが一つのサービスでできてしまうというイメージだったのですが、このMaaSという考え方は、アフターコロナの社会でも残っていきそうですか。

杉浦:MaaSみたいなものは、基本的に公共交通を絡ませた利便性向上なんですよね。なので、マイカーで移動するときは、直接MaaSとは関係ないと思います。ヨーロッパでいわれているMaaSは、カーシェアを含めた公共交通利用の活性化みたいなイメージなので、公共交通がどれだけ使われるかというところに依存すると思います。

 環境面とか、エネルギー効率とか、公共交通機関のメリットはもちろん大きいのですが、僕の感覚としては、家族で郊外に観光やアウトレットに行こうというときには、正直使いにくい気がしています。なぜかというと、新型コロナの問題もありますし、そもそも観光に行くと、貴重な時間の中で買い物したり、お土産を買ったり、美味しいものを食べたりしたいものです。そうなると、柔軟に動けるマイカーに分がある気がするんですよね。

 日常の通勤や通学の中では、公共交通の利便性は大事だと思うんですけれど、非日常の中だと、マイカー旅行の方が利便性が高い。そこで、マイカーの利用をもっと向上する機能を、MaaSのような形で充実させていってもいいと思います。

記者:最後に、アフターコロナで大きく変化しそうなこと、逆に変化しないと思われることを、教えていただけますか。クルマ以外の話題でもいいですよ。

杉浦:新型コロナに関する状況が日々変化していたり、ウイルス変異の可能性もあると、この先がどうなるかと読むのは正直難しいことです。ただ、今回の件で浮き彫りになったことは、日本の産業の構造と、我々の暮らしが都心の機能を中心にできあがっていることです。

 アメリカやドイツなどの諸外国を見ると、産業にしろ暮らしにしろ、いくつかの地域に分散されている傾向にあります。そのように、働く場所も住まいも、もっと日本全体の国土が均衡して使われていた方が、暮らす人たちにとっても安心で快適なのではないでしょうか。たとえば、全ての都心が感染対策で外出規制ということになれば、そこで産業がストップしてしまうということはリスクが高いはずです。地方分散を、コロナ禍をきっかけに進めた方が日本にとっていいと思うんです。

 時間的にも空間的にも余裕がある暮らしは、暮らす側にとってもメリットが高いし、人口が分散していった方が会社機能においてもリスク分散ができるメリットがあると思っています。新型コロナの影響だけではなく、先々の安心感や快適性、信頼感を考えると、暮らしと働き方を変えていくことが大切だと思います。そうなると、マイカーのよさもますます生きてくるはずです。

浮穴:新型コロナの影響で、私の友人もオフィスを3フロアから1フロアにして、残りはみんな在宅勤務に移行したり、家賃の安い山梨に移動した人がいました。先ほど杉浦さんがおっしゃったように、地方分散してもネット環境があるので、問題なく仕事ができると思うんです。

 ただ、一方で大学生が田舎に帰ってネットで授業を受けていると、同級生と交流したり、友達を見つけるチャンスが減ってしまいます。Zoomでは100人が一斉に画面に出るかもしれないけれど、そこで相性がよい人を見つけることは非常に難しい。そういうものは、直接のコミュニケーションがすごく大切だと思っています。チーム作りや仕事以外の仲間との絆などは、日本の強さでもあると思うのでそれは残していきたい。

 でも、世の中はオンラインミーティング全盛になってしまいました。私も、Zoomはよく使いますが、周りの人がどういう目でこちらを見ているのか分からず、雰囲気や場が読めないこともあります。このコロナ禍によって、もし学生たちのコミュニケーションもオンラインでしかできない状況では、真に分かり合える友達はできにくいのではないでしょうか。対人関係における感覚を身に付けるためには、人と会わなければいけない。そのためにも、移動しての対面コミュニケーションを大切にしてほしいです。もちろん、衛生的で安全な移動が前提です。

 もう一つは、家族にとってのクルマですね。子どもが結婚して家を出て行って、孫ができたりしても、会うのは年に数回くらいですが、クルマの中の会話ってすごく絆が深まるんですよ。一緒に移動しながら空間を共有できるからでしょうね。軽自動車も、ワンボックスカーみたいに空間が大きなものがあるので、リラックスできるようなクルマがますます人気が出てくるだろうと思っています。交流する場として、クルマというものが再評価されるだろうと思っています。

 海外の方と仕事をした時も、一緒に食事をして人間性をお互いに理解して、その人を通して契約をするということがありました。世界どこでも、大切なのは人と人との関係なんです。そして人と会うためには移動が必要で、アフターコロナでは、モビリティこそがより重要になるのではないでしょうか。

記者:私の場合、今までは生活の中心が仕事だったのですが、在宅勤務が増えたことによって生活の質が上がってきている感じます。これは、私にとってはとても嬉しいことです。アフターコロナやウィズコロナという言葉を、ポジティブに捉える人は少ないかもしれませんが、仕事は仕事、プライベートはプライベートと、メリハリがある生活が手に入ったという人も多いのではないかなと思います。

 反面、浮穴さんがおっしゃられるように、直接会って話すということも大切である、ということもとてもよくわかります。リモートに慣れ過ぎて、人と会った時にうまく話せないというのもイヤですよね。コロナ禍で起こったよい変化はうまく取り入れて、アフターコロナでも人との関わりを保つには、やはりモビリティが、なかでもマイカーの活用が大切になることが、今回の対談でもよく分かりました。

 今日は、さまざまな興味深いお話、ありがとうございました。アフターコロナに向けた新しいマイカーのアイデアもいくつかでましたが、これをお読みの関係者の皆様に是非実現していただければと思います。アイデア料はいらないので(笑)。

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