2019年11月22日 17:30 掲載

クルマ レクサス、中国で市販EV第1弾「UX300e」を世界初公開。今後のトヨタEV戦略をまとめてみた


神林 良輔

EVのバッテリーは高耐久性が重要

 EVを量産する上で課題となるのが、高性能なバッテリーを確保することだ。中でも、長期間使用しても劣化しにくい耐久性が重要視されている。高耐久性のバッテリーなら、ユーザーがEVを長く安心して乗り続けられ、さらにEVの中古車市場の構築にもつながるからだ。

 トヨタでは、2012年の初代「プリウスPHV」、2017年の同2代目で、当時のトップレベルの耐久性を実現。「CH-R/IZOA」では、バッテリーの材料やパック構造、制御システムなど、さまざまな点からバッテリーの劣化を抑制する技術を高め、2020年時点の世界トップレベルの性能を達成すべく開発を進めているという。レクサス「UX300e」も同程度のレベルと思われる。

トヨタのバッテリーの耐久性能のグラフ。長期間使用して、どれだけ劣化しないかを示したもの。

画像14。約10年間という長期間バッテリーを使用した後、どれだけ劣化するかを示したグラフ。プレスリリース「EVの普及を目指して」(2019年6月7日発表)より。

EV量産の成否は高性能バッテリーの量産体制がカギを握る

 バッテリーの性能を高めること以上に重要なのが、量産体制を構築することだ。電動車全体の普及率は2018年時点でトヨタの当初の想定を超えており、このままのペースが維持されると2025年には当初の予定よりも約20倍の台数になるという(画像15)。そのため、高性能なバッテリーを安定して大量に供給できる体制を確保することが必須だ。

トヨタの全電動車に必要なバッテリーの容量。

画像15。2018年現在のペースが維持されると、2025年には当初の想定の約20倍になるという。プレスリリース「EVの普及を目指して」(2019年6月7日発表)より。

 そこでトヨタはまず、パナソニックと2019年1月に車載用角形電池事業に関する2020年の新会社設立に向けた事業統合契約と合弁契約で合意した。そして両社が立ち上げて世界シェアトップクラスとなったプライムアースEVエナジーを筆頭に、GSユアサ、東芝、豊田自動織機など、国内サプライヤーとバッテリーの調達に関する協調・連携する体制も整えた。

 また中国でのEV量産に備え、バッテリーの世界的な大手である同国のCATLと7月に新エネルギー車用バッテリーに関する包括的パートナーシップを締結。さらには、中国のバッテリー・電動車メーカー大手BYDともバッテリーを含めたEVの共同開発で7月に合意し、11月7日にはEVの研究開発会社(中国国内のトヨタの4つ目の研究開発拠点)を合弁で2020年中に設立することに合意したことが発表された。

全固体電池の開発状況は?

 そして気になるのが、全固体電池の開発状況だ。リチウムイオンバッテリーは液漏れや発火などの危険性があり、また充電時間が長いという課題を有する。それに対して全固体電池は固体電解質を利用するため、液漏れや発火の危険性がない。しかもエネルギー密度がより高く、高電圧化も容易なことから、小型軽量化を実現しやすいとされる。さらに高温耐久性能が高いことも手伝い、充電時間はリチウムイオンバッテリーの1/3~1/5程度で済むようになるとされている。これまでなら8割の充電で20~30分かかっていたところ、5~10分程度で済むという。

 トヨタに所属する加藤祐樹博士らは、全固体電池研究の第一人者である東京工業大学大学院総合理工学研究科の菅野了次教授を中心とした共同研究チームに参加しており、ひとつの成果を2016年3月に発表。従来のリチウムイオンバッテリーの電解液よりもイオンの移動速度(伝導率)が2倍という固体電解質を発見したのだ。その後も、菅野教授らは全固体電池に関する成果を発表し続けている。

 現在、全固体電池に関するトヨタの公式な情報としては、上述したトヨタとパナソニックの新会社において、全固体電池および次世代電池に関する研究開発も行うということが発表されている。広報に全固体電池について改めて確認したところ、現時点で発表できるのはこれまでと同様に「2020年代前半に実用化を目指して開発しています」ということだった。

 最初は中国からだが、その後の日本を含めたEVの世界展開が気になる今後のトヨタのEV戦略である。

東京モーターショー2019でレクサスが発表した電動化ビジョンを表したコンセプトモデル「LF-30 Electricfield」。

画像15。東京モーターショー2019にて世界初公開された2030年を想定したコンセプトEVのレクサス「LF-30 Electricfield」。

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