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クルマ最終更新日:2021.01.07 公開日:2021.01.07

環境にやさしい「竹製エッジ」で、除雪作業もスムーズに

時には雪に見舞われる冬の高速道路。そこでは除雪車による除雪作業が欠かせない。NEXCO中日本がこのたび開発したのは、除雪車に装着するスノープラウ(車体前方に取り付けた、雪を押し出す鉄板)のエッジ部分の材料として竹を用いたもの。実はこのエッジが除雪作業においては重要な役目を果たすという。除雪の作業性もよくなり、環境にもやさしい、除雪車のこの「竹製エッジ」とは?

くるくら編集部 上條謙二

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鉄製の雪掻き板、除雪車のスノープラウ

竹製エッジの除雪車|くるくら

スノープラウ(写真:半円筒状に曲がったブレード部分)を装着した除雪車。スノープラウの下側、路面と接する部分に取り付けられている長方形の板が、今回開発された「竹製エッジ」。

竹製エッジの除雪車|くるくら

複数の除雪車による「梯団除雪」の作業風景。

 一般道と比べて車の走行スピードが上がる高速道路では、路面状況が直接事故に結びつきやすい。特に冬の高速道路において、雪は大きなトラブルを発生させる原因となる。そこで安全な路面の維持管理上、重要となるのが除雪車による除雪作業だ。

 ところで高速道路では、除雪作業が2~3台の除雪車による編成で行われることをご存じだろうか? 車線の列をずらして中央分離帯側から路肩側へと順番に雪を押し出していく除雪作業方法で、「梯団(ていだん)除雪」と呼ばれている。TⅤCMでこの除雪作業シーンはお馴染みかもしれない。

 路面上の雪は走行する車に踏み固められてしまう前に速やかに掻き取らなければならない。雪の掻き取り役は、車両の前方に「スノープラウ」を架装した除雪車が主に担っている(踏み固められた路面上の固い雪を削り取るためには「グレーダー」が使われる)。スノープラウは、横長の鉄板を半円筒状に丸めたような形をしており、スノープラウを装着した除雪車の場合、一般的に幅は3~4m、高さは約3.6 m、重量は約20トンほどになる(プラウや装備品の種類によって大きさや重量は異なる)。この鉄製の雪掻き板は、進行方向に対して少し斜めに角度がつけてあり、車の推進力によって掻き取る雪を片側に寄せながら横に押し出す構造になっている。このスノープラウが路面と接する部分に装着されるのが「スノーエッジ」だ。一般的な除雪車では、路面にダメージを与えないように高硬度のポリウレタンゴムが使われており、作業によって摩耗するとこの部分を交換する。今回開発されたのは、このスノーエッジの素材であるポリウレタンゴムに代わって竹を使用するというものだ。

開発のヒントは、札幌の「ササラ電車」

竹製エッジの除雪車|くるくら

今回開発された竹製のスノーエッジ。竹は、柔らかすぎず、硬すぎず、適度な硬度があり、環境にやさしく、他の木材と異なり水分に強いので腐りにくい利点がある。

竹製エッジの除雪車|くるくら

一般的な除雪車に装着されるポリウレタンゴム製のスノーエッジ。作業による路面との摩擦で先端が傷んでいるのが分かる。

 スノープラウは、除雪車にとっては命とも呼ばれる重要な部品で、中でも路面と接するスノーエッジの果たす役割は大きく、路面上の雪を残すことなくしかも路面を傷めずに取り除けるかはこのスノーエッジ次第だという。

 ではこのスノーエッジの素材として、どうして新たに竹が採用されることになったのだろうか?

 竹製エッジ開発のヒントになったのは、札幌の路面電車の軌道敷を除雪する「ササラ電車」。竹製のササラをいくつも束ねて水車の羽根状にして、その羽根状のブラシを回転させて軌道敷に積もった雪を掃き飛ばす仕掛け。ちなみに「ササラ」とは、竹などを束ねて作られた洗い物に使う台所用具のこと。開発担当者が札幌に雪氷作業の見学に行った際にこのササラ電車を見て、柔らか過ぎず、硬過ぎず、適度な硬度があり、反発力があるササラの竹に目が留まり、「ポリウレタンゴムの代わりとなる材料ではないか」と閃いたのだという。

竹製スノーエッジのメリットは?

竹製エッジの除雪車|くるくら

写真上が、竹製のスノーエッジ、下がポリウレタンゴム製のスノーエッジ。竹はポリウレタンゴムの約半分の軽さ。エッジ交換作業が容易になるのも利点。

 ではスノーエッジの素材として竹を使用するメリットは何なのか? まとめると以下のようになる。

(1)「環境にやさしいこと」・・・植物である竹は、石油化学製品であるポリウレタンゴムなどに比較して素材として環境への負荷が小さい。また路面との摩耗によって従来のポリウレタンゴム製のスノーエッジから発生するいわゆるマイクロプラスチックによる環境への影響を低減できる。

(2)「ポリウレタンゴム製と比べて硬度が高いことから、路面との接触によるたわみが少なくなるため、除雪作業操作がしやすいこと」・・・除雪の際、スノーエッジが柔らかすぎると、折れ曲がってしまうため雪が掻けなくなる。ただ硬すぎても橋梁のジョイント(伸縮装置)などの道路を損傷させてしまう。適度な硬度を持つ竹はスノーエッジの素材として向いている。

(3)「ポリウレタンゴム製と比べて軽量なため、エッジの交換作業が容易なこと」・・・同サイズ(850mm×270mm×30mm)の交換部品での重量比較では、ポリウレタンゴム製が8.75㎏なのに対し、竹製は4.5㎏。

 竹製エッジは、筒状の竹を幅3cmの板状にカットし、水分と油分を抜いて、同一繊維方向に接着剤で貼り合わせた集成材。中国産の孟宗竹を素材として使用している。

 この竹製エッジを装着した除雪車だが、この冬、北陸自動車道の今庄IC~木之本IC区間などで試験導入し、除雪作業後の残雪状況など、路面の仕上がり状況について検証する予定。

 木材の中でも竹は特に生育が早く3年程度で利用でき、資源が枯渇しにくい特性もあるため、将来的には高速道路沿線の間伐材の有効活用の一つの方法として検討していきたいとのことだ。

【取材協力:中日本高速道路株式会社】

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