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クルマ最終更新日:2020.02.26 公開日:2020.02.26

洗車前にチェック必須。3日先までわかる「黄砂解析予測図」。ひまわり8号の気象庁新サービス

愛車に降り積もる塵やホコリの中でも、黄砂はやっかいな存在のひとつだ。日本では春が黄砂到来のシーズンである。そうした中、気象庁が九州大学とJAXAと共同で「黄砂解析予測図」をオープン。その利便性を紹介しよう。

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 知らない間に愛車に降り積もる黄砂は、ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠など、中国奥地やモンゴルなどの乾燥地域が発生源となっている。それらの地域の砂や塵が強風によって吹き上げられ、上空の風によって運ばれて日本で降ってくるのだ。日本では春に起きることが多い現象で、時には空の色が黄褐色になってしまうこともあるほどである。

ひまわり8号の画像で予測精度向上へ

 気象庁は2004年にコンピューターシミュレーション「黄砂予測モデル」の運用を開始し、これまでも同庁のホームページなどを通じて予測情報の提供を行ってきた。しかし、さらなる精度の向上が求められ、そこで活用することにしたのが、世界トップクラスの性能を有する気象衛星「ひまわり8号」の衛星画像だ。

 ひまわり8号およびバックアップの9号は、先代のひまわり7号と比較して、観測バンド(波長)数で約3倍、空間分解能で2倍、フルディスク観測(※1)の観測頻度で6倍という、”次世代”の名にふさわしい高い性能を有する。大気中のエアロゾル(※2)の観測も広範囲かつ高精度に行えることから、黄砂観測でも活躍しているのだ。

※1 フルディスク観測:衛星から見える地球すべての範囲を観測すること。従来は全球観測と呼ばれていた。
※2 エアロゾル:大気中に浮遊する塵などの固体や液体などの粒子のことで、黄砂もその一種。エーロゾルともいう。

画像。気象衛星「ひまわり8号」と同9号のイメージ。

画像1。気象衛星「ひまわり8号」と同9号のイメージ。

 気象庁は、ひまわり8号・9号の衛星画像を活用するため、九州大学およびJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同研究をスタート。観測情報を黄砂予測モデルにデータ同化させることで、予測精度の改善に成功した。そしてこの1月末から提供が始まったのが、その新手法を導入した「黄砂解析予測図」である。

「黄砂解析予測図」は誰でも利用可能かつ操作も容易

 「黄砂解析予測図」は誰でも利用可能な、登録不要の無料Webサービスだ。利用するには、気象庁のトップページの上部にあるメニューから「防災情報」を選択。続いて「生活に役立つ情報」の中の「黄砂情報」をクリックすると、画像2の「黄砂解析予測図」(黄砂情報)のページとなる。

 「黄砂解析予測図」は「領域」、「種類」、「表示日時」もしくは「表示時間」、そして「動画期間」の4項目を設定するだけで、黄砂について前日の解析結果から3日先までの予測図、もしくはひまわり8号・9号の衛星画像を見ることができるのである。

画像。「黄砂解析予測」は、気象庁の「防災情報」内の「黄砂情報」のページに用意されている。

画像2。「黄砂解析予測図」は、気象庁のホームページのメニュー「防災情報」から「生活に役立つ情報」内の「黄砂情報」ページで利用できる。

 「黄砂解析予測図」では、「地表付近の黄砂の濃度」と「大気中の黄砂の濃度」を見ることができる。衛星画像の「ひまわり黄砂監視画像」には、「トゥルーカラー再現画像」と「ダスト画像」の2種類がある。「地表付近の黄砂の濃度」、「大気中の黄砂の濃度」、「トゥルーカラー再現画像」、「ダスト画像」の切り替えは、「黄砂解析予測図」の「種類」メニューで行えるようになっている。

クルマに降り積もる黄砂の予測を見るなら「地表付近の黄砂の濃度」

 それではまず、「地表付近の黄砂の濃度」(画像3)から説明しよう。「地表付近の黄砂の濃度」は、地表から上空1kmまでの間における黄砂の濃度を示したものだ。クルマに降り積もったり、洗濯物が汚れたり、水平方向の見通し(視程)が悪化したりと、直接生活への影響がある黄砂現象の解析結果と予測を確認できる内容である。

画像。気象庁の「黄砂解析予測図」の「地表付近の黄砂の濃度」。最大3日先までの黄砂現象の状況を確認できる。

画像3。「地表付近の黄砂の濃度」の画面。濃度は薄いが、西日本から日本海側にかけて黄砂が降るという予測。

 もうひとつの「大気中の黄砂の濃度」(画像4)は、地表付近から上空約55kmまでの間の1平方メートル辺り(空間的には縦1m×横1m×高さ約55kmの細長い直方体)に含まれる黄砂の総量を示したものだ。こちらは、空が黄褐色ににごってしまう現象に関連する情報となる。

画像。気象庁の「黄砂解析予測図」の「大気中の黄砂の総量」の画面。

画像4。「大気中の黄砂の濃度」の画面。色は薄いので、当該地域であっても大気中の黄砂の総量はそれほど多くはない。

マップの表示領域は日本のみと東アジアを含めた広域の2種類

 「黄砂解析予測図」のマップの表示領域は、2種類が用意されている。日本と東アジアの一部を範囲とした「日本域」(画像5)と、中国奥地の黄砂の発生源まで含めた「アジア域」(画像6)だ。

画像。気象庁「黄砂解析予測図」の「大気中の黄砂の総量」の表示画面。領域は「日本域」。

画像。日本域で表示させた「大気中の黄砂の濃度」。なお当日以降の予測ではなく、前日の解析結果の場合、マップ周辺はすみれ色になる。

 どちらの領域でもマップは一辺約50kmの格子状に分割されており、黄砂の濃度は格子ごとの色の濃淡で表される。「地表付近の黄砂の濃度」では赤(濃い)~黄(薄い)で表され、「大気中の黄砂の濃度」は濃い茶(濃い)~薄い茶(薄い)となっている。

画像。気象庁「黄砂解析予測図」の「地表付近の黄砂の濃度」の画面。領域は「アジア域」。

画像6。アジア域を表示させた「地表付近の黄砂の濃度」の画面。画像左端には発生源のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠の一部も表示されている。

黄砂が飛来する様子を連続再生することも可能

 「表示日時」メニューで設定することで、前日の0時から3時間ごとの解析結果、当日から1日先までは3時間ごとの予測、2日先から3日先までの6時間ごとの予測を表示させることができる。また「動画期間」を設定すると、連続したアニメーションとして一定時間ごとの黄砂の動きを追うことも可能。まさに黄砂が飛来する様子が手に取るようにわかるのだ。

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「ひまわり黄砂監視画像」について

ひまわり8・9号による「ひまわり黄砂監視画像」は2種類を用意

 気象衛星ひまわり8号・9号が撮影した衛星画像を見られるのが、「ひまわり黄砂監視画像」だ。「トゥルーカラー再現画像」(画像7)は、両衛星が備える可視光線3バンド(バンド1、2、3)、近赤外線1バンド(バンド4)、赤外線1バンド(バンド13)の5つの波長を用いて撮影し、そこに特殊な処理を施して人の目で見たような色味を再現した衛星画像だ(夜間の場合は赤外画像のみの表示となる)。「トゥルーカラー再現画像」の場合、大規模な黄砂が発生している時期は、雲とは異なる黄土色の黄砂が移動する様子を見て取ることができる。

画像。気象庁「黄砂解析予測図」の「ひまわり黄砂監視画像(トゥルーカラー画像)」の画面。

画像7。「ひまわり黄砂監視画像」の「トゥルーカラー再現画像」画面。領域は日本。まだ2月のため、明確に黄砂は写っていない。

 一方の「ダスト画像」は、黄砂だけでなく火山灰などの砂塵全般を識別できるRGB合成画像だ。ハレーションを起こしそうな原色が使用されているため、見分けるには慣れが必要である。黄砂や火山灰はマゼンダだ。

画像。気象庁「黄砂解析予測図」の「ひまわり黄砂監視画像(ダスト画像)」の画面。

画像8。「ひまわり黄砂監視画像」の「ダスト画像」画面。領域はアジア。マゼンダが黄砂や火山灰を示す。

 「ひまわり黄砂監視画像」も、「領域」については「日本域」と「アジア域」の2種類から選べる。そして「表示時間」で、3日前から現在まで1時間ごとのデータを見ることが可能だ(毎時00分ジャストに画像の更新が行われる)。そして「動画期間」は、「最近6時間」、「最近12時間」、「最近24時間」、「最近48時間」の4種類があり、最大2日前からアニメーションのように連続再生してくれる。


 これからの時期、黄砂の降ってくる量が増えるのは確実だ。洗車する際は、まず「黄砂解析予測図」で3日先までの状況を確認してからの方がいいだろう。洗車したばかりなのに次の日にはもう黄砂が積もっているなどというやるせない事態は、「黄砂解析予測図」を使えば回避できるようになるのだ。

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