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クルマ最終更新日:2019.12.17 公開日:2019.12.17

WEC&フォーミュラE&インディ・2020年の概要と開催カレンダー

WEC世界耐久選手権、フォーミュラE、インディカー・シリーズの3競技に関して、2020年開催カレンダーと、同年の開催概要、そして日本勢の動向をまとめてみた。

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画像1。WECに参戦するTOYOTA GAZOO Racingの「TS050 HYBRID」の2台。

画像1。WEC世界耐久選手権に参戦するTOYOTA GAZOO Racingの「TS050 HYBRID」の2台。

 今回はWEC世界耐久選手権とフォーミュラE、そしてインディカー・シリーズを取り上げた。3競技の2020年カレンダーを紹介するとともに、2020年の開催概要と、日本チームや日本人選手の動向もまとめた。

WECは2019-20シーズンが進行中

 WEC世界耐久選手権は、ル・マン24時間レースがメインの耐久レースだ。レース専用に開発されたプロトタイプ・レーシングカーが2クラス(LM P1と同2)と、スーパーカー/グランドツーリングカーをベースとしたレーシングカーが2クラス(LM GTE-Proおよび同Ama)の合計4クラスが混走する。

 最上位のLM P1クラスにはハイブリッド・レーシングカーでの参戦も可能で(LM P1-H)、2012年からハイブリッド・レーシングカーで挑んでいるのがTOYOTA GAZOO Racingだ。2016年から投入された「TS050 HYBRID」(画像1および2)は、ガソリンエンジン+モーターで合計1000馬力というモンスターマシンで、2018-19スーパーシーズンでル・マン24時間の2連覇を達成し、ドライバーズとチームの年間総合王座も獲得。2019-20シーズンはル・マン3連覇と、年間ダブルタイトルの2連覇を狙う。

画像2。WECのTOYOTA GAZOO Racing「TS050 HYBRID」7号車。

画像2。WEC2019-20シーズン第2戦・富士6時間レース(10月14日決勝)を走行する「TS050 HYBRID」2019-20シーズン仕様。

 ドライバーラインナップは、7号車が小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスの3人(画像3)。8号車が中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、ブレンダン・ハートレーの3人だ(画像4)。ランキングは、第3戦・上海4時間レース終了時点で8号車が62点でトップ。それを7号車が59点の僅差で追う展開となっている。チームポイントは70点で2位に27点差をつけてのトップだ。

画像3。2018-19シーズン第1戦で優勝した際の7号車のトリオ。左からH・M・ロペス、小林可夢偉、M・コンウェイ。

画像3。2018-19シーズン第1戦の英国シルバーストーン4時間レースで優勝した際の7号車のトリオ。左からロペス、小林可夢偉、コンウェイ。

画像4。2019-20シーズン第2戦・富士6時間レースで優勝した8号車の3人。左からB・ハートレー、S・ブエミ、中嶋一貴。

画像4。8号車のトリオ。左からハートレー、ブエミ、中嶋一貴の3人。2018-19シーズン第2戦・富士6時間レースで優勝した際のもの。

 2019-20シーズンは、ハイブリッド車にとってこれまでで最も厳しいレギュレーションとなっている。事前にノンハイブリッド車との性能調整が施されているうえに、レースごとに前レースの獲得ポイントに応じた性能調整が施される「サクセスハンディキャップ」も採用されたからだ。2018-19スーパーシーズンのように「TS050 HYBRID」の圧勝とはいかない状況で、実際に第3戦はノントラブルだったにもかかわらず、2位、3位フィニッシュとなった(ただし、最終戦のル・マン24時間レースのみはサクセスハンディキャップはなくなる)。「TS050 HYBRID」最後のシーズンはギリギリの戦いが続くことだろう。

 そして2020年9月から始まる2020-21シーズンは、参戦車両に関して大きな変更がある。現在、最上位クラスはプロトタイプ・レーシングカーが参戦する「LMP1」だが、プロトタイプ・レーシングカーは2019-20シーズン限りで参戦できなくなる。2020-21シーズンからは、市販ハイパーカーをベースとしたレーシングカーで参戦することになる。そのため、トヨタは「TS050 HYBRID」をベースとした1000馬力の市販ハイパーカーを開発中で、それにより2020-21シーズン以降も参戦を継続することを表明している。

 なお、2020-21シーズンの暫定カレンダーが12月12日に発表された。今回は、8月31日・9月1日のプレシーズンテストから、12月5日(日)に決勝が開催される第4戦バーレーン8時間レースまで、2020年内に開催されるレースを掲載した。

画像5。トヨタが開発中のハイパーカー。プロトタイプ・レーシングカー「TS050 HYBRID」がベースとなっている。

画像5。トヨタが「TS050 HYBRID」をベースに開発中のハイパーカー。2018年東京オートサロンのトヨタブースにて撮影。

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2020年WEC開催カレンダー

2020年WEC開催カレンダー

【2月】
22日(土)・23日(日・祝)
 ●第5戦 ローン・スター・ル・マン(米国/サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)

【3月】
18日(水)~20日(金・祝)
 ●第6戦 セブリング1000マイルレース(米国/セブリング・インターナショナル・レースウェイ)

【4月】
23日(木)~25日(土)
 ●第7戦 スパ・フランコルシャン6時間レース(ベルギー/スパ・フランコルシャン・サーキット)

【6月】
10日(水)~14日(日)
 ●最終第8戦 第88回ル・マン24時間レース(フランス/サルト・サーキット)

【8月】
31日(月)~9月1日(火)
 ●2020-21シーズン プレシーズンテスト(英国/シルバーストーン・サーキット)

【9月】
3日(金)~5日(日)
 ●2020-21シーズン第1戦 シルバーストーン6時間レース(英国/シルバーストーン・サーキット)

【10月】
2日(金)~4日(日)
 ●2020-21シーズン 第2戦 モンツァ6時間レース(イタリア/モンツァ・サーキット)
30日(金)~11月1日(日)
 ●2020-21シーズン 第3戦 富士6時間レース(富士スピードウェイ)

【12月】
4日(金)~6日(日)
 ●2020-21シーズン 第4戦 バーレーン8時間レース(バーレーン/バーレーン・インターナショナル・サーキット)

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続いてはフォーミュラE

フォーミュラEも2019-20シーズンが進行中

 フォーミュラEは、コックピットがむき出しのシングルシーターのレーシングカーであることから、しばしば “EVのF1” と例えられる。ただし、フロントタイヤがむき出しではないため、従来のフォーミュラカーとは異なる外観ともいえる(画像6)。

画像6。フォーミュラEの日産 E.ダムスのマシン。2019-20シーズン開幕戦(サウジアラビア・リアド市街地コース)で撮影されたもの。

画像6。フォーミュラEの日産 E.ダムスのマシン。2019-20シーズン開幕戦(サウジアラビア・リアド市街地コース)で撮影されたもの。

 各チームで独自に開発できる部分もあるが、基本的にはワンメイクレースで、同一のマシンを使用している(画像7)。現在のマシンは、「Gen2」と呼ばれる第2世代のマシンだ。フォーミュラEはF1よりもイコールコンディションに近いため、ドライバーのテクニックや、チームの戦略などがより勝敗を左右するのが特徴である。

画像7。フォーミュラEは同じ「Gen2」マシンを全チームが使用する、ワンメイクレース。

画像7。フォーミュラEは同じ「Gen2」マシンを全チームが使用するワンメイクレース。2019-20シーズン開幕戦のスターティンググリッド。

 また、フォーミュラEはEVのため爆音のようなエキゾーストノートが出ないことから、全レース大都市の公道を利用した特設コースで行われる。ニューヨーク、ロンドン、パリ、ローマなど、欧米の人気都市でも開催されているのだ(画像8)。

画像8。エッフェル塔をバックに疾走する、日産 E.ダムス23号車(2018-19シーズン)。

画像8。エッフェル塔をバックに疾走する、日産 E.ダムス23号車(2018-19シーズン)。すべて大都市の公道が利用されている。

 フォーミュラEも年をまたいで1シーズンが開催されており、現在は2019-20シーズンが開催中。今回のカレンダーは2020年に入ってからの第3戦以降を収録した。

 また今シーズンも日本勢として日産 E.ダムスチームが参戦している。ドライバーラインナップは、エースナンバーの23号車を第2代フォーミュラE王者のセバスチャン・ブエミ(フランス)が、22号車をオリバー・ローランド(英国)が担当している(画像9)。

画像9。2019-20シーズンの日産 E.ダムスのドライバーラインナップ。左がS・ブエミで、右がO・ローランド。

画像9。2019-20シーズンの日産 E.ダムスのドライバーラインナップ。左がブエミで、右がローランド。

 そして、フォーミュラEのここ1~2年の大きな流れといえるのが、自動車メーカーがこぞって参戦していることだ。特に環境問題の点から自社のEV技術をアピールしたい欧州メーカーが参戦している。そのため、メーカー対決の図式がとても強くなっている点もフォーミュラEの特徴となっている。

 さらに、そうした勢いもあってフォーミュラEは2020-21シーズンからFIAの世界選手権に格上げされることが決定した。2019-20シーズンまでは国際戦として開催されてきたが、いよいよF1やWRC、WECなどと同格の世界選手権となる。

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2020年フォーミュラE開催カレンダー

2020年フォーミュラE開催カレンダー

【1月】
18日(土)
 ●第3戦(チリ/サンティアゴ市街地コース)

【2月】
15日(土)
 ●第4戦(メキシコ/メキシコシティ市街地コース)
29日(土)
 ●第5戦(モロッコ/マラケシュ市街地コース)

【3月】
21日(土)
 ●第6戦(中国/三亜市街地コース)

【4月】
4日(土)
 ●第7戦(イタリア/ローマ市街地コース)
18日(土)
 ●第8戦(フランス/パリ市街地コース)

【5月】
3日(日・祝)
 ●第9戦(韓国/ソウル市街地コース)

【6月】
6日(土)
 ●第10戦(インドネシア/ジャカルタ市街地コース)
21日(日)
 ●第11戦(ドイツ/ベルリン市街地コース)

【7月】
11日(土)
 ●第12戦(米国/ニューヨーク市街地コース)
25日(土)
 ●第13戦(英国/ロンドン市街地コース)※第13戦・第14戦はダブルヘッダー
26日(日)
 ●最終第14戦(英国/ロンドン市街地コース)※第13戦・第14戦はダブルヘッダー

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最後はインディカー・シリーズ

佐藤琢磨が2020年も参戦。インディカー・シリーズ

 インディカー・シリーズは、コースによっては最高速度がF1をも上回る時速380km以上をマークする米国発のフォーミュラカーレースだ。マシンはワンメイクで、伊ダラーラ社製第4世代「DW12」が採用されている。エンジンはホンダとシボレー(GM)の2種類だ。

画像10。インディカー・シリーズはF1と並ぶ世界最速のフォーミュラカーレース。

画像10。第4世代のマシン「DW12」。画像は、佐藤琢磨が乗るレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングチームの30号車(2019年)。

 インディカー・シリーズの大きな特徴は、F1モナコGP、WECのル・マン24時間レースと並び、世界3大レースと称されるインディアナポリス500マイルレース(インディ500)を擁していること。インディ500は世界のメジャーなレースの中で最も歴史があり、2020年で104回目の開催となる。観戦者数も世界最大で、決勝だけで30万人を遙かに超える人々が、舞台となるインディアナポリス・モーター・スピードウェイでレースを見守る。まさに米国文化に根付いたモータースポーツだ。

画像11。2019年のインディ500一場面。

画像11。2019年のインディ500の様子。外周のスタンドと、インフィールドの駐車・キャンピングスペースから合計30万超の人々が熱戦を見つめる。

 日本勢に関しては、まず2017年のインディ500王者である佐藤琢磨(画像12)が、去る9月22日、2018年から所属しているレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングと契約を延長したことを正式発表した。3シーズン連続で、通算4シーズン目を同チームで走ることになる。そんな佐藤琢磨の2019年は2勝を挙げ、合計420点で年間9位。2020年はさらなる活躍が期待されている。

画像12。日本人初のインディ500王者となった佐藤琢磨は、2020年もインディカー・シリーズに参戦することが決定している。

画像12。2019年の第15戦マディソンで1周遅れから大逆転で優勝を果たし、同シーズン2勝目を挙げた佐藤琢磨。

 そしてホンダについて。ホンダはF1ではパワーユニット・サプライヤーの1メーカーだが、インディカー・シリーズでは実はシリーズを支える非常に重要な存在だ。2006年から2011年までは単独でエンジンを供給するなど、ホンダが撤退したらシリーズが成立しないかもしれないという縁の下の力持ちなのだ(現在はシボレー(GM)もエンジンを供給)。2019年も16台にエンジンを供給し、引き続き2020年も供給が行われる。2019年はシボレー勢がドライバーズ王座を手中にしたため、2020年はその奪還が目標だ。

画像13。2017年にホンダがインディカー・シリーズに供給していた排気量2.2L・V6ツインターボエンジン「HI17TT」。

画像13。2017年にホンダがインディカー・シリーズに供給していた排気量2.2L・V6ツインターボエンジン「HI17TT」。

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2020年インディ開催カレンダー

2020年インディカー・シリーズ開催カレンダー

【3月】
13日(金)~15日(日)
 ●第1戦(米フロリダ/セント・ピーターズバーグ市街地コース)

【4月】
3日(金)~5日(日)
 ●第2戦(米アラバマ/バーバー・モータースポーツ・パーク)
17日(金)~19日(日)
 ●第3戦(米カリフォルニア/ロングビーチ市街地コース)
24日(金)~26日(日)
 ●第4戦(米テキサス/サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)

【5月】
8日(金)・9日(土)
 ●第5戦(米インディアナ/インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)
12日(火)~24日(日)
 ●第6戦 第104回インディアナポリス500マイルレース(インディ500)(米インディアナ/インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)
29日(金)~31日(日)
 ●第7戦(米ミシガン/ザ・レースウェイ・アット・ベル・アイル・パーク)
 ●第8戦(米ミシガン/ザ・レースウェイ・アット・ベル・アイル・パーク)※第7戦・第8戦はダブルヘッダー

【6月】
4日(木)~6日(土)
 ●第9戦(米テキサス/テキサス・モーター・スピードウェイ)
19日(金)~21日(日)
 ●第10戦(米ウィスコンシン/ロード・アメリカ)
26日(金)・27日(土)
 ●第11戦(米ヴァージニア/リッチモンド・レースウェイ)

【7月】
10日(金)~12日(日)
 ●第12戦(加オンタリオ/トロント市街地コース)
17日(金)・18日(土)
 ●第13戦(米アイオワ/アイオワ・スピードウェイ)

【8月】
14日(金)~16日(日)
 ●第14戦(米オハイオ/ミッド・オハイオ・スポーツカー・コース)
21日(金)・22日(土)
 ●第15戦(米イリノイ/ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ・アット・ゲートウェイ)

【9月】
4日(金)~6日(日)
 ●第16戦(米オレゴン/ポートランド・インターナショナル・レースウェイ)
18日(金)~20日(日)
 ●最終第17戦(米カリフォルニア/ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカ)

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