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最終更新日:2024.11.25 公開日:2024.11.25

総長のビュイックで練習し、運転免許を取得!?|長山先生の「危険予知」よもやま話 第30回

JAF Mate誌の「危険予知」を監修されていた大阪大学名誉教授の長山先生からお聞きした、本誌では紹介できなかった事故事例や脱線ネタを紹介するこのコーナー。今回は禁断? の大学構内での運転レッスンから、長山先生はサーキット走行が好きな反面、レース観戦にはまったく興味がなかったという話まで。失礼ながらかなり笑えます。

話=長山泰久(大阪大学名誉教授)

マン島まで行き、レースにまったく興味がない自分に気づく

編集部:マン島TTレースですか!? イギリスのマン島で行われる公道レースですよね。サーキットとは違って、カーブではみ出したり転倒したときにライダーを守るエスケープゾーンがない公道を、とんでもない速度で走るスリリングなレースですね。

長山先生:そうです。よくご存知ですね。私も初めて聞いたときは興味津々で簡単にOKを出しましたが、結果は地獄の味わいでした。

編集部:えっ、地獄ですか? 私なんかテレビで見て以来、一度自分の目で見てみたいと思っているので、視察させてくれたら飛び上がるほど嬉しいですけど。

長山先生:好きな人ならそうなのかもしれませんが、日本から遠く、まず移動するのがたいへんでした。航空機で大阪から東京、東京からフィンランドのヘルシンキ、ヘルシンキからロンドン、ロンドンからリバプールまで長時間移動するのですが、その間ほとんど眠れぬままに過ごしました。リバプールからマン島は夕刻のフェリーでしたが、乗客たちはさまざまな種類の二輪車を持ち込んだ世界中から来たライダーでたいへん混雑しており、椅子には座れず、新聞を床に敷いて横になって一晩過ごしたのですが、体が痛くて一睡もできませんでした。

編集部:それは疲れますね。視察と聞くと、先方がいろいろと手配してくれて快適に移動できそうですが、そうではなかったのですね。

長山先生:そうなんです。飛行機はともかく、マン島へのフェリーは便数が少なく、レースのときに人が集中してしまうので仕方ないのかと思いますが、疲れましたね。明け方にマン島に着き、土手のような場所で観覧することにしてレースがスタートするのを待ちましたが、パンフレットもなく、出場選手などの情報がまったくなかったのも敗因でした。次々に走ってくるマシンは猛烈なスピードであっという間に目の前を通り過ぎていくだけで、誰が誰やら、どの国のマシンなのかさっぱりわからず、まったく面白くもないままにレースは終わってしまったのです。私にとって二輪車に関する興味は、暴走族の心理的な背景や事故発生の人的側面からの分析などで、レースにはまったく関心がないことがわかりました。

編集部:たしかにレースや速い車両に興味がないと、面白さを感じることはできないでしょうね。でも、サーキットでの話などを聞いていると、長山先生は人が走っているのを見るより、ご自分で走ることのほうが好きそうですね。

長山先生: そうかもしれません。サーキット以外でも、疲労を計測する実験をした際に、自動車メーカーのテストコースを走りましたが、それも貴重な経験で楽しいものでした。

編集部:疲労を計測するため、テストコースを走ったのですか?

テストコースでの疲労実験は、失敗に終わる。

長山先生:そうです。1963年(昭和38年)に名神高速道路の一部(栗東―尼崎間)が開通し、日本の高速道路の時代が始まりましたが、1965年(昭和40年)に小牧―西宮間で名神高速は完成しました。その後1969年(昭和44年)に東名高速道路が全線開通することで東京―西宮間の高速運輸時代が始まりました。長距離バスやトラックの営業が始まり、一般車も長距離ドライブをするようになったため、高速道路を連続走行する際、何時間ごとに休憩・休息を取ることが必要なのか、研究しておく必要があったのです。

編集部:なるほど。よく「2時間ごとに休息を」と言われますが、その基準づくりの実験だったのですね。

長山先生:そうです。ダイハツの竜王テストコースを借りて連続走行疲労実験を行ったのですが、オーバルコースを使ったため、実験はうまくいきませんでした。時速80kmを維持して走行するには、バンク角が40度くらいのところを選んで走らなければならず、バンクが付いたコースを走行すること自体で緊張が強く、それが疲労の原因になってしまったのです。

編集部:私もバンクの付いたオーバルコースを何度か走ったことがありますが、ふだんあのような角度が付いた路面を走ることはないので、初めはとても怖かったです。慣れればハンドルを切らなくても一定の速度で周回できるので楽なんですけどね。

長山先生:おっしゃるとおりで、テストドライバーならともかく、ふつうの職業ドライバーや一般のドライバーの場合、バンクを走るだけでクタクタになってしまうようです。私は試しに数周走っただけなので、緊張感より強烈なカントがついたコースを走れたことの新鮮さや満足感のほうが大きかったです。なお、テストコースでの実験は失敗しましたが、その後、名神高速道路の茨木インター~彦根インター間を3往復することによって東京―大阪間の走行をシミュレーションできることがわかり、名神高速道路での連続走行実験を実施しました。

『JAF Mate』誌 2017年8・9月号掲載の「危険予知」を基にした「よもやま話」です。

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次回は12月5日からスタートです!
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